“習慣力”が子どもの勉強を楽にする! その1

7月 16th, 2015

 「おかあさんの勉強会」は、弊社4・5年部会員(週3日コース)のおかあさんを対象とするワークショップ形式の催しです。今年度前期も、例年通り全校舎で各2回実施しました。

 7月初旬に、最後に予定していた校舎の第2回目が終了しましたので、遅ればせながらおおよその流れと内容をご報告いたします。この回は、「“習慣力”が子どもの勉強を楽にする!」というテーマで実施しました。

 みなさんのお子さんは、勉強と遊びのけじめがつけられるようになっているでしょうか? 時間の切り替え、行動の切り替えがスムーズにできているでしょうか? こう問いかけると、返事もないのに多くのおかあさんが嘆き声を漏らしておられる様子を想像してしまいます。

 なぜなら、おかあさんがたから最も頻繁にもちかけられる相談が、「勉強の時間になっても、テレビから離れません。注意すると、いつも親子喧嘩になります」「やるはずの時間が過ぎているのに、いつまでもゲームにかじりついて勉強を始めません」など、勉強の実行力や勉強と遊びの切り替えに関するものだからです。程度の差こそあれ、 中学受験生を抱えておられるご家庭共通の問題ではないでしょうか。

 人間というものは、誰でも好きでないことには腰が重くなります。「やらなきゃ」とは思うものの、どうにも体が動いてくれません。それでも、大人はやらないとどんな事態を招くかを予想できますから、「しかたがない、そろそろ…」と腰をあげるのですが、小学生の子どもは先を見通して考える力が未熟な(だから子どもなんですね)ため、そのときの気持ちに引きずられがちです。

 今回の勉強会は、子どもの受験勉強の計画実行力を高めるための方策として、“習慣”に着目しました。決めたことを決めた時間にやれる子どもにするために、親としてどのようなサポートをしたらよいかを、“習慣づけ”を通して共に考えていただくことにしました。

 さて、筆者は前回と同じく、ある校舎の勉強会にゲストとして参加させていただきました。1回目よりは人数的には少なかったのですが、おかあさんがたはそれぞれにご自身の現状や思いを率直にお話しくださっていたように拝見しました。和気あいあいとした雰囲気のなかで、実りある話し合いの場ができあがったのではないかと思います。

 20150716aこの回の勉強会の最初のテーマは、①「意欲が先か?習慣が先か?」というものでした。まずは、おかあさんがたに「勉強にとっていちばん大切なのは、意欲でしょうか、それとも習慣でしょうか」という問いかけをしたのですが、”習慣”にスポットを当てた催しですから、答えの理由はわからないまでも、何が答えかは一目瞭然ですね。

 この問いかけに対する答えを、出席者全員に考えていただいたところでワーク1を始めました(この勉強会の「ワーク」とは、あるテーマに沿っておかあさん同士で自分の現状や考えを話し合うことを言います)。

 ワーク1は、「家庭学習の現状を考える」というテーマ設定で、まずはグループ(3~4名)内で、お子さんの家庭学習の計画性、自主性、取り組む時間、学習量、授業の予習(5年)と復習(4・5年)、テストの準備学習などの現状を順に報告しあっていただきました。

 他の家庭の現状を聞ける機会は滅多にないことですし、いろいろと参考になるようで、おかあさんがたは熱心に話したり聞いたりしながら情報を交換されているようでした。

 先ほども若干ふれましたが、小学生の子どものやることは、大人にはやや楽観的過ぎるように見えるものです。家庭勉強についても、計画をきっちり守る、やるべきことをわきまえて段取りよくこなす、テストを視野に入れた学習がしっかりできるならすばらしいのですが、小学校4・5年生にはまだ難しいようです。しかしながら、日に日に成長していく時期の子どもですから、親の働きかけ次第でよい方向に変化を引き出すこともできるのです。グループごとの情報ではありますが、「他の家ではどんな具合か」を聞いたなら、わが子が改めるべきいちばんの問題点はどこにあるかも明確になるのではないでしょうか。

 報告と感想の交換が終わったら、次は「お子さんが計画通りに勉強できない理由はどんなことですか」という質問を提示し、グループごとに話し合っていただきました。テレビやゲーム、漫画などを断ち切れないで、ずるずる時間が経過するという話をよく耳にしますが、みなさんのおたくではどうでしょうか。

