“音読”が子どもの学びを変える!  その2

6月 11th, 2015

 今回は、6月8日に引き続き、前期第1回「おかあさんの勉強会」の様子や内容についてご報告します。前回は、音読に関するアンケート(4・5年部会員生対象)の調査結果をご紹介し始めたところで終わりました。

 このアンケートは、音読の好き嫌い、本を読むことの好き嫌いを調査したうえで、両者にどんな相関関係があるか調べたものです。前回ご紹介したことを再度ご報告すると、「音読が好きな子どもほど、本をよく読む」ということがわかりました。当然といえば当然ですが、音読が好きであるということは、かなりの確率で「上手に読める」「表現描写が好き」ということと一致するとみてよさそうです。それが読書への積極的姿勢につながるのでしょう。

 そして、アンケートからさらに興味深いことがわかりました。次の資料をご覧ください。これは、「国語のテストの問題処理時間と音読が好きかどうかの関係」を調べたものです。

20150611

 「マナビーテスト」とは、弊社の会員ならよくご存じですが、2週間に1回実施している定例の単元テストです(全会員が受験)。このテストの国語素材文を読んで解答を終えるまでの時間と、音読が好きかどうかに、かなり明確な関連性があることがわかりました。

 テスト時間内に問題を解き終わっている子どもの多くは、「音読が好き」もしくは「どちらかと言えば好き」と答えていたのです。音読が好きであることは、必ずしも「読むのが速い」「読むのが正確」とは限りませんが、大概は一致しているものです。ですから、音読を好み励行することが、文章の読解と問題解答にかなりよい影響を与えることは間違いないと言えるでしょう。アンケート標本は350近くありますから、データの信憑性についても間違いないと思われます。

 なお、たくさんの本に手をつけるものの、挿絵を見ながら飛ばし読みをするタイプの子どもがいます。そういう子どもは、文章をよく読んでいないので読解力は身につきません。その点、音読は活字の言葉の全てを音声に変換しますから、文章から得られる情報を漏らさず処理する姿勢を養ってくれます。その意味でも、音読は小学生、特に中学受験生にはとても役立つ勉強法の一つなのです。

 アンケートの説明後は、つぎの「いつどのように音読練習をするか」というテーマに移りました。ここでは、音読のもつ役割や重要性をご理解いただき、そのうえで「家庭でどのように音読をサポートしたらよいか」についてみなさんで考え、話し合っていただくという流れを設定しました。

 まずは、ある学者の著作にあった「大きな声での音読の奨励」の部分をご紹介し、家庭の音読作戦の参考にしていただきました。大きな声による音読の効能を、その学者は次のように述べておられました。

①親が子どもに取り組ませやすい ②子は自己表現できるから気分がよい ③進歩がはっきりわかり、励みになる ④繰り返しやれば学力がつく
⑤家族みんなが明るくなれる

 この5つの説明の後、おかあさんがたに積極的な音読サポートを促すべく「私たちは、受験勉強の内容に関わることは、できるだけ避けてくださいと申し上げています。しかし、音読のサポートは別です。むしろおかあさんがたに積極的に関わっていただきたいのです」とお伝えしました。子どもの学習状況についてイライラし、叱るばかりでは、やがて子どもは親を敬遠するようになってしまいます。それよりも、音読を一緒に楽しみながら、子どもの読みの熟達をサポートするほうがはるかに得るものが多いのではないでしょうか。よい親子関係を築くことにもなります。

 また、音読の効能を知っただけでは、「どう音読を親が手伝うか」についてのアイデアが浮かばないかたもおられるでしょう。そこで、「音読の材料は、塾のテキストでも学校の教科書でもいいですよ」ということを伝えしました。また、読みが上手になるということは、脳のなかで読みの作業に必要な神経ネットワークが強化されるということです。したがって、音読の効果を得るには、毎日少しずつの時間でよいから、「毎日続けられる時間設定を」というようなこともお伝えしました。毎日のように継続してこそ、脳内で読みの態勢が整えられ、読む力が増強されるのです。

