学びの飛躍をこの夏に!  その3

7月 2nd, 2015

 6月19日(金)に実施した、「学びの飛躍をこの夏に!」というタイトルの催しの様子を、このところご紹介しています。

 前回はPart.2までの報告で終わったのですが、「一つの行事について、2回も書いたのでもういいか」といったんは思いました。しかし、Part.3を残して終わると尻切れトンボになってしまいます。それではすっきりしないので、結局続きを書くことにしました。よろしくお願いします。

 Part.3のタイトルは、「子どもの学習は親しだい!」となっています。これは、小学生の受験が親のサポートなしには成立しないものであり、親の出かた一つで勉強の成果も大きく変わる可能性があることから名づけたものです。以下、小タイトルごとに内容をご紹介してまいりましょう。

① 小学生の学習意欲向上の鍵は親が握っています。

 このパートでは、まず子どもの学習意欲を支える要素にどのようなものがあり、それらの要素がどのぐらいの強さで作用するかを、大学の先生の作成された資料をもとに考えてみました。この資料は、このブログで過去にご紹介したことがあります。覚えておられるかたもおありでしょう。

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 この資料をご覧になれば、小学生の子どものがんばりのもとになるものが何か、かなり明確になるのではないでしょうか。小学校4年生ぐらいから中学1年生ぐらいまでの時期は、「親の期待するような人間でありたい(資料では、「規範意識にもとづく意欲」とあります)」という気持ちが学習意欲を支える要素として最も大きいということがわかります。

 低学年の時期は、「親にほめられたい」「ご褒美がもらえる」「親に叱られたくない」という気持ち(資料では「賞罰による学習意欲」とあります)が意欲に直結していました。しかし、学年が上がる(内面が成長する)につれてこの要素は下がっていき、小学校卒業時には一番低くなります。

 また、大人は「目標めざしてがんばれ!」と子どもによくハッパをかけますが、まだ社会との接点が少なく、世の中についての知識が少ない小学生の時期には、「目標を達成したい」という願望が意欲を突き動かすということはあまり期待できません。「なんでもっと受験を意識してがんばれないのか」、などと不満の目でわが子を見ていた保護者もおありでしょう。これで状況がご理解いただけたのではないでしょうか。年齢的にそういうことはまだ無理なのですね。将来の目標というのは、現在・過去・未来に向けた様々な知識あってこそ定められるもので、小学生が思い描く目標は、単なる“あこがれ”の域を出ておらず、実現に向けて継続的な努力を引き出すまでには至らないのが普通です。

 なお、「内発的学習意欲」というのは、「知りたい」という知的好奇心に基づく意欲で、人間にとって最も好ましいものだと一般に言われます。しかしながら、内発的学習意欲は他の要素と比べると相対的に高めではあるものの、年齢とともにゆっくりと下がっていきます。その理由を、学者は「子どもは成長するにつれて、将来どのような学問をめざしたいだとか、どんな職業に就きたいなどといった目標をもつようになります。この目標達成に向けた意欲は、内発的学習意欲が社会性を帯びてきた結果生まれてくるものです」という見解を示しておられます。

 このことから言えるのは、小学生のうちに勉強の面白さにふれ、夢中になって学ぶ体験をしておくことが極めて重要だということです。そういう体験を通して、子どもはどんな学問が好きか、何が自分に向いているかを感じ取り、将来の学問的な方向や職業選択の道を見出していくのではないでしょうか。受験勉強を大人主導で無理にやらされる経験をすると、自ら目標を定めて勉強に打ち込む人間にはなれません。子どもの将来に思いを馳せるなら、どんな学習や取り組みで力をつけるかということもぜひ大切にしていただきたいと存じます。

 この項の締めくくりとして、「子どもは、親の期待に応えようとするものです。そのことに基づくなら、まず親子の信頼関係をしっかりと築くことが重要ではないかと思います」とお伝えしました。親子の強い信頼関係が背景にあってこそ、子どもは「親の期待に沿いたい」という気持ちを強めるからです。

②子どもの学習意欲を高める親の関わりとは!?

 小学生の学習意欲を高めるうえで、親の差し向ける期待が深く関わっていることがわかりました。しかしながら、親として考えたいのは「子どもの健全な成長につながる期待の差し向けかたとはどういうものか」ということではないでしょうか。

 日本の子どもは、世界的に見ても学力は相当高いほうです。しかしながら、世界中の子どもたちのなかで、最も「自分に自信がもてないでいる」という調査結果があります。その理由は、「親から向けられる期待が大き過ぎるのからではないか」と専門家は指摘しています。最近の親は総じて高学歴です。また、少子化の進行とともに、子ども一人当たりにかける教育投資も高くなっています。必然、親の期待もかつてより高いものになりがちです。しかし、それが子どもにとって重圧になり、「とても親の期待するような人間にはなれない」と思わせたとしたら、逆効果を招いてしまいます。

 そこで、「親が示すべき期待は何でしょうか」ということを、ごく単純な対立関係でお伝えしました。20150702b

 子どもは親の本音を実に鋭く見破ります。受験への見通しを得るうえで最もわかり易いのが成績ですが、その成績に親が一喜一憂している様子を見た子どもはどう思うでしょうか。「うちの親は、ボク(私)の成績さえよければ満足なんだ」と思うことでしょう。また、がんばっても上がらないことが多いのが進学塾の成績です。みんなそれぞれ勉強しているのですから。そんなとき、親ががっかりした表情を見せたなら、子どもはどう思うでしょうか。

