勉強は、溜めずに“コツコツ”と ~新年度講座の開講に向けて~

1月 22nd, 2015

 受験勉強が本格的な段階に入っても、相変わらず勉強に身が入らず中途半端な受験生活を送っている子どもがいます。こうした状態を一刻も早く抜け出さないと、受験の見通しは厳しくなってしまいます。おたくのお子さんはどうでしょうか。

 勉強が軌道に乗らない原因を突き詰めると、多くの子どもに共通した傾向が認められます。それは、毎日の継続的な取り組みがおろそかになっていることです。そこそこできるのに、今一つ進境が見られない子どものなかには、「やるべきことをつい放置してしまい、テスト前や課題の提出前になってからまとめて勉強をやっつける」といったような、非能率的な勉強をしている例がたくさんあります。こうしたやりかたをしている限り、せっかく授かった能力も花を開かせることはできません。

 毎日の継続が定着すると、勉強が苦にならず、さらには学んだことが身になる人間に成長していくことができます。ですから、結局毎日コツコツと取り組むことは、学力形成における必須の条件であると言えるでしょう(「そんなことはわかっている」と言われそうですが)。

 もっとも、大人の場合はわかっていてもそうはいきません。仕事中心に生活をしていかざるを得ませんので、自己啓発のために学びたいことがあっても、資格試験に挑戦しようと思っても、「毎日コツコツと」といった取り組みを実行するのは困難です。時間がつくれるとき、仕事の負荷が軽くなったときに集中的に取り組むことで成果をあげるしかありません。

 しかしながら、能力形成の真っただ中にある子どもには毎日の継続が必須です。また、それはすべての子どもができることです。最近は、「習い事やスポーツで忙しい」と言って、塾(弊社)の課題ができない理由を説明(弁解)する子どもがいます。しかしながら、知的能力の基礎を築くべき小・中学生の期間は、毎日の学習の取り組みこそ最優先されるべきだと筆者は思います。

 「毎日継続して取り組めば力がつく」と、誰だって思っています。しかし、その当たり前のことを知っているはずの親も、わが子がやったりやらなかったりで、テストの前に慌てて取り組んだり、溜まった宿題をまとめて片づけたりしているのを見過ごしておられるのはなぜでしょうか?

 4・5年生までは、そういった間に合わせの勉強でテスト成績をカバーできる頭のよいお子さんもいます。しかし、受験対策の勉強が本格化する6年生になると通用しなくなります。やるべき課題の質も量も格段とレベルアップするからです。「ちゃんとやっておけばよかった」と、後になって後悔しないためにも、今のうちに継続的な学習の取り組みを定着させておきたいものです。

20150119 そこで、改めて「継続」の重要性をここでお考えいただきたいと思います。まずは、学んで得た知識や技能の定着と継続的学習の関係について。すでに何度かこのブログの記事に書いてきたと思いますが、人間の脳は、繰り返しインプットされた情報を重要と認識し、長期記憶へと転送する仕組みをもっています。繰り返し学ぶクセをつけておけば、自然と力はつくのです。学校や塾で学ぶ程度の事柄は、継続的な取り組みを怠らなければ誰でもマスターできるのです。

 また、繰り返し考えるという行動は、解決しよう、理解しようという脳内の精神活動に他なりません。それを繰り返すことによって、その方面の思考の推進に必要なニューロンのシナプス結合を促します。それを絶えず繰り返すわけですから、当然脳は連続的に発達していきます。

 このような好循環が生まれつつあるかどうかは、子どもの学習の様子を見ればわかります。はじめは、「わかんない」「無理!」としり込みしていたのが、何度か考え直しているうちに手がかりが見つかり、ついには「わかった!」と喜びの声をあげる。そういう経験を繰り返し味わうかどうかが大きな違いを生み出すのです。もしも親が、そういうわが子の様子を見逃さず、「よくできたね!」「すごいね!」と、一緒に喜んでやったりほめてやったりすれば、子どもの取り組みにますます弾みがつくことでしょう。

 次に、「なぜ継続できないか」の問題です。「うちの子は計画性がないから」とおっしゃるかもしれません。これについて一言申し上げたいのは、「4~5年生の子どもに計画性を求めるのはまだ難しい」ということです。達成目標を念頭に置き、その実現に向けて計画を練る。脳神経心理学の専門家によると、そういった脳内の機能が育ってくるのは7~8歳頃からです。ですから、自分で受験勉強の計画を立てて実行するということは、学習の程度や内容から考えて、6年生ぐらいにならないと難しいのではないかと思います。

 では、なぜ7~8歳以降なのでしょう。それは、こうした脳の働きを担う部位が前頭前野だからです。前頭前野の発達は人間ならではのことで、脳幹部(脳の覚醒状態をコントロールし、対象に注意を向けさせる部位)、大脳皮質の中心溝の後部分(五感を通して入力された情報をまとめる部位)が完成の域に達したあとに成長していきます。つまり、人間の脳においていちばん後に発達を遂げる部位なのです。

 そこで、小学生が計画に基づく勉強ができるようになるには、「親子で計画を立てる」ということが必要になってきます。すでにこのブログで何回かお伝えしていると思いますが、たとえば受験勉強の取り組みに関する計画を立てるにあたっては、学習の割り振りをどうするかなどについて、「親が問いかけて子どもと一緒に決定する」といった決めかたをし、子どもに「自分で決めた」と思わせることが実行力を高めるためのポイントです。

 小学校4~5年生の段階では、まだ自分で妥当な計画を立てることはできません。しかし、大人が決めた計画を押しつけられることも嫌います。2月(5・6年部)、3月(4年部)からの新年度の講座の開講にあたっての学習計画は、ぜひ親子で相談して立てていただきたいと存じます。計画を立てる際の基本的な事項は、開講日のオリエンテーションの際お子さんに配布する冊子に案内を載せています。それを参考にしてください。

 もう一つ補足すると、子どもとのやり取りで決める計画は、「何を、いつ、どれだけやるか」といったように、極力具体的な形で決定するということが重要です。まだ目標と、その達成プロセスを突き合わせながら考えていく力が育っていないからです。そうした体験を経て、子どもは徐々に目標を念頭に置き、その達成のための計画を立てる力を養っていきます。

20150119b 新年度の講座の開始にあたっては、「学習は親子共同で立てる」「計画の内容は極力具体的に」――この二つを前提に、計画に沿った継続的な受験学習の実現に向けてがんばっていただきたいと存じます。「勉強は、溜めずにコツコツと」を親子の合言葉にしていただき、継続的な取り組みを実現できれば、お子さんは当面の中学入試を突破できる学力を身につけられるのみならず、中学以降に求められる「学習習慣」や「計画的な学習姿勢」を備えた人間に成長することができるでしょう。

 学習の内容に親が立ち入り、教える必要はありません。しかし、子どもの勉強に関心を寄せ、学習の継続を奨励し、必要に応じてアドバイスをし、努力を見逃さずにほめることは大いに必要です。この春から始まる講座においては、そういった応援をしてあげてください。

 こうした応援は親にとってもかなり負担でしょうが、その代わりお子さんにたくさんの収穫がもたらされることでしょう。よろしくお願いいたします。

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