 さらに、声に出して読めば、いいかげんな読みかたや、間違った読みかたをした場合に、親にも子ども自身にもはっきりとそれがわかります。そこが音読のよいところですから、「速く読もうと焦らさないよう配慮し、ゆっくり正確に読むことから着実にやりましょう」といった趣旨のこともお話ししました。「読みの力を急いで挽回しなくては」と焦っても効果は得られません。今を出発点にして、「いかに継続的に音読に取り組むか」を考えるべきです。続ければ必ず成果が得られるのですから。そこで、「音読練習に、『今さら遅い』ということはない」ということを強調させていただきました。実際、入試前半年から始めて、奇跡の逆転勝利を得た受験生もいるのです。

 以上を受け、ワーク2を始めました。テーマは、「音読練習を継続させていくための我が家の実践方法」というものです。まずは記入用紙を配布し、次の点についておかあさんがたの考えを書いていただきました。

①音読をやるうえで、我が家の理想的な時間帯は? ②何分ぐらいなら無理なく続けられる? ③毎日続けることで障壁となる問題は何? ④前述の障壁を乗り越えるための手段は? 

 そして次に、グループごとに分かれ、順番に書いた内容をご報告いただきました。聞いているかたには、質問やコメントをお願いしました。そして、全員の報告が終了したあと、他の人の発言で参考になった点、修正したい点を確認し、各自メモを取っていただきました。ワーク終了後のおかあさんがたの様子を拝見すると、かなりのかたが「家庭でのわが子の音読励行」について何らかの作戦を思い描いておられるように感じました。

 「わが子に音読をするようどう働きかけるか」について、ここで筆者からまとめをさせていただこうと思います。お子さんが4年生、5年生ぐらいであれば、以下のような働きかけも効果があるかもしれません。まず、「音読を励行すれば、黙読力が向上するので、読むという作業が快適になる」ということをお子さんに伝え、それが自然と「読書活動の活発化」を促し、「語彙の増加」、「読解力の進歩」を引き出すし、「国語のテストで時間が足りなくなることもなくなる」など、プラスの連鎖が引き起こされるのだということを、子どもにもわかるよう伝えてやりましょう。

 それから、国語のテキストや学校の教科書の音読を、1日10分程度でもよいから続けることを提案します。時間は少しでよいから、毎日続けるのです。前述したように、音読は視覚と聴覚の二つのルートで著述内容の情報を受け止めますから、とてもよく記憶されるということも付け加えます。そうして、まずは「1日10分」の音読の継続を約束するのです。とりあえず練習が始まったら、お子さん自身が今までちゃんと読めていなかったことに気づくかもしれません。親は音読練習を聞くだけでもよいのですが、ちょっとでも進歩しているようならほめて励ますことを忘れないでください。

 読みの状態が改善の傾向を示し始めるまで、若干難渋するかもしれません。しかし、いったん効果が表れ始めるとお子さんは積極的に音読に励むようになるものです。声に出して読むことは、気持ちのうえで積極性が求められます。それをあえてやるところまで行くと、その積極性がいろいろな面に波及してきます。そうなると、もはや親は促してやらせる必要はなくなります。どうでしょう。親のしてやれることとして、音読の働きかけをがんばってみませんか?

 つぎはいよいよ最後のテーマです。「音読をより効果的なものにするために」というテーマで、弊社から若干の提案をさせていただきました。といっても、提案の内容は、「腹式呼吸の要領で下腹(へそ下5、6センチのところ)に力を入れ、大きな元気のよい音読を心がけよう」といった簡単なものです。

 かつて音読は学習に必須の方法でした。江戸時代の寺子屋では、学問と言えば漢籍の素読が基本であり、徹底的な音読の反復が行われていました。下腹にぐいっと力を入れ、背筋を伸ばし、のどからではなく腹から声を出しながら、耳で自分の読みを確かめるような読みかたを奨励されたようです。これなら、読んだ内容が脳に刻み付けられたことでしょう。

 余談ながら、わが国の同時通訳の第一人者が、新聞の音読を日課としておられることをご紹介しておきます。音読をされている理由は、「仕事で話題になる時局のネタを記憶するうえで、音読が非常に効果的だからです」とご本人は述べておられました。先ほども書きましたが、音読は読みの熟達に効果があるだけでなく、よく記憶に残る学習法なのですね。その意味でも、音読をぜひ中学受験生の子どもたちに励行していただきたいものです。

 2015年前期の第1回「おかあさんの勉強会」は、だいたい以上のような内容・流れだったかと思います。最後に、校舎責任者のまとめの言葉で終了としました。

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