 どんな成績でも、がんばっていたらそれを評価してくれる親。がんばったのに成績が伴わないとき、その原因を一緒に考えてくれる親。そういう親を子どもは信頼し、尊敬します。受験生活を通じて、親はわが子に何を期待しているのかをしっかりと伝えてあげてください。その期待が間違っていなかったなら、「親子の絆」という、受験でのどんな結果にも勝るすばらしいものを手に入れることができます。

③ 受験生活で親が余裕を失わないために

 まだ人間としての完成形に程遠い小学生の受験ですから、見守り応援する親、特におかあさんはストレスと闘う毎日を強いられがちです。そのストレスに負け、子どもにつらく当たってしまうと、気分が滅入ってしまうこともあるようです。そうならないための、おかあさんの気持ちの向けかたについて考えてみました。

 そこでご紹介したのが、「あなたは子育てに向いていると思いますか」という大がかりなアンケート調査の結果です。これも、このブログで3回にわたって記事にしていますので、ここではごく簡単に要点のみお伝えしておきます。詳しくは、以前のブログ記事を参考にしてください。

 千名以上のおかあさんがたを対象にしたアンケートで、「自分は子育てに向いている」と思う人と、「自分は子育てに向いていない」と思う人とで、明らかに違った反応を示したアンケートの質問項目が6つありました。それをご紹介してみましょう。

図1

 どうでしょう。「自分は子育てに向いている」と考える人と、「自分は子育てに向いていない」と考える人の違いがある程度おわかりいただけたのではないでしょうか。

 「自分は子育てに向いていない」と思う人は、「心配症である」、「面倒なことがあると投げ出してしまいがちである」、「何につけ、ふんぎりがつかない」、「物事をのんきに見守ったり待ったりできない」、「人の面倒を見るのは好きでない」、「他人に対して批判的である」、「人に対して言いたいことが言えない」といった自己診断をする傾向が強いことがわかりました。

 子どもとの関係を良好に保ち、子どもをがんばらせる親はどういう親でしょうか。前述の「子育てに向いていない」と思う人とは逆の心のもちようをイメージしてみたらよいでしょう。たとえば、子どものことであまり心配症にならず、面倒なことでも投げ出さず、どうしようかといつまでも悩まず、何事ものんきに構え、人の面倒を見るのを喜びとし、言いたいことは率直に言えて、子どもに対して寛容な態度で接する。そういう親であるよう心がければ、健全な親子関係を築けるし、子どもの前向きな努力を引き出すことになるのではないでしょうか。無論、現実の生活はそう理想通りにはいかないことでしょう。しかし、意識の方向性を定めているといないとでは違ってくるものです。「こんなのムリ!」と思ったかたも、気持ちのもちようを入れ替えるとストレスはずいぶん軽減されると思います。

④ 受験生活を子育ての仕上げの場にしよう!

 いよいよ最後の項目です。中学受験準備の学習をする小学校の中・高学年は、親から見ると子育ての仕上げをすべき時期にあたります。したがって、中学入試までのプロセスにおける親の関わりは、子育ての仕上げ活動に他なりません。

 そのことに鑑みるなら、「今こそ親の出番なのだ!」という認識をもつべきではないでしょうか。人間形成期の受験生活は、子どもの人間としての特性を決定するうえで相当な影響力をもちます。だからこそ、親はわが子の将来の大成につながる受験生活が実現するよう、精いっぱい働きかけてやるべきではないでしょうか。

 ご存知のように少子化がとめどなく進みつつあり、中・高一貫校への入学の関門もかつてよりは遥かに易しくなっています。さらに、大学進学に目をやると、「大学全入」の時代が訪れています。このような時代にあっては、もはや学歴自体にたいした価値はありません。言わずもがなのことですが、知的レベルの高い職種においては、求められる仕事成果を引き出せるかどうかが重要で、出身大学が一流であってもそのこと自体が評価されることなどありません。つまり、本物の実力を携えているかどうかが真に問われる時代が来ています。

 目先の受験の結果のみに目を奪われ、将来の大成につながる大切なものを失っては元も子もありません。是非これから入試終了までの期間の子育てを大切にしていただきたいと存じます。入試を終えたとき、「今の取り組みを続けたなら、これから先も楽しみだ」と、期待をもって中学校に送り出せるよう、親として悔いのない応援をしてやりましょう。

 このPart.3は筆者が担当したのですが、実は何をしゃべったかあまり覚えていません(左ひじと肩の炎症による痛みで、2~3日ろくに寝ておらず、意識がもうろうとした状態で話をしました)。だいたい上記のようなことをお伝えするつもりでお話しさせていただきました。

 長くなってしまいましたが、以上が「学びの飛躍をこの夏に!」のおおよその内容です。中学受験は、半分は親の受験だと言われます。それは、親の関わりの重要性を意味するでしょう。受験までのプロセスがわが子の成長につながるよう、親としてできる精一杯のことをしてあげてください。それがお子さんのこれからの人生の歩みの基盤づくりになりますし、この先ずっと続く親子関係の土台を築くことになります。

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