「玉井満代先生 教育講演会」のご報告
9月 3rd, 2015
去る8月28日(金)広島市西区民文化センターにて、「玉井満代先生 教育講演会」を開催いたしました。
本講演の日程を決めた背景には「夏休みが明ける前の週」という考えもあったのですが、実際にはこの日から学校が再開する地域や、既に学校が再開されて午前中授業が行われている地域などもあり、当日足を運ぶのが難しい方もいらっしゃったということを会場にお越しいただいた保護者の方から伺いました。当方の事前調査の不徹底により、ご検討いただきながらご参加いただけなかった方々には深くお詫び申し上げます。
また、このような難しい条件の中、会場まで足をお運びいただいた皆様には、この場を借りてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
それでは、当日の講演内容を一部だけご紹介させていただこうと思います。スペースの関係上、省略させていただいた部分や言いまわしが異なっている部分もありますが、何卒ご容赦ご了承ください。
親はわが子の教育の最終目標をはっきりさせておかなければならない。それは、中学受験でも大学受験でもなく、先に人生を終えることになるであろう親がいなくなっても、子どもがきちんと自分で生きていくための力をつけさせることである。その点を忘れてしまうと、つい目先の「あれができない、これができていない」などという細かいことに執着して叱ってしまう。
これから成長していく子どもを心の強い人間に育てるためには、家庭の教育、特に母親の存在が重要である。しっかりした子どもの家庭の母親に共通するのは、「子どもに細かいことを言わない」という点である。否定的な言葉をかけないことが大切。例え子どもが宿題をしなくても、「なんでやらないの!」ではなく「ここをこんな風に進めればいいんじゃない?」などの声をかけるように心掛けたい。
(配布資料をもとに)GDPの数字を見ると、1990年時点で日本は世界的に見て「裕福な国」のひとつだった。しかし、2010年になると、以前はGDP数値が下位だった中国が、日本を追い越している。その後も中国の経済成長は目覚ましいものがあり、今後、中国は教育にも力を入れてくるだろう。「国の力」という点で考えれば、人口の多い中国はその1割程度の人が優秀な人材に育てば、それだけで日本を上回ることになる。
現在の日本は国際的に「弱い国」である事実を自覚すべきである。昨年、東京大学に合格した外国人のうち、約6割が入学を辞退して海外の大学への入学を選択している。このように世界規模で考えると、優秀で高い能力をもつ人達が「強い国」の大学に集中する流れができつつある。こうした現状があるにも関わらず、日本の教育は依然として旧来のままであり、「ガラパゴス化」してしまっている。
現在世界各国で行われている教育は、既にICT化が進んでいる。日本はその分野で非常に遅れている。日本国内でICT教育のモデル校とされる某中学校の授業を参観したことがあるが、そこで行われていたのは「これまでに習った英単語を使って、自己紹介をしよう」という昔と変わらない内容だった。せっかく生徒一人ひとりにタブレット端末をもたせているのだから、「習った単語」に限定することなく、タブレットを活用して自由に内容を調べて考えさせてから発表させればよい。その際に少しぐらい文法が間違っていたって、自分が言いたいことを相手に伝える活動を経験させた方がはるかに子どものためになると思う。
これからの時代、子ども達が職に就くためにはコミュニケーション能力が欠かせない。その手段のひとつとして、英語が話せないとどの職にも就けないという時代になってきている。現に日本の大手百貨店でも、最近では「英語のできる日本人」より「英語のできる中国人」を優先的に雇い入れるようになっている。その方が基本的な能力も高いし、2か国語を話す日本人より、英語・日本語・中国語の3か国語を話せる中国人の方がいい。日本国内で働く上でもそのように考えられている。
また、日本の子ども達は「自己肯定感」が総じて低い。これから社会を担おうとする18歳の時点でこれほど自分に自信のない人間が、その先何を成し遂げることができるのか。日本の子どもの自己肯定感が低いのは、これまで行ってきたこの国の教育に原因がある。日本ではこれまで「みんなで100点を取ろう」という考えでやってきた。しかし、「全員100点」をラインとして設定すると、勉強のよくできる子にとっては、やりがいの感じられない低過ぎるハードル設定になる。こんな環境では「もっとやりたい」「もっと成長したい」という意欲を育むことは難しい。
これからの社会において、わが子がどのように生きていくかを考えると、日本でこれまで行われてきた「知識の先取り」と「暗記」では、もう教育として成り立たない。だからこそ「読解力」の育成が重要なのである。読解力が低いまま過ごしていれば、学習内容の難易度が高くなるにつれて「どこがわからないのかがわからない」状態になってしまう。読む力は、低学年の内に身につけておかなければ、年齢が高くなってから獲得できるものではない。
「読む」の次は「書く」だが、書くことは「自己表現」のひとつである。だから、子どもの作文の書き方を事細かに指導したり、書いた内容をいちいち否定したりすることは、子どもの自己表現を否定することに等しい。文字を書けるようになってからさほど時間が経っていない低学年の子どもであれば、まだ文章が上手に書けないのは当たり前である。一生懸命自分なりに書いたものを否定されるような経験を繰り返せば、子どもの自己肯定感は低くなる。
日本人は文化的な背景もあり、つい他人の前ではわが子を否定してしまうようなことを言ってしまう。目の前で自分を否定されることが繰り返されると、「自分はダメな人間なんだ」と思うようになってしまうのも当然である。
親同士で話す際には、普段わが子が頑張っている点をほんの小さなことでもよいので、ぜひ褒めてあげてほしい。効果的なやり方として、事前に親同士で打ち合わせておいて、親子が友達同士で集まる際にそれぞれ自分の子どもを褒めあい、それをわが子にも聞こえるように言うという方法をおすすめしたい。子どもにとっては、「お母さんが、僕(わたし)のことをあんなに褒めてくれた」と感じられることが非常に大きな喜びと自信につながるに違いない。
・・・と、今回ご紹介する先生のお話については以上になりますが、先にも書いたとおり、ここに書いたのはほんの一部で、他にもご自分の体験も交えながら熱のこもった内容の濃いお話をたくさんしていただきました。
ここではかなりの部分を省略させていただいていますし、ニュアンスが変わってしまっている箇所があるかもしれません(先生のエネルギッシュな講演内容を活字のみでお伝えするのはかなり難しいですので・・・申し訳ありません)。今回ご都合があわず残念ながら参加することができなかった方は、次回の先生の講演会や当社のイベントにぜひご期待いただければと思います。
(butsuen)