“音読”が子どもの学びを変える!  その1

6月 8th, 2015

 今回は、2015年度の前期第1回「おかあさんの勉強会」の様子や内容についてご報告します。この「おかあさんの勉強会」は、弊社の「週3日コース」に在籍される4・5年生の保護者(主としておかあさん)を対象に、前期2回、後期2回実施している催しです。

 先日、全6校舎の1回目が終了しましたので、都合で参加できなかったかたや、興味はあったものの躊躇されたかた、会員ではなくても関心をもってくださったかたのために、おおよその内容や流れについてお伝えしてみようと思います。

 今回は、音読をメインテーマに据え、「音読が子どもの学びを変える!」というテーマで実施しました。近年、「読解力不足の子どもが増えている」と、各方面からしきりに警鐘が鳴らされています。これと深い関係があると思われる、子どもの活字離れ、読書量の減少なども深刻な問題として再三とりあげられています。みなさんはどう思っておられるでしょうか。

 弊社の教室に通っているお子さんは、受験を視野に入れている小学生ですから、一般の小学生よりは読解力の平均水準はかなり高いと思われます。しかしながら、指導現場から「国語の授業で音読をさせると、やたらと躓く子どもや、状況・場面にふさわしい読みかたのできない子どもが多い」という報告があります。また、「うちの子は、国語の読解力が足りません」という保護者からの相談も少なくありません。

 音読については、すでにこのブログで何度も取り上げており、たくさんの方々が読んでくださっています。しかしながら、「どうやってわが子に音読をさせるか」となると簡単ではないようで、特に高学年になったお子さんは、「恥ずかしい」「たいぎい(面倒くさい))などと言って、やりたがりません。また親も、「今さら音読をやっている場合では」などとためらわれるようで、その必要性をある程度わかっていただいているものの、なかなか実行に結びつかないようです。

 いつ音読をするかについてですが、読解力の増強を図りたいお子さんに、「今さら遅い」ということはありません。「今すぐにでも始めるべき」です。なぜなら、一人ひとりの黙読力は、音読の滑らかさや正確度がそのまま反映されたものだからです。したがって、音読が下手なお子さんが上手に黙読できるわけがないのです。その理由については、このブログで何度もご説明していると思います。

 こうした点も強調した成果があったのでしょうか、各校舎ともかなりの数のおかあさんが参加くださいました。筆者はこの催しの企画立案者であることから、広島市内の某校舎に状況視察と応援を兼ねて参加させていただきました。この校舎でも20数名のおかあさんが参加され、最初の自己紹介ゲーム(アイスブレイク)が始まるや否や、教室中におかあさんがたの楽しげな話し声が響き渡っていました。

 アイスブレイクが終了し、場の雰囲気が打ち解けたところで、最初の話題である「わが子の音読の現状を振り返る」を始めました。読みの力は、全ての教科の学習を支えます。国語は言うに及ばず、理科・社会の学習も、読みの手立てがしっかりしていてこそ成果につながります。算数においても、文章題が明暗を分けることが多いし、文章題以外においても言葉を媒介にして課題の内容理解をしますから、読む力なしには到底勉強は成立しません。まさに、「“読み”を制するものが“学力”を制する」といっても過言ではないのです。

 こうした話をお伝えしたうえで、最初のワーク、「わが子の読みの現状を振り返る」に入りました。ワークは、おかあさんがたに二人一組のペア、もしくは4~5名のグループになっていただき、共通のテーマに基づいて話し合っていただく趣向となっています。

 このワークでは、まずおかあさんがたに質問用紙を配布し、①音読はどれぐらいの頻度でしていますか? ②読書はどれぐらいしていますか? ③お子さんの読解力について、どのようにとらえていますか?について現状を記入していただきました。そして、4人ごとのグループになっていただき、一人ひとり順に、この三つの質問にどう書いたかをご報告いただきました。今この記事をお読みになっている、同じぐらいのお子さんをおもちのかたは、現状を振り返ってみてください。

 ここでは、まだ何らかの現状の打開策を話し合いません。とりあえず、他の家庭の現状も知り、情報交換をしながら今の状態をどう判断したらよいのかを考えていただく程度に留めました。

