広島学院と清心が身近になる! その2

11月 27th, 2014

 今回は、前回に引き続き弊社主催のイベントの様子をご報告します。このイベントは、毎年11月に広島、呉、東広島で開催しており、ここ数年は広島の有力私学の校長をお招きして、「私学教育とはどういうものか」ということをお話しいただいています。

 私学教育についてよく知ったうえでお子さんを入学させれば、より充実した学校生活の実現につながるのではないでしょうか。そういった意図で弊社が開催しているイベントです。

 今年は広島学院とノートルダム清心の校長をお招きしました。イベントタイトルは、広島学院とノートルダム清心がともにカトリック系のミッションスクールであり、広島の男女私学の最難関校であることから、一般のかたにはやや縁遠い印象を与える点を踏まえ、「ほんとうは、とてもフレンドリーで親しみやすい学校なんですよ!」ということをお伝えしようという意図で考えたものです。

 さて、本題に入りましょう。今回はイベントの後半の内容をご紹介します。

④最難関私学の生徒さんの進路って?

 大学進学状況は、いずれの学校も公表されています。わざわざ話題に取り上げなくてもいいようなものですが、両校は私学のトップ校だけに進学実績をアピールすることを控えておられます。そこで、敢えて進路を話題に取り上げて、校長先生がたから興味深い話が聞けないだろうかという意図で試みてみた次第です。

 まずは、当日会場で掲示した資料の一部をご覧ください。

学院生・清心生の進路選択の状況 (1MB)

 学校の進路選択状況については、先に弊社から簡単にご説明しました。両校の大学への進学実績は素晴らしいものですが、その実績がともに僅か180名あまりの卒業生によるものであることに驚かされます。公立の有力校ですと300名以上の卒業生がいますから、一人ひとりの進路保障という点においては、両校はずば抜けていると言ってもよいでしょう。

 また、両校とも理系の学部への進学比率が高いのが特色です。特に広島学院の場合、医学系への進学比率が非常に高いのが目につきます。実績面においても、広島大学への進学者24名中14名が医学部であるなど、他の高校の追随を許さぬものがあります。清心についても、医・歯・薬系に68名が進学し、卒業生全体の約半数が理系の学部に進学しています。

 では、自校の進路選択状況について広島学院と清心の校長がどんなコメントをされたかを簡単にご紹介しましょう。

学院 どこを受けるかは生徒と保護者が決めています。高1の2学期の終わりに文理選択をします。将来の職業を視野に入れるためのサポートとしては、OBや保護者を招いて職業講演をしてもらったり、DVDを使って職業紹介をしたりしています。そうして、高2、高3で受験の方向性を大半の生徒が決めていきます。

 近年の傾向としては、東大よりも京大受験者のほうが多くなっていることでしょうか。関東よりも関西志向が強まっているように思います。理由は経済的理由のほか、「東京は地震が怖い」といった声もあります。また、「浪人はイヤ」という生徒が多く、安全志向も感じます。学部選択では医学部志望者が多く、さらに増加傾向にあります。4クラスのうち、理系が3クラスで文系が1クラスです。本校の生徒には地元広大の医学部が人気ですが、学力的に希望が叶いそうにない場合、全国の国公立の医学部のなかから合格できそうなところを選んで受験しているようです。

清心 高い資質をもった生徒を預かっているので、もっともっと学力のレベルをあげなければならないと常々思っています。そのためには、教師と生徒の信頼関係を大切にし、両者が力を合わせて頑張ることが大切だと自覚しています。

 最近の傾向としては、医学部もしくは理系学部を志望する生徒が増えていることでしょうか。中学入試の際に提出いただく願書に、「将来、医者になりたい。弁護士になりたい」など、高い目標を掲げている生徒が多数います。5年前は文理半々の比率でしたが、今は学年180名あまりのうち110~120名、6~7割が理系を志望しています。そのうち、50名が医学部を志望しています。

  進路を決定していくための助走としては、中3~高1で適性検査をしたり、卒業生や大学の理事などを招いて話をしてもらうなどのサポートをしています。進路はあくまで生徒自身と家庭の意思を尊重しています。近年は現役での進学がほとんどで、東大や京大へ浪人してまでめざす生徒は減っています。志望校への進学を高い次元で実現できる生徒は、自分で計画を立てて勉強できる生徒です。そういう生徒はよく集中して頑張り、時間をうまく生かして成果をあげています。

