叱り上手が子どもを伸ばす! その1
12月 4th, 2014
今回からの2回は、弊社の4・5年部会員家庭(週3日コース)のおかあさんを対象とする行事、「おかあさんの勉強会」の後期第2回目の様子をご報告します。
すでに何度も書きましたが、この催しは中学受験生をもつ家庭のおかあさんがたが抱えておられる問題、悩みの原因になりがちな事柄をテーマに取り上げて実施しています。わが子の受験生活の活性化につながる対処法を、おかあさんがたに話し合っていただきながらともに考えていこうという趣旨で行っている、弊社独自の意匠によるおかあさん支援のための催しです。
今年度の後期第2回目の勉強会は、「叱り上手が子どもを伸ばす!」(副題:わが子の奮起を促す叱りかたの研究)というテーマで実施しました。実は、このテーマでの勉強会は以前実施したことがあります。ですが、少しずつ内容のレベルアップを図っていますので、参考までに今開催分の内容をご報告しておこうと思います。
今回の勉強会は、後期1回目の「親に求められるリーダーシップとは!?」の続きとして企画しました。というのは、親がわが子に「してよいことといけないことの境界線」を示し、それを浸透させるプロセスにおいて、「いかに叱るか」は、避けて通ることのできない課題になるからです。
では、今回の勉強会の流れに沿ってご報告してまいりましょう。
① あなたは子どもをどのように叱っていますか?
親はわが子を自立した人間にしつけるうえで、「ここからここまではよいが、ここからはいけない」という境界線を明確に示す必要があります。そうしたしつけに取り組むことが、親のリーダーシップを確かなものにします。
それをわが子が素直に受け入れてくれれば問題ありません。しかし、現実はそう簡単ではありません。子どもには子どもなりの考えがありますし、そもそも自己中心的な立ち居振る舞いをするのが子どもというものです。したがって、子どもをもつ親が避けて通れないのが「叱る」という行為です。
あなたは、わが子が親が示した境界線から逸脱する行為に及んだとき、ちゃんと叱っていますか?また、どのような叱りかたをしていますか?
筆者にも息子がいます。とっくに成人した今ですが、かつて中学受験生だったころは、ほとんど毎日といってよいほど叱らなければならない状況に至り、どう叱るべきか悩んだものです。理由は今受験生を抱えておられる多くのご家庭と同じであろうと思います。やるべきときにやるべき勉強をしない。その結果、親の期待とは程遠い、残念な成績を取ってくる。まあ、そんな具合だったと思います。
勉強会では、かつて全国有数の進学校の名物校長だったかたの、「受験生であると思わず、わが子だと思って接するべし。叱るのは親としての義務のようなものである」という言葉をご紹介したうえで、ワーク1を始めました。「ワーク」とは、この催しにおいては「あるテーマ・課題に基づいて、おかあさんがたが話し合ったり意見交換をしたりすること」を言います。
ワーク1のテーマは、「叱るということの現状を振り返る」というもので、まずは1対1のペアをつくり、「今、どのぐらいの頻度でわが子を叱っているか。どんなとき叱っているか」を互いに報告していただきました。ひととおり現状をお話しいただいた後、数名で構成するグループで「叱ることの難しさをどういうときに感じるか」について、ざっくばらんに話し合っていただきました。
ちなみに、みなさんはわが子をどのぐらい叱っておられますか?次のなかから選んでください。
1.ほぼ毎日 2.ときどき(週2~3回) 3.めったに叱らない(週1回程度) 4.ほとんど叱らない
さて、おかあさんがたに叱ることの現状を振り返っていただいたところで、子どもたちに実施したアンケートの結果をご紹介しました。アンケートの内容は、叱られる頻度、おかあさんに叱られることをどう思うか、叱られる理由、叱るおかあさんに言いたいこと、などです。結果をちょっとご報告してみましょう。叱る頻度については、先ほどのみなさんの答えと比較してみてください。
アンケートの(1)の結果を見ると、「めったに叱らない」おかあさんが結構おられることに驚き感心しました。上手に子育てをしておられるのでしょう。(2)の結果については、頷けるものがありますね。おかあさんに叱られてうれしい子どもなんていません。しかし、おかあさんが叱る理由はおそらく筋が通っているのだと思います。だから、圧倒的多数のお子さんが「だいたいはがんばろうと思う」と答えているのではないでしょうか。それにしても、「いつもがんばろうと思う」というお子さんが結構な数おられることには感心させられました。おかあさんの愛情や期待がお子さんにしっかりと伝わっているのでしょうね。
叱られる理由ですが、4年生に見られる「成績が悪い!」というのは、筆者としては気になるところですが、他の理由のほとんどは筋の通った理由だと思います。おかあさんがたは立派ですね。なお、おかあさんがたには「成績を理由に叱るのは避けてください」と、このブログでも再三お伝えしています。がんばったのに成績が振るわないことが多いのが受験勉強だからです。こうした理由で叱られることが続くと、子どもは“自信”や“やる気”という、学力形成で最も重要なものを失ってしまいかねません。
「叱ってくるおかあさんに言いたいことは?」という質問に対する答えを見ると、思わずにっこりとしてしまいます。子どもたちの素直な気持ちが実によく伝わってきます。また、叱られることに反発したものの、実は後で反省している子どもの様子がよく伝わってきます。
② 叱るはずのつもりが、怒っていることはありませんか?
