人生に彩りをもたらす私学教育 ~その1~
11月 26th, 2015
11月13日(金)には、弊社の主催で「私学教育の真の魅力とは!」とタイトルのイベントを開催しました。今回は、修道の田原俊典校長にお願いした、その日のイベントの基調講演の内容をかいつまんでお伝えしようと思います。
田原校長に講演をお願いするにあたり、「私学で過ごす6年間が、生徒の人生の歩みに大きな影響を及ぼす」という視点から、「人生に彩りをもたらす私学教育」という演目で講演していただくことにしました。では、早速お話しいただいた内容をご報告しましょう。
以下は、「田原校長がお話しになっている」という形式での記述となっています。ご了承ください。
今日の社会において企業が人間に求めているものは何でしょうか。それは“多様性”です。企業の生き残りに必要なのは、様々な状況において多様な能力を発揮するユーティリティに長けた人間だからです。今日の社会は、日に日に変動しつつあります。このように常に変動する社会に対応する力は、どのような教育環境のもとで養われるのでしょうか。
そこでまず、私学という教育の場がどういう成り立ちをもっているのかをご説明しておこうと思います。私学は、個人が私財を投げ打ってつくった学校です。何のためにそのようなことをするのかというと、国を興すために“有為な人材を育成する”という大きな目標があったからです。特に、私学の創成期には“リーダーの養成”ということが叫ばれていました。世の中を引っ張っていく人の育成をめざしたのです。このことからもわかるように、明確な建学の精神があるのが私学なのです。これは修道のような男子校のみならず、女子校も同じです。
このように、私学は私人の財産をもとに設立された学校で、運営は公費(国や地方公共団体からの補助金)だけでなく、通学者の家庭から支払われる授業料等の学納金、および寄付金などで行われています。これに対し、公立学校は地方公共団体が設立者であり、運営に必要な費用は全て公費で賄われる点で大きな違いがあります。こうした成り立ちの違いから、公立学校が国の定めた範囲の教育しかできないのに対し、私学は公費による補助を受けながらも、自分たちの思う教育を行っているという点で大きな違いがあります。
また、教員も公立学校は異動があるのに対し、私学の場合はその学校の先生になりたい人が集まっており、基本的に異動・転勤がありません。
このことからもおわかりいただけると思いますが、私学にはそれぞれ明確な志があり、先生もその私学の構成員として、自校の教育理念の実現に向けて一生生徒の教育指導に当たります。そこに、根本的な違いがあるのだとご理解ください。
続いて、子どもたちの未来と私学教育という視点から話を進めてまいろうと思います。少子高齢化に伴い、2030年には65歳以上の人口が32%になると言われています。当然、生産年齢人口は減少していきます。つまり労働力が著しく不足する時代が訪れようとしています。
このことへの対処として、10年~20年後には約47%の仕事が自動化されると目されています。つまり、人間が行ってきた仕事の約半分を機械が行う時代になるのです。たとえば、医療においては診断結果をコンピュータに打ち込めば、治療法もデータで引き出せるようになります。昨今、車の自動運転化が話題にされていますが、交通もほとんど自動化されます。教育においては、講義もインターネットを利用すれば無料で受けられるし、MOOC(ムーク)と呼ばれる無料オンライン公開講座も世界中に広まりつつあります。さらには、スカイプを利用すれば、無料で世界中の人と何時間でも論議に花を咲かせることも可能になります。また、感性が重要視される料理の世界においても自動化が進みつつあります。たとえば、IBMで開発されたワトソン君というソフトは、おいしい料理のレシピをつくることができます。
このように自動化がどんどん進みつつある時代においては、偏差値ではかれる学力は意味がなくなるでしょう。一つの価値観による教育では、時代の流れに到底対処できません。
では、このような時代の訪れに合わせた教育とはどういうものでしょうか。自動化の時代になっても人間に求められる能力。それは個々のクリエイティブな能力、すなわち“創造性”を育む教育こそこれからの時代に求められるのではないでしょうか。
※長くなりそうですので今回はここまでとし、残りは次回にご紹介します。