家で勉強するなら「リビング学習」?

8月 3rd, 2015

 皆さんのご家庭では、お子さんはどこで勉強しているでしょうか?
 「子ども部屋」として与えられた個室で勉強している子もいるでしょうし、家族が揃っている中でテーブルに座って取り組む子もいるでしょう。あるいは、学童保育や公民館・児童館で宿題を済ませるから、自宅では特にしないという子もいるかもしれません。
 わが子が中学・高校生であれば別として、小学生まして低学年の時期だと、家庭の中のどこが勉強するのに適しているかと考えると、親としては悩ましいところです。

 以前、雑誌の特集やテレビ番組などで、東京大学の生徒に「子ども時代、どこで家庭学習に取り組んでいましたか?」というアンケートを取ったところ、最も多かった回答が「リビング」だったという内容が紹介されて話題となったことがありました。そうした中で注目を集めるようになったのが「リビング学習」です。

 10~15年ほど前までは、小学校入学と同時に、大型の本棚とセットになった学習机を子ども部屋に設置し、そこで勉強をさせるようにするというのが主流でした。しかし、最近では生活スタイルの変化や「ひとりっ子」が増えた影響などで親子の結びつきがより密になったこともあり、個室ではなくリビングやダイニングで勉強する家庭が増えているようです。
 大手住宅販売会社のアンケート調査によると、小学校低学年の時点で約80%、小学校中学年・高学年で約90%の子どもが「子ども部屋」をもっている一方、子ども部屋を家庭学習や普段過ごす場として活用するのは「中学生になってから」という子どもが大半を占めているという結果が出ています。その場合、勉強場所としてリビングを使っているケースが多く(高校生になっても、4人に1人は勉強場所としてリビングも併用しているという結果も報告されています)、小学校を卒業するまでの子ども部屋は、「子どもの荷物置き場や洗濯物の室内干しの場所として使う」というご家庭が多いようですね。
 大人の感覚では「静かな部屋に行って、一人で勉強した方が集中できるのではないか」と考えがちですが、低学年の子であればもちろんのこと、高学年になっても一人になることに不安を覚える子どもは多いものです(口では強がるかもしれませんが・・・)。特に夜間は、一人離れた子ども部屋で勉強するとなると、不安が先立ってしっかり集中して勉強することがなかなかできません。それを紛らわせるために、音楽を流したり漫画や本を読んだりするのでは勉強どころではありませんから、それなら最初から安心感を得られる家族のそばで勉強した方が効率的だといえます。
 こうした点からも、リビング学習を取り入れるご家庭が増えているのだと思われます。

 ただし、単に「リビングで勉強すればよい」というわけではありません。
 150803脳科学の専門家によると、リビング学習をより効果的なものにするためには、ちょっとした工夫が必要だといいます。
 それは、リビングのテーブルや畳敷きの座敷に置いた座机で勉強する場合、テーブル・机の上やその先の空間(子どもの前方にある横幅40~50cmほどの空間)を、「子ども専用スペース」として確保するというものです。 

 今取り組むべきこと(勉強)と無関係なものが視界に入ると、どうしても脳が反射的に反応してしまうため、目の前のことに向けて集中力を保つことができません。ですから、そのスペースには関係のないものを置かないのはもちろんのこと、スペース内の壁にポスターやカレンダーを貼ったり、本立てを置いたりするのもできるだけ避けた方がいいのだそうです。
 勉強するたびに部屋の物を移動させるのは大変ですから、リビングの中でこうした条件を満たす場所(人が出入りしない方向に向いたテーブルの席や、静かな場所にリビング用の机を設置するなど)を探しておいて、あらかじめ「リビングで勉強するときはこの場所で」と決めておくといいでしょう。
 そして、この「目の前に何もない状態を作る」という「子ども専用スペース」のルールは、たとえ親であっても例外ではありません。リビングテーブルに親子が向き合う形で座って勉強したり、キッチンで食事を作るお母さんが勉強する子どもの正面に位置していたりすると、親の表情や仕草が知らず知らずのうちに子どもへのプレッシャーになってしまいます。これでは、子どもの「見守り」をするつもりが、いつの間にか「監視」になっていた・・・ということにもなりかねません。
 リビングや座敷での学習で親がフォローする際には、少し離れた場所で家事や読書をしながら様子を見守ったり、必要に応じて横に座って質問に答えたりしながら、程よい距離を保つ工夫ができるといいですね。そうすれば、子どもは安心感を得ながらリラックスして勉強することができるようになります。

 加えて、夏休み中や夕方の時間帯にお母さんと二人きりなら上記のような対応で大丈夫なのですが、習い事などの都合で夜間に「リビング学習」をすることになった場合には、仕事帰りのお父さんも含めた家族全員に協力してもらう必要が生じることもあります。お父さんがビール片手にテレビを見ていたり、お母さんがスマホをいじっていたり、弟妹がゲームをしていたり・・・という状況が目に入ってくれば、なかなか自分だけ集中して勉強を頑張ろうという気分にはなれませんからね。
 子どもが勉強を始める前からテレビや音楽を消しておいて、落ち着いて学習できる静かな環境を整えてあげてください。あわせて、お母さん・お父さんもこの時間を使って好きな本を読んだり、日記や家計簿をつけたりする時間に設定するといいですね。お父さんとしては、「仕事で疲れてるんだから、家では好きなようにやらせてくれよ」と主張されるかもしれませんが、わが子が集中して勉強するためになんとか短時間だけでもご協力いただければと思います。
 こうした環境づくりによって、家庭の中に自然と知的な雰囲気が生み出されていきますから、「さあ勉強を始めよう!」というときにも大きな抵抗を感じずに取り組めるようになるはずです。

 さて、ここまでリビング学習の取り組み方をご紹介してきましたが、最後に少しご注意を。
 メリットも多いリビング学習ですが、もちろん良い点ばかりではありません。その問題点として挙げられるものの多くは、家族団らんや食事の場と子どもの勉強の場が混同してしまうことに起因しています。
 「本来リビングは家族みんなが過ごすための場所であって、子どもが勉強するための場所ではない」という点を子どもによく言い聞かせた上で、勉強に必要なものの置き場所を決めておく、学習道具を出しっ放しにせずにその都度片づける、勉強後は消しゴムのカスや折れた鉛筆の芯をきちんと捨てる、などのルールを決めて、それをきちんと守らせることも忘れないようにしましょう。これもリビング学習を成功させるための大切なポイントです。

 こうしてうまく家庭学習の習慣づけができれば、将来個室で一人きりで勉強する時期を迎えても、集中して取り組むことができるようになります。わが子がなかなか集中して勉強に取り組めない、子ども部屋に様子を見に行くとマンガばっかり読んでいる・・・とお悩みの方がいらっしゃいましたら、一度「リビング学習」をお試しになってみてはいかがでしょうか。

(butsuen)

Posted in 勉強の仕方, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

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