 最近気になるのは、日常の生活リズムが乱れている生徒が多く、それが学習習慣の定着の妨げになっていることです。何でも先生に頼って「教えてくれ」といった受け身の生徒は教えても効果がありません。何でも簡単に手に入る生活に大人も慣れ過ぎているのが現実です。そんな時代ですから、子どもも辞書を使って調べることをしなくなりました。すぐ電子手帳で検索しますから、電話番号も覚えようとしません。こういう時代ゆえの教育の難しさを感じます。

⑤学院生・清心生の青春

 広島学院、ノートルダム清心の生徒さんと言えば、何はさておいても学業優先で、毎日勉強と取っ組み合いをしているのだろうと思っている人もおられるかもしれません。そんな彼ら彼女らの青春模様をちょっと覗いてみたいと思いました。さて、このテーマについて両校の校長先生がたはどんなコメントをくださったでしょうか。

清心 「清心生は勉強ばかり」と思っておられるかもしれませんが、そうでもありません。端的に言うと、「おしゃべり」――これを青春にしているのではないでしょうか。休憩時間や放課後、クラスメートや部活の仲間との楽しいおしゃべりは、この年齢の生徒にとって何よりも青春そのものです。

 生徒たちが集中力を発揮し熱中する体験の場、それは学校行事ではないかと思います。たとえば、学園祭、体育祭、フィールドゲーム(ソフトバレーボール)、美術・書道展などでは、生徒たちはほんとうにすごいエネルギーを投入して頑張ります。体育祭ではがむしゃらに一生懸命走ります。「なんであんなに必死になってがんばれるのか」と、外部のかたから感想をいただくことがあるほどです。

 10月に実施するフィールドゲーム(ソフトバレーボール)では、1日半かけてクラスマッチをし、決勝は体育館でたくさんの生徒の前で行われます。そして、優勝したら教員チームと対戦します。このクラスマッチに勝ち残りたい一心で、生徒たちは朝早くから登校して練習し、放課後も6時ごろまで夢中になって練習しています。一般に思われる清心の生徒とはまったく違った側面がそこに見られるのではないかと思います。特に一生懸命なのが大学受験を控えた高3生で、「下級生には負けられない」という気持ちが作用しているようです。そこに彼女らの青春を見る思いがします。あれぐらい必死に勉強してくれたらという思いもありますが、先々こうした経験が、仕事に対するエネルギーや集中力の発揮につながるのではないでしょうか。

学院 本校の生徒の青春というとやはりクラブ活動でしょうか。中1の夏休みからクラブに入れるようになります。全員、いずれかの運動部(ブラスバンドも含む)に所属します。運動を苦手にする生徒が多いのですが、生徒たちはクラブ活動を通して体を動かすことの楽しさを体験するようです。中2からは文化部にも入れるようになります。運動部と両方やる生徒もいます。文化部では、物理、化学、生物、囲碁、将棋などが盛んです。これらのうち、囲碁や将棋は全国レベルに達しています。

 そうした生徒のなかには、理科オリンピック(化学オリンピックや生物オリンピックなど)に青春をかける生徒がいます。こうしたオリンピックには、全国で数千人が応募し、そのなかから4名が選ばれ、世界大会に出場します。広島学院からは、ここ数年で4人がこの理科オリンピックで金メダルや銀メダルを獲得しています。彼らのレベルはほんとうに凄いのですが、決して変わり者ではありません。心優しく、ユーモアを解する素晴らしい生徒たちです。周囲によい刺激を与えてくれており、学校としても重要な存在です。

 また、体育祭や文化祭などの学校行事も生徒が青春を謳歌する場です。いつの頃からか、本校の生徒は、こういった行事で、自分たちが楽しむと同時に、お客さんにも楽しんでいただくということをまじめに考えるようになりました。生徒にとっては、人に喜んでもらえることの喜びを体験する貴重な場にもなっています

 なお、学院生というと、女子との付き合いについては「奥手」が多いです。かつては学園祭に彼女を連れてくるような生徒も結構いましたが、最近は少ないみたいです。おかあさんのなかには心配されるかたもおありですが、「男だけの世界にどっぷりとつかって、男を磨くのもよいことですよ」と申し上げています。青春とは、未成熟な時期なのだから、失敗を恐れず、夢中になってやればいい。挫折や後悔を味わうこともあるでしょうが、それでも、夢中になってやった経験は将来必ず生きてきます。ですから、子どもが失敗をしないようにと、周りのおとなが先回りをして環境を整えたり、すぐに手を差し伸べて助けたりしてはいけない。そういったことも保護者、特におかあさんにお伝えしています。

