子どもの勉強にも好不調がある

10月 12th, 2015

 今、冬期講座・2016年度講座の新規会員の募集開始準備に追われ、ブログを書く時間があまり確保できません。したがって、小ネタのようなことになってしまいますが、あしからずご容赦ください。

 仕事でも、勉強でも、スポーツでも、人間が物事に取り組むときには好不調の波というものがあります。機械なら、決まった時間に寸分たがわぬ同じ製品を100個きっちりつくることなど当たり前にできるでしょうが、人間はそういうわけにはいきません。

 では、どうしてそのようなことが起こるのでしょう。ある脳科学者によると、脳のはたらき具合には絶えず変化があり、同じ状態が続いているわけではないそうです。勉強にしても、仕事にしても、その能率には必ず波があり、それがないようにみえても、必ず小さな波はあるのです。したがって、「脳が最も快調に働いているときを基準にすると、たいていのときは不調ということになってしまう」と述べておられます。

 以上のことからもわかりますが、子どもの勉強もうまくはかどらないことがたびたびあるものです。弊社の教室に通って中学受験対策の勉強をしている子どもたちは、「学習計画表」というものを作製し、毎日の勉強をその計画表で定めたスケジュールに沿って進めています。この場合も、スケジュールがあるからその通りに勉強が進むというわけにはいかず、脳の調子が悪い日や時期には思い通りに進まないことが当然あるでしょう。

 ここまでお読みになったところで、おたくのお子さんの最近の勉強の状態を振り返ってみてください。毎日の家庭学習はきちんと計画通り進んでいるでしょうか。お子さんとそのことを確認すると、おそらく「思い通りにできないことが多い」とお答えになるのではないかと思います。

 学習計画などのスケジュールを組むとき、たいていの人は脳がスムーズに働いているときを前提にして考えるのが普通です。「うまくいかないときもあるから」とは誰も思いません。つまり、「これぐらいはできるはず」というやや楽観的な見通しでスケジュールを組むことが、計画通りにことを進められなくなる主要な原因なのです。

 いよいよこれから秋が本格化し、勉強に最適なシーズンに突入します。今の勉強を、スケジュールと実行の度合いを照合しながら振り返り、うまくはかどっていないようならスケジュールの見直しをすることを、親子で検討してみてはいかがでしょうか。

 先ほどの脳科学者は、スケジュール通りに勉強がはかどらないときの対策として、次のようなことを述べておられます。

 (前略)スケジュールにこだわるよりは、脳の変動の波をできるだけ感じとり、能率が悪くても悲観せずに、必ず上げ潮のときがくることを期待すればいい。そして、上げ潮のときには自分でも驚くほど能率が上がるので、そのときに一気に遅れを取り戻せばいいのである。この波は短時間経過のものもあるし、長時間経過のものもある。そういう変化全体を見ていないと、妙に自信過剰になったり、自己嫌悪に陥ったりする。(中略)

 もちろん、ただ上げ潮を待っているのではなく、上げ潮を呼び込む工夫も必要である。思い切って遊んでみたり、音楽を聴いたり、その工夫は人により、場合によって違うだろう。いま能率が上がらないからといって、それを気に病んでいると、上げ潮を押さえてしまうことにもなる。(中略)

 若いときには自分の脳の波についてわからないのがふつうだが、経験を積むことによってそれがわかるようになるはずである。自分について知り、自分をうまく使うことは大切な才能である。自分を知るためには、自信を無くしたり、それを取り戻したりし一喜一憂するのではなく、自分を冷静に見つめていることが大切である。

20151012

 勉強にしても仕事にしても、上達するには自分の現状を客観的に掌握し、どこを直したりテコ入れしたりするべきかを考えることが必要です。また、それのできる人が能力のある人とみなされます。自分の現状を客観視しようとする姿勢を「メタ認知的視点」と言いますが、このような姿勢は中学受験対策をしている小学校の高学年ならかなり身についているべきものです。

「今、わかっているのはどこまでか」「どこからが理解不足なのか」ということを毎回の授業の後に振り返る姿勢をもてば、必ず突破口は見えてきます。また、テストの後、「どこを間違えたのか。それはなぜか」という視点から、間違えた原因を調べて対策を講じる姿勢も、学力を伸ばしていくうえで欠かせないものです。

 上記のイラストのように、勉強の流れをよい方向に切り替えていく工夫を考え、お子さん自身が実行したり、保護者のかたがサポートできることを考えて実行したりすれば、学習の効果はかなり安定してくるのではないでしょうか。

 さらに、メタ認知的な視点を常に稼働させ、日頃の学習を通して自己修正の必要なところに手を入れたり、テスト結果を最大限に活かして弱点を補ったりすることを繰り返すのが成果のあがる受験対策の基本だと思います。

 今回は、学習の調子の波を安定させるための工夫、現状を絶えず振り返りながら必要な対策を講じる学習の実践についてお伝えしました。少しでも参考にしていただければ幸いです。

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