受験は難儀なものだけど…

2月 1st, 2016

 1月中旬より始まった広島県西部地区の中学入試ですが、一昨日に行われた修道中学校、県立広島中学校の入試、昨日の広島学院中学校の入試をもって、ほとんどの中学校の入試が終了しました。

 いつも思うのですが、長い、長い受験生活に比して、入試本番はわずか数日のできことです。ほんとうにあっという間のことのように感じられたのではないでしょうか。

 最初の緊張をうまく乗り越えると、子どもは勢いづき、信じられないほどのパフォーマンスを発揮することがあります。逆に、出だしを誤ると気持ちが後手後手に回りがちです。よけいな緊張が脳の活動を圧迫し、もっている実力の半分も発揮できなくなる恐れもあるでしょう。受験生のみなさんが、本番の緊張をうまく乗り越え、受験生活で培ったを学力を存分に発揮されたことを祈るばかりです。

 なお、今年は男子の最有力私学である修道と広島学院の入試が1月末になりました。そこで、例年とはやや異なり、1月中旬と月末の二つの時期に入試が分散する形となりました。また女子においても、県立広島を本命にしている受験生は、私学入試を終えてから長いインターバルがあったと思います。この期間のコンディション維持が大変だったのではないでしょうか。

 特に、男子の場合は受験生本人よりも、むしろ親のほうがいろいろ気を使ったのではないかと思います。保護者のみなさま、ほんとうにお疲れさまでした。とは言え、あっけらかんとしているかに見える男の子も、内心は落ち着かず、それなりに神経を使っているものです。お子さん自身も大変だったかもしれませんね。

 おりしも厳寒期の入試であり、強い寒波が日本列島をおおいました。城北中学校の入試日には相当量の降雪があり、入試会場への到着が思うに任せず気が気ではなかったかたもおありでしょう。こういうアクシデントはないほうがよいに決まっていますが、親子共々記憶に残る入試になったのではないかと拝察いたします。

 入試の結果については、まだ広島学院や県立広島の合格発表が行われていません。また、これらの中学校の合格発表に絡み、補欠の繰り上がりの可能性のある中学校もいくつかあります。まだまだ入試の決着がついていないご家庭もおありでしょう。

 ですから、「お子さんの入試はどうでしたか?」と聞かれても、「まだ終わっていないから何とも言えない」という返事をされる保護者もたくさんおられるかも