男の子はわからない。その点女の子は・・・
6月 5th, 2014
今回の記事のタイトルの意味がおわかりでしょうか。そう、おかあさんの気持ちを代弁したものです。同性の女の子のことはよく理解できます。だから、子育てにおいても、比較的迷いや混乱、悩みが少ないようです。そのいっぽう、男の子の言動にはおかあさんの理解を超えたところがあるようです。おたくではどうでしょうか。
そう言えば、こんな相談を保護者のおかあさんから受けたことがあります。
「姉のときには、コミュニケーションで困ったことはなかったし、子どもの状態もだいたい把握していました。でも、弟はサッパリわかりません。やることなすことがチャランポランで幼稚です。さっき勉強を始めたばかりなのに、いつの間にか漫画を読みふけっています。たまらずに注意すると、『それぐらいわかってるさ!』と反抗します。このままだと、受験は無理ではないでしょうか」
どう答えたか、その内容を全く覚えていません。まだ若いころでしたから、おそらく役立つ返答はできなかったのだろうと思います。
「女の子のほうがわかりやすい」というおかあさんの気持ちに関連して、だいぶ前の中学入試問題(広島の私立男子中学校の国語の素材文)に、おかあさんに反発する女の子の心理が描かれていたことを思い出しました。調べたらその文章が見つかりましたので、一部をご紹介してみましょう。
きょうお母さんは、奈良のおばさんに電話して、「そうなのよ、おとこのこのほうが、デリケートなのよね、むずかしいわ、そうそう、おんなのこのほうが育てやすいわよ」とかいっていた。お母さんは、じぶんがおんなで、おとこになったことがないのに、なんで、おとこのほうがデリケートなのがわかるか、へんだおもいます。わたしのこと育てやすいなんていったので、わたしのことかるく見ているとおもう。わたしはこころの中で「中学いったらぐれてやる」とおもったけれど・・・(後 略 )
いかがでしょう。この文章は、日記形式で女の子の気持ちを書いた作品だったかと記憶していますが、作者は女性の絵本作家で、すでにお亡くなりになっています。実生活においてもおかあさんと不仲が続き、仲直りをしたのは随分高齢になってからだとか。そうした背景が、この作品にも反映されているのかもしれません。
長年、男子の国語指導を担当した筆者の実感としては、「男の子のほうがデリケート」という言葉にはとまどう面があります。「男の子はあっけらかんとして単純である」といった印象のほうが強いからです。しかし、おかあさんからみれば同性である女の子のほうがわかりやすいし、むしろ男の子特有の「マニアックなのめり込み」や「落ち着きのなさ」(この二つの、一見矛盾する特徴をもっているところが男の子なんですね)などのほうが不可解なのでしょう。
先の作品では、「女の子のことは全部わかっている」と思い込んでいるおかあさんに対する、娘さんの反発が描かれていました。こうした傾向はおかあさんがたに少なからずあるようで、「気心が通じているからこそ必要な心遣い」をうっかり失念させる原因になりがちです。
たとえば、受験を前にして娘さんが成績不振に陥ったとき、ついおかあさんが溜息をつき、「この調子だと、どこも受からないかもしれないね」と、内心の不安をそのまま娘さんに伝えてしまったという話があります。これでは励ましにならないばかりか、状況をますます悪化させてしまいます。こういうとき、おかあさんは本音ではなく、娘さんの不安を払拭させるような言葉かけをすることが求められるのだと思います。
すみません。今回は、「男の子と女の子の違い」について書こうと思っていたのですが、話が少し違う方向へ逸れてしまいました。男の子と女の子は、思考や行動の様式が全く違うのではなく、「男の子的な特徴を多くもった女の子」もいるし、「女の子的な要素を多く携えた男の子」もいるというのが実際のようです。つまり、傾向の違いは相対的なものであると考えるべきなのでしょう。
そう言えば、理数系に滅法強い女の子だっていますし、国語を非常に得意とする男の子もいます。筆者がかつて指導を担当した6年生男子に、国語が百点で三百数十名中一番、算数が0点で最下位という極端なお子さんがいたことを思いだします。
ただし、男女の能力や適性の違いは、脳の構造上の違いからくる要素も大きいようです。ご存知のように、女子は言語能力において男子より優れています。これは、言語理解に関わるニューロンの数が女子のほうが多いからだと、ある書物に書かれていました。
図形の認識・識別能力や空間把握力など、算数・数学領域で求められるセンスや才能においては、男子のほうが優れていると言われます。これは、視覚情報が脳に入力されてからの、情報伝達ルートや情報処理の違いからくるようです。
こういった男女の脳の特性の違いは、弊社の定期テストの成績を男女別に比較してみると、はっきり数値に表れます。たとえば、一般に算数の平均点は男子のほうが4~5点ぐらい高くなります(単元によってはもっと差があります)。国語は逆で、かなりの点差で女子のほうが高くなります。ただし、男子に分のある算数でも、優秀な女子が多い年には逆転現象が生じることがありますし、国語も素材文が説明文などになると、男子の成績がよくなることもしばしばあります。
すでに何回も書きましたが、人物の心情理解などは女子のほうが圧倒的に優れており、したがって物語文が素材文のときは、ほぼ間違いなく女子の平均点のほうがうんと高くなります。
理科については、物理や化学分野のときには男子の平均点が女子をかなり引き離すのが普通です。しかし、生物分野が中心になると、男女差が見られなくなったり、女子のほうが高くなったりします。総体的には、理科は男子のほうに分がある科目と言えるでしょう。
社会は、地理、歴史、政治、経済など分野ごとに男女の適性の違いが成績に表れます。地理は男子、歴史は女子、政治や経済は男子のほうがよいようです。空間的な広がりに関わる地理は男子、時系列でできごとを学んでいく歴史は女子といったように、男女の適性の差が反映されてのことのようです。
長くなってしまいました。今回は、「男の子と女の子は違うんだ」というわかりきったことを書いたところで終わってしまいそうです。「うちの息子のやる気を高めるよい方法はないかしら?」と、困っているおかあさんは少なくないかもしれませんね。そういうおかあさんへのアドバイスを、近々試みてみようと思います。
最後に余談を一つ。以前、心理療法の専門家から男性と女性に違いに関する話を聞いたことがあります。「今日は何の日?」と奥さんに聞かれても、夫婦の重要な記念日を思い出せず、奥さんを怒らせる旦那さんが少なくないとか。なぜ女性のほうがよく覚えているのでしょうか。
これも、男女の脳の違いからくる問題なのだそうです。左右の脳の連絡をする前交連という部位は、感情の強さと深い関わりをもっています。この部位は、女性のほうが太くできているため、女性のほうに思い入れの強さや感情的になりやすいといった特徴をもたらせているとか。大切な結婚記念日に対する思い入れの強い女性のほうはよく覚えているけれども、男性のほうはすっかり忘れてしまう。原因はそういうことのようです。
最近、男女の脳の違いについて書かれている本をしばしば目にするようになりました。そういう本の中から、子育て中のかたに役立ちそうなものが見つかったら、またご紹介してみようと思います。