⑥私学教育の意義はどこにあるのか

 いよいよ最後のテーマです。このイベントの実施目的の中心となる、「私学教育の意義」について校長先生がたに語っていただきました。このテーマを語りきるには大変な時間が必要です。それをそれぞれ5分という制約のなかでお話しいただきました。校長先生がたには申し訳ない条件でしたが、お二人とも大変内容の濃い話をしてくださいました。

学院 私学は、公立と比べると経済的負担が大きいものです。そのぶん、保護者にも生徒にも満足してもらえるよう学校として努力しています。ただし、ニーズに応えるだけでは十分でないと考えています。私学ですから自己の理念をしっかりともち、保護者や生徒に伝えることが必要です。他者のために、他者とともに生きる。このような人間への成長をめざして日々勉強やさまざまな活動をしています。

 6か年一貫校ですから、ある程度自由な教育活動ができます。たとえば、英・数は中2で中学課程を終えます。そして中3からは高校の内容を学びます。理・社は中・高の重なりがあります。これを整理し、プリント副教材を使った学習をします。それで、高3では受験に特化した授業もできるわけです。

 私学6か年一貫校では、生徒同士の付き合いが6年間に及ぶということも大いにプラスになります。じっくり信頼関係を築き、切磋琢磨するなかで、お互いを高め合おうという意識が醸成され、より大きく成長することができます。生徒と教員、保護者と教員の付き合いも6年間続きます。入学時にかわいらしかった少年が、卒業時には逞しい青年に成長していきます。その間、思春期という不安定な時期を経験しますが、担任は継続的に生徒をフォローすることができます。私学には基本的に教員の入れ替わりもありません。

 私は、本校に36年間在籍していますが、卒業してずいぶん経った後、卒業生が訪ねて来てくれて立派に教育の実った姿を見るのが楽しみの一つです。それはまさに私学ならではのことで、そういった私学のよさをご理解いただくとうれしく思います。

清心 私学が大切にすることの一つに、「世の中に左右されずに教育をすることができる」という点があります。本校の「心を清くし 愛の人であれ」を貫き通した教育ができるのも、私学だからこそです。今、教育がICTや英語に流れるのは、果たしてよいことなのか、日本語もままならないとしたら問題ではないか、という視点もあって然るべきではないでしょうか。私は、まず心を育てるべきだと思います。

 子どもが高校を出るまでに、人としての心を育て、他者を大切にすることを教えていかないと、いくら勉強ができるようになってもダメだと思います。その意味で、私学は自らの大きな教育目標をもち、教員が長く帰属意識をもって生徒に関わっています。そして、それが形になって私学の校風をつくっています。私学としての校風が築かれたなら、それが生徒にも伝わります。そして、次に入学してくる生徒にも受け継がれます。そうやって生徒が成長していける学校となっていきます。つまり、よい土壌をつくっておくことが重要なのです。土がよければ植物は育つのですから。

 本校には、「生徒のいるところに、必ず先生がいなさい」と教えがあります。こうしたことが教育の基本として大切にされるべきであり、時代の流れに対応することも重要ですが、安易に追いかけないことも必要です。シスターの教えに、「躓いたり失敗したりして穴に落ちたとき、その穴のなかから何をつかんで這い上がるかが大切だ」というのがあります。グローバル化教育も無論やっているのですが、どんな時代にあっても生き抜く強さや逞しさを育てる教育はもっと大切なものです。そういうことを意識してやっているのが私学です。私学教育のよさの根本はそこにあると思います。

 以上が、今回のイベントのおおよその内容です。お二人の校長先生は、誠実に心を込めて大変密度の濃い話をしてくださいました。そのため、話の内容を全てご報告することはできませんでした。しかし、学校説明会などでは聞くことのできない両校の一面をお伝えすることはある程度できたのではないかと思います。会場で実施したアンケートにでは、よい反応を多数いただきました。このブログ記事で、当日の様子を少しでもお伝えできたらと願っています。

 なお、第2部は、弊社の校舎長から「受験アドバイス」をさせていただきました。時間は僅かでしたが、多数の保護者が熱心にメモを取っておられました。今回も予定をはるかに超えるボリュームになってしまいましたので、詳しい内容は割愛させていただきます。来年も同様の流れに沿った催しを実施する予定です。すでにタイトルやおおよその内容も決めています。よろしければ、来年もぜひご参加ください。

Posted in 私学について, 行事レポート

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