わが子をどのように叱っていますか? その2

4月 6th, 2015

 前回は、掲げたタイトルの導入話のみで終わってしまいました。今回は、予定通り話を進めてまいろうと思います。

 中学受験は、何につけ未熟さの抜けない小学生の受験ですから、大人が期待するような自覚や行動の調整能力を受験生本人に期待するのは難しい面があります。その一方、親は受験させたい中学校の入試難易度が気になり、合格の見込みを早く確実にしたいという思いがあります。その結果、子どもの成績状況や学習の取り組みに不満やイライラを募らせることになりがちで、しばしば注意を促したり、指示や命令を下したりします。

 しかしながら、多くの場合、肝心の子どもは親の期待するレベルにありません。現実と受験の見通しを突き合わせ、自分を顧みたり自己調整をはかったりすることができませんから、親はますます苛立ったり焦ったりし、毎日のように叱るような事態に陥りがちです。

 ところが、親にとってわが子を叱るということは意外と難しいのです。前々回の話題と関わってきますが、親がわが子を感情的にならずに叱るのは難しく、どう叱ったらよいのか考え込んでしまうことが多いものです。

 20150406aそれは、中学受験生をもつ親特有のことではありません。子どものしつけの途上において、叱るという行為は必然的に生じるものでありながら、互いに近すぎる関係であるゆえに感情が伴いがちで、親も冷静に叱ることができずに悩んでしまうのです。

 そこでまず、日本の親はわが子を叱る際、どんな叱りかたをしているのか、現状を調べてみました。以下の資料は、学者の著作から引用したものです。「親が子どもを叱るときによく使う表現を分類し、それに対する子ども側の言語的反応について報告した」ものです。なお、「こういった類の研究はわが国では行われている例が少ない」そうです。

<叱りかたのパターン>

 直接的表現
 1.望ましくない行為の制止
 2.望ましい行為の実行欲求

 間接的表現
 1.望ましくない行為の指摘
(例:「ほら、忘れ物をした」)
 2.想起(前にしたことを思い起こさせる。例:「前にも言ったでしょ」)
 3.望ましくない理由の説明(例:「火事になるに決まっている」)
 4.罰の予告(例:「押し入れに入れるぞ」)
 5.逆説的に命令する(例:「勉強したくないなら、勉強はするな」)
 6.子どもの人格評価(例:「だらしない子どもだ」のように子どもの人格
   特性に帰属させ、子どもを評価する)

 7.突き離し(例:「もう、好きにしなさい」)
 8.問いただし(例:「どうして○○できないのかな」)
 9.話し手の不快感の表明(例:「おかあさん、がっかりしたわ」)
 10.悪態、ののしりによる不快感の表明(例:「バカ」「死んでしまえ」)
 11.世間体意識(例:「ご近所から笑われるよ」)
 12.その他(例:「おれの子だったらもっとできるはずだ」)

 罪の執行(例:実際になぐる、ける)

 この研究は、「大学生と小学5・6年生の児童に「おとうさんやおかあさんから怒られたとき、なんて言われましたか」と尋ね、それにより収集された1,670の叱る表現を分類し、叱りかたパターンを導き出したもの(上記資料を引用した書物より)」です。小学生の子どもをおもちのかたで、「わが子を叱ることがない」というかたはごく少数であろうと思います。ご自身の叱りかたと符合するものがあったのではないでしょうか。

 また、上記のような叱りかたに対する子どもの反応がどのようなものであるかについても調査されています。以下は、学者の書物にあった解説の引用です。

 受諾反応(「はい。うん」などの応答、「ごめんなさい」などの謝罪、「わかった」などの納得反応)は、直接的な表現である「望ましくない行為の制止」や「望ましい行為の実行要求」、そして間接表現のなかの「望ましくない行為の指摘」や過去に叱られた経験の「想起」で見られたが、「人格評価」では極めて受諾反応が低かった。

 一方、反発反応を喚起しやすいのは「人格評価」と「突き離し」であった。自分の性格を非難されたり、自尊感情を傷つけるような叱りかたをされると、子どもは反発を感じ、却って心を閉ざし、親の言うことを聞き入れようとしないことがわかる。

 さらに、子どものころ親からどのような叱られかたをされたかを大学生に尋ねた結果も報告されていました。それによると、大学生になった今もいやだったと思う叱られかたは、「くどい叱りかた」(例:しつこく叱る。今、怒っていること以外のことをもちだし怒る)、「他者と比較して叱る」(例:きょうだいと比較される)、「一方的否定」(例:言い分を聞かず頭ごなしに悪いと決めつける)、「感情的・親都合優先」(例:怒鳴る。親の気分で怒る)、「遠回しな叱りかた」(例:いやみったらしく言う)、「命令的な叱りかた」(例:子どもの言い訳は聞きいれない)などに分類できるそうです。

 次の表は、この結果を踏まえて提起されていた「効果的な叱りかた」です。

<効果的な叱りかた>

 1.くどくど叱らずに短時間で叱る
 2.他者と比較して叱らない
 3.なぜ叱るのかを明確にして叱る
 4.子どもの言い分を聞き、頭ごなしに子どもを否定しない
 5.問題の原因となったことだけを叱り、余計なことは叱らない
 6.もってまわったような言いかたは避け、直接的に叱る
 7.感情的にならず穏やかに叱る

 どうでしょう。参考になったでしょうか。「わが子を叱る」ということについては、何度もこのブログで話題にとりあげています。その記事を書くにあたっては、内外の専門家の著作にあたったり、弊社の教室に通う多数の子どもたちに実施したアンケートの結果を踏まえたりしました。よって、親が心がけるべき叱りかたについては、ほぼ同じような結論に達したように記憶しています。よろしければ、過去の記事を探して参照ください。

20150406b 「どう叱ったらよいかわかってきた。でも、やはり感情的に叱ってしまう現実は変わらない」とおっしゃるかたもおありでしょう。しかし、心配無用です。親ができるだけ感情を抑えて子どもに接するよう心がけているなら、必ず子どもはそれを感じ取ります。子どもだって、自分がいけないことはわかっているのです。一生懸命に怒りの感情を抑えようとしている親の気持ちが伝わらないはずはありません。むやみやたらと感情的に叱るのと、結果として感情が抑えきれなくなるのとでは、同じ叱るのでも本質的に異なるのです。

 前々回にお伝えした、男の子と女の子の違いも踏まえ、愛情に基づいた適切な叱りかたをぜひ心がけてください。おとうさんおかあさんの願いはきっと届くに相違ありません。

※今回ご紹介している調査資料は、「親と子の生涯発達心理学」(小野寺敦子/著)から引用しました。

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