親のほめかたに物申す! ~子どもの本音~

11月 19th, 2015

 すでにこのブログで何度もご紹介していますが、弊社の4・5年部会員家庭の保護者を対象とした催しに、「おかあさんの勉強会」というのがあります。

 中学受験は小学生の受験です。したがって、受験を乗り越えるには保護者の方々、とりわけ家庭で接することの多いおかあさんの適切なサポートが必須となります。「おかあさんの勉強会」は、子どもの日々の学習がストレスなく、そして効果的に行われるためのバックアップの方法についてともに考えていくための場として企画した催しです。

 毎年春と秋に2回ずつ実施していますが、今年の秋は、「第1回:成績アップは効果的復習から!」「第2回:ほめかた次第で子どもは変わる!」というタイトルを掲げ、各校舎で実施しました。一昨日、三篠校の第2回目の勉強会が行われましたが、これををもって秋開催予定分を全て終えました。

 筆者はこの催しの企画立案者です(今秋実施分は、2名の広報担当者がプランに基づいて作成しました)。そういった理由もあり、実地検証をして今後に生かすという目的で、ある校舎の勉強会のフォローに出かけました。今回は、第2回の内容(わが子をいかにほめるか)に関して思ったことがありますので、それをお伝えすることにしました。

 まずは、みなさんに質問です。小学生のお子さんをおもちのかたへ。あなたは、お子さんをどのぐらいの頻度でほめておられますか?次のなかから当てはまるものを選んでください。

1.ひんぱんに(毎日のように) 2.かなり(1日おきぐらい) 3.ときどき(週1~2回ぐらい) 4.ほとんどほめていない

 勉強会においても、おかあさんがたにほめることの現状を振り返っていただくため、同じ質問をしました。それに対する答えですが、筆者がサポートで参加した校舎では、2または3と答えたかたが多く、1や4は、ゼロもしくはおられてもごく僅かでした。

 では、肝心の子どもたちはどう思っているのでしょうか。この催しの実施にあたり、4・5年生の任意にピックアップしたクラスのお子さんを対象に、「おかあさんがどのぐらいほめてくれるか」(上記の質問を子どもに向けてしたもの)を調べてみました。すると、3の「ときどきほめてくれる」が157人でいちばん多く、次に多いのが2の「1日おきぐらいにほめてくれる」で84人でした。ちなみに、1の「毎日のように」は57人、4の「ほとんどほめてくれない」は52人でした。だいたいおかあさんがたの答えと一致していますが、1が結構多くてうれしい半面、4も相当数あり、「おかあさん、もっとほめてよ!」という子どもたちの声が聞こえてくるようでした。20151116a

 ところで、筆者が今回注目したのは、子どもたちへのアンケートで集めた生の声でした。ちょっとご紹介してみましょう。「うれしくないほめられかたはどういうものか」という質問に対するコメントです(抜粋したものをご紹介します)。

1.話の中身がなくて「すごいね」ばかり言う
2.おおげさなほめかた
3.最初は全然ほめていなかったのに、おとうさんがほめ出したら     
  おかあさんもまねしてほめる

4.友達やきょうだいと比較してほめる
5.最後にため息をつくほめかた
6.「まだまだよ」と言いながらほめる
7.「がんばっていても、あなたができているときは他のみんなも
  できている」

8.「他の人のほうががんばっているけど、あなたもまあまあ
  がんばったね」

9.「やればできるじゃん」
10.ほめながら次の課題を出してくる

20151116b これらのコメントの内容を吟味すると、「子どもって鋭いな」「子どもだからとバカにできないな」と思わざるを得ません。ただほめられさえすればうれしいわけではないのですね。

 たとえば、9の「やればできるじゃん」といったほめかた・励ましかたは、親だけでなく学習塾の指導担当者もしてしまいがちですが、これはNGです。なぜでしょう。それは、日頃「実力がない」と思われていることの裏返しと子どもが受け取るからです。

 ほめ言葉がマイナス効果を生み出す点として、心理学の専門書に「容易な課題の遂行に対してほめてしまうと、(子どもに)低能力を推測させることになる」とあります。子ども自身が手ごたえを感じていないのに、「やればできるじゃないか」と言われると、子どもは「自分は能力がないと思われているんだ」と感じてしまうのですね。

 筆者自身にも心当たりがあります。随分前のことですが、入試が近づいたのを意識して子どもたちの奮起を促そうと、「きみたちはやればもっとできるんだ!」「最後まであきらめずにがんばろう!」といった趣旨のことを一生懸命語ったことがあります(成績が下のクラスだったため、「喝を入れてやろう」と思ってのことでした)。すると、「先生の話を聞いていると、なんだか受からないような気がしてきたよ」と反応する子どもがいました。他の子どもの顔を見ても、ちっともうれしそうではありません。

 一瞬面食らったのですが、すぐに「しまった」と思いました。子どもたちは、「自分たちに力がないから自信をつけさせるために、先生はあんな言いかたをしているのだ」と受け止めたのです。まさに図星と言わざるを得ません。「なんで子どもたちの気持ちを理解し、上手に励ましてやれなかったのか」と今でも後悔が残ります。

 1や2のようなほめかたも、子どもが小学校の中学年以上になると注意が必要です。どんなほめられかたでも喜ぶ子どももいますが、見え透いたほめかた、無理のあるほめかたを見破ってしまう子どもも少なくありません。ですから、4の「ほとんどほめていない」という現状は問題がありますが、そうかと言って無理にほめても効果が得られるわけではありません。

20151116c 5・6・7・8は、いずれも同じような親の心理が子どもから見透かされそうなほめかたです。すなわち、「一応ほめてくれてはいるが、ほんとうはちっとも満足していない」ということが子どもにもはっきりわかってしまうのですね。前述の心理学の専門書には、「『勉強をもっとさせよう』という隠れたメッセージ(勉強の強制)としてフィードバックが働くと、自発的な意欲が阻害される」とありました。こういうほめかたは、精神的な成長が遅れ気味な子どもにも親の本音がわかりますから、どういったタイプのお子さんにも効果がないばかりか逆に作用してしまいかねません。

 10の「ほめながら次の課題を出してくる」といった親の行動も、「もっとがんばらせたい」という親の意図が透けて見えるため、却って子どもの意欲が減退してしまうまずいほめかただと言えそうです。親の気持ちはわかるのですが、ほめられた喜びが意欲に転化する流れに親自らブレーキをかける行為に他なりません。

 最後に、4の「友達やきょうだいと比較してほめられる」のがなぜ子どもにとって嫌なのかについて。身近な人間と比較されると、比較された対象がいつも目の前に存在するわけですから意識しないわけにはいきません。特にきょうだいと比較された場合、必ず次のような連想をするのではないでしょうか。

 「今は自分がほめられているけれど、次は逆に自分と比較してお姉さんがほめられるかもしれない」

 「明日は我が身」という諺がありますが、立場を裏返してとらえるのが人間です。ほめるときにも、叱るときにも、他と比較するのではなく、子どものしたこと(努力のプロセスと引き出した結果)を指摘するほうが効果的です。

 ずいぶん長くなってしまいました。機会があれば、次は子どもが喜び意欲を高めるほめかたの例をとりあげてみようと思います。

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