 ワークが終了したところで、次の話題である「なぜ音読練習が黙読力の土台になるのか」に移りました。ここでの説明内容を全てご報告するとブログ記事1回分ほどかかりますので、ここではごく簡単にご説明するに留めます。なぜ音読が必須なのか、その理由は以下の通りです。

 小学校入学をもって、子どもは一からから文字学習をスタートします。文字をマスターするには、文字と音の関係を一つひとつ照合していく作業が必須となります。つまり、文字の読みを声に出さなければ、どう読むのかを理解できません。その作業を繰り返しながら、書き言葉を少しずつマスターしていきます。たとえば、「つ=tu」「く=ku」「え=e」といったように、文字の一つひとつとその音を突き合わせ、「つ」と「く」と「え」を連続して声に出して読んで、「つくえ」という言葉のまとまりを学びます。こうして子どもたちは、文字のつながりと区切り目を少しずつ理解できるようになります。ですから、この段階では読みのスピードは非常にゆっくりとしています。子どもにとって、読むという行為は大変な作業なのです。

 こうして、文字の音を確かめ、つなげながら徐々に簡単な文を一通り読み切ることができるようになります(無論、就学前教育である程度読めるようになっているお子さんもいますが、ここでは原則をご説明しています)。こうしたスキルのレベルアップとともに、子どもは文字の連なりから言葉を瞬時に見つけ出せるようになっていきます。そうして、やがて2年生頃(多くは前半)から文字列が示す言葉とその音を声に出さなくても頭のなかでイメージできるようになっていきます。これが黙読です。

 ここで注意していただきたいのは、「黙読は、音声を出さない音読だ」ということです。声にして外にはは出さないけれども、自分の声を脳内でイメージするわけですから、その速さや滑らかさは音読の力がそのまま反映されます。みなさんも、新聞か本の活字を目で追ってみてください。声に出さないだけで、自分の声をイメージしていることに気づかれるでしょう。言語理解中枢は、音声言語を理解する機能はありますが、文字言語を理解することは本来できません。そこで、文字列の「音」を脳内でイメージすることで意味の理解を可能にしているのです。

 黙読は音声を伴わない分、速く快適な読みを可能にしてくれます。しかし、声に出して読む作業をスムーズにこなせない限り、文字列に基づく一連の音を即座にイメージすることはできません。だから、音読が不完全なら黙読も不完全であり、黙読だけスムーズにできるということはあり得ないのです。

 勉強会では、もう少し詳しくご説明しましたが、音読練習の積み重ねの重要性と、スムーズで精度の高い黙読は、音読がちゃんとできてこそ可能なのだということがおわかりいただけたでしょうか。

 ここまで進めてきたところで、子どもたちに実施したアンケートの結果をご報告しました。このアンケートは、弊社の4・5年部クラスを任意に抽出して実施したもので、349名の子どもたちに協力してもらいました。質問の内容は、①音読は好きですか?②本を読むのは好きですか?などです。①の答えで多かった選択肢を順に並べると、「どちらかと言えば嫌い」→「どちらかと言えば好き」→「好き」→「嫌い」となりました。②は、「好き」→「どちらかと言えば好き」→「どちらかと言えば嫌い」→「嫌い」の順でした。
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 上の図は、二つのアンケートの結果わかった「音読が好きと本を読むのが好きとの関係」です。音読が好きな子どもほど、本を読むのも好きだという傾向がはっきりとわかりました。

 この資料をご覧になると、「音読を楽しく頻繁にやる子どもほど本を読むことを好む」という、相互の関連性が見て取れますね。ここまでの説明と符合する結果です。音読を楽しみ、音読を励行する子どもは押しなべて黙読もスムーズで正確です。こういう子どもは、活字を読むことが苦痛でないため、より本の世界に興味をもち、読書を励行する傾向があります。それにしても、「音読が好き」と「本を読むのが好き」の対応関係が90%近くに達するとは驚きでした。

 アンケート結果から、さらに興味深いことが判明していますが、すでにたくさん書いてしまいましたので次回ご紹介しようと思います。よろしくお願いいたします。

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