図書館や本屋で子育てに関する本を手に取っていると、子どもの上手な叱りかたをテーマに掲げた本を多数見かけます。この種の本は、日本人が書いたものだけでなく、外国のかたが書いたものも数多く見られます。
その理由として考えられるのは、日本に限らず世界中の親が「叱るということは難しいことだ」と考えているからではないかと思われます。では、なぜ親にとってわが子を叱ることが難しいのでしょうか。
答えはここで申しあげるまでもないかもしれません。わが子に対しては親に特別な思い入れがあり、黙ってみていられなくなるものです。そんなわが子が反抗してきたら、冷静に対応できるでしょうか? おそらく、ほとんどのかたは感情的になり、怒ってしまうのではないでしょうか? そう、冷静に叱るはずが、怒ってしまうのです。親が怒ると、子どもはもっと感情を露わにします。そうして、無益な言い合いが繰り広げられることになりがちです。
おかあさんが怒ってしまう理由は、いくつか考えられます。たとえば次のようなことです。
・疲れ ・せかされている ・失望している ・決まりに関する衝突
・子どもに邪魔をされる
おかあさんは忙しいのです。そんなおかあさんにとって、わが子がしっかり何でも自立してやってくれればどんなにか救いになるでしょう。しかし現実は逆になることが多いものです。
おかあさんのわが子に対する期待。それは言葉では言い表すことができないほど大きいのではないでしょうか。受験をさせるのも、そんな大きな期待の表れです。ところが、いざ子どもを塾に通わせてみるとどうでしょう。ちっとも期待通りがんばってくれません。期待がやがて失望に変わってくると、わが子の現状に対する我慢にも限界が来てしまいます。決まりに関する衝突も、これらと無縁ではありません。勉強をすると決めたはずの時間になっても、相変わらずテレビにかじりついている状態が続くと、注意だけでは終わらなくなってしまうのが親というものです。
しかしながら、親が感情的になって叱ってよいことは一つもありません。親が後味の悪い思いをするだけならまだしも、子どもの健全な成長にとって大きなマイナスになってしまうのです。
心理学者の調査によると、よく怒る親の子どもは、怒りをコントロールできる親の子どもよりも、怒りっぽく、反抗的で、人の言うことを聞かない傾向が強いという結果が示されています。また、学校の成績も振るわず、社会に出てから必要とされるコミュニケーション能力や感情の抑制能力にも欠けるという報告がなされています。
では、いったいどうしたら怒らずに、冷静に叱ることができるのでしょうか。ここまでともに考えてきたところで、ワーク2に移りました。
ワーク2の最初の課題は、二人一組のペアで行いました。まずは、「叱るだけのつもりだったのに、いつの間にか怒ってしまった」場面を思い出し、全員メモを取っていただきました。そのうえで、その内容を互いに相手に報告してもらいました。また、なぜ怒ってしまったのかを思い出し、理由を相手に話してもらいました。そこまでを全員が終えると、今度は数名単位のグループをつくり、「どうしたら感情を抑えて叱れるようになれるだろうか」というテーマで、話し合ってもらいました。
子どもを冷静に叱れない。それは、ほとんどのおかあさんが抱えておられる悩みのようでした。親として必ず体験する、乗り越えるべきハードルなのですね。
予定よりもだいぶ長くなってしまいました。後半は、次回お伝えしようと思います。