「知りたい」という本能を目覚めさせる
9月 7th, 2015
子どもの心のなかには、“おかあさん大好き!”の気持ちがDNAレベルで組み込まれています。そんな子どもが、おかあさんの注意や叱責の言葉に耳を貸さなくなる理由を前回(8月31日掲載)はお伝えしました。
わが子の勉強ぶりにやる気が感じられず、たまらず注意したり叱ったりしたものの効果が得られない。そればかりか、ついには親の言うことを最後まで聞かず、言い返して来たり、プイとどこかへ姿を消してしまったり…。そんなことになったら親としてとても悲しく、ストレスがどんどん溜まってしまうでしょう。
今回は、その恐れを感じているかた、そうなりつつあると感じているかたが、多少なりとも気持ちを明るくできるような提案ができたらと思っています。よろしくお願いします。
前回、「おかあさんという存在が、子どもの物事への意欲の起点になる」ということを、脳神経外科を専門とする先生が述べておられることをご紹介しました。その先生の書物に、子どもの学びを活性化する効果をもたらすアプローチについて書かれた箇所があります。そのなかで、子どもの脳の神経全体を活性化させ、「知りたい!」という欲求を高める親の関わりかたについていくつか提案しておられます。全部で5つありますが、それぞれについて説明されている部分をかいつまんでご紹介してみようと思います(このブログ用に若干表現を調整しています。ご了承ください)。
1.叱った後は必ずフォローし、子どもの側にいることを明らかにする。
人間の脳には、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という、生まれながらの本能があります。おかあさんが叱ってばかりの状態だと、このうちの「生きたい」という本能から、自分を守ろうとする「自己保存本能」が後天的に発生します。これは生存競争に関わる本能だけにとても強く、ある意味、自己中心的な欲求です。この欲求が、自分への叱責に過剰な反応をしてコントロールを失うと、自分や他人を傷つけたり、不平、不満を爆発させたりすることになります。
だからこそ、おかあさんは、子どもに対して“怒りっぱなし”“叱りっぱなし”ではいけません。叱った後は必ずフォローし、子どもの側にいることを明らかにする」ことが求められます。そうでないと子どもは、他人を常に脅威ととらえるようになり、危機感から自己防衛本能に流されやすくなります。
※叱るときに求められる配慮については、このブログの他の記事を参考にしてください。
2.ときどき一緒に羽目を外し、子どもと仲間になる。
前述のように、人間には「仲間になりたい」という本能もあります。おかあさんが日常の家庭生活で子どもの気持ちをくみ取るよう心がければ、子どもの脳内に他者に対する信頼感が醸成され、自己中心的な欲求、排他的姿勢が抑えられるようになります。
「ときどき一緒に羽目を外し、子どもと仲良しになる」とは、大人と子どもという関係を超え、大人のもつ弱点や人間的側面をさらけ出して見せることで、子どもに自分の弱点や失敗を素直に認める力を養わせることを意図しています。親の欠点を子どもの前で見せることに危惧を抱くかたもあるかもしれませんが、それこそが「仲間同士」であることのあかしであり、子どもの脳の「仲間になりたい」という欲求を刺激する効果も生まれてくるのだとご理解ください。
※ブログ内の こちらの記事も参考にしていただけます。
3.全力投球をする子どもの素直な性格を褒める。
人間のやることは完全ではありません。と言うより、完全なことなどあり得ません。まして小学生の子どものすることは、大人から見れば改めるべきところがたくさんあることでしょう。しかしながら、才能は一生懸命に、夢中になって物事に取り組む体験を通して花開くものです。
ちょっとやり始めたらすぐに注意されたり、直しを求められたりしたのでは、子どもの前向きな取り組みの姿勢は育ちません。結果はともかく、まずは一生懸命になって取り組んでいる姿をほめてやりましょう(結果を求める言動を控え、チャレンジする姿勢を喜んでやりましょう)。ほめられることで、子どもはおかあさんからのOKサインを確認し、自分に自信をもつことができるでしょう。それが失敗を恐れず前向きに生きる姿勢を育むのです。
※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。
4.表情豊かな心のこもった会話をたくさんするよう心がける。
脳細胞全体の活性化に欠かせないのが、人間同士のコミュニケーションです。「子ども相手だから」と適当にあしらうような会話をするのでなく、胸襟を開き心から相手に対する親愛の気持ちを表情に出しながらの会話を心がけましょう。それが人間信頼の気持ちを子どもの心のなかに育み、自らの思いを率直に相手に伝えようという意欲を育てることになります。
また、相手が子どもあれ大人であれ、一対一での会話の際には互いの目を見て話すことが大切です。目を見て話しかけられると、誰でも一生懸命に相手の言うことを聞きますし、双方が心のこもった会話を心がけるようになるでしょう。
会話によるコミュニケーションは言語知能を鍛えます。「言語知能は」表現知能の一種ですが、他に「理論知能」「計算知能」「音感知能」「空間認知能」「運動知能」などがあります。脳は各機能のバランスを重視し、相互に連帯していく働きを備えた器官ですから、言語知能を活性化させると他の知能の働きも相対的に強化されていきます。
※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。
5.自分を守り過ぎないように、よい質問を心がける。
よい質問を心がけることも、子どもとのコミュニケーションの一環として日常の会話で励行してほしいことです。「なんでこんな失敗をしたの!?」などと、詰問口調の問いかけをすると、子どもは身構えてしまい、素直に自分の考えや意見を言えなくなるばかりか、口を閉ざしてしまいかねません。
日常の会話においても、「これ、どうしてだと思う?」などと質問を投げかけ、互いの考えを交換する習慣を築けば、子どもとの自然なコミュニケーションが生まれるでしょう。豊かなコミュニケーションを楽しむ習慣は、「共存性」という人間の脳の本質を活性化し、他人と傷つけあうことのない真に幸福な生きかたを、子ども自らが志向するように導く助けとなります。
テスト成績が悪かったなら、子ども自身が悔しい思いをしているはずです。まずは、子どもの残念な気持ちに同調する言葉を投げかけ、そのうえで、「今回のこと、あなたはどう思う?」など、一緒に考える姿勢で語りかけると、子どもの態度もずいぶん違ってくるのではないでしょうか。
※ブログ内のこちらの記事も参考にしていただけます。
いかがでしょう。おかあさんの話しかたや態度がある日突然変わると、「どうしたの?」「気持ち悪い!」と、お子さんが怪しむかもしれません。あせらず、「まずは、わが子とのコミュニケーションのありかたを見つめ直すことから」という姿勢で臨めばよいのではないでしょうか。
今がどんな状況にあろうと、子どもの心の根底には「おかあさんが大好き!」という気持ちがあります。おかあさんがそのことを忘れず、「何があろうとわが子の味方である」という意識で接すれば、必ずお子さんはそういう親の気持ちに報いようという意識をもつようになるのではないでしょうか。