 ワークを一通り終えたところで、「勉強で大切なのは、意欲か、それとも習慣か」という冒頭の問いかけの答えが「習慣」であるということをお話しし、習慣のもたらす作用について一緒に考えていただきました。

 何らかの負荷の伴う課題をやり遂げるうえで、何が行動実践の原動力になるかといえば、やはり「意欲」を挙げざるを得ません。親がわが子の勉強について注意をするとき、「やる気」や「意欲」という言葉が必ずといってよいほど出てくるものです。それなのに、あえて「習慣」に着目していただいたのはなぜでしょう。それは、「意欲」が生じるまでのプロセスで「習慣」が大きな作用を果たすからです。

 有名な教育社会学者は、習慣が意欲をもたらす事例として、「食習慣」と「食欲」の関係を取り上げて説明しておられました。その先生は西宮のご出身で、幼いころからイナゴの佃煮を食する習慣があったそうです。食べ慣れると、その食べ物のおいしさがわかるようになります。その先生もご多分に漏れず、イナゴの佃煮が大好物になったそうです。この事例をもとに、「食の習慣が食欲を生み出す」ということから、「学習の習慣づけが行われると、やがて勉強の面白味もわかるようになり、それがその人間の学習意欲を高めてくれるのだ」という流れをご紹介した次第です。

 これは、弊社に通う子どもたちを見ていても納得できることです。はじめから意欲満々の子どもなどほとんどいません。塾に通い、学習の手ほどきを受けることの繰り返しによって徐々に家庭学習の習慣が根づいていきます。そうした過程で、段々と勉強の面白さが感じ取れるようになり、それが家庭学習の習慣の定着をさらに後押ししてくれるようになります。このような好循環ができあがると、自然と塾でのテスト成績も上昇基調で安定していきます。そうして、ついには決めた勉強をやらないと自分が許せなくなるレベルに達していくのです。「意欲が高いからあんなに勉強ができるんだ」と見える子どもも、勉強が習慣として根づくまでのプロセスがうまくいった結果なのです。

 このことを踏まえ、「みなさん、まずは“わが子の勉強をいかに習慣づけるか”ということに目を向けましょう」ということをお伝えしました。

 ここまで進んだところで、いよいよ話題は“勉強の習慣づけ”に移りました。今度のテーマは、②「家庭学習の習慣化の現状を振り返って」となっています。

 弊社の教室に通学しておられるお子さんは、「塾での授業」と「家庭学習」が交互に繰り返されるシステムを基本とする学習生活を送っておられます(弊社の会員でなくても、ある程度同じことが言えると思います)。したがって、学習の習慣化はある程度浸透していると思われます。

 そこで、おかあさんがたにお子さんの「家庭学習の習慣度」をチェックしていただきました。チェックの項目は、たとえば次のようなものです。

・お子さんは、親から声をかけられる前に勉強を始めていますか?
・お子さんは、毎日決めた時間帯に勉強に取り組めていますか?
・お子さんは、毎回の授業に備えた準備(予習・復習・宿題など)をしていますか?
・お子さんは、2週間ごとのテストに備えた「まとめ学習」をしていますか?

 チェック項目は全部で6つでした。これらの項目の結果を見ながら、習慣がどの程度定着しているかを振り返っていただき、いくつか基本となるポイントをご説明しました。たとえば、「小学生の学習計画は、できるだけシンプルなほうがよい」「習慣化を促進するには、勉強の時間帯ができるだけ一定であるほうが望ましい」「学習計画は、親子で相談して立てるほうがよい」などです。

 習慣化を図ることで、物事を効率的に行えるようになり、安定した結果を得る。それは、われわれ日本人が古来大切にしてきた戦略の一つです。しかしながら、それを意識してやっている人は意外と少ないし、習慣化を図るという戦略のもつ効力の重要性を知らない人が少しずつ増えてきているように思います。後半のレポートは、そういった日本人の得意な戦略にもう一度スポットを当て、「習慣化こそ、学業成就の一番の秘訣である」という結論で結ぶまでのプロセスを、一緒にたどっていただければ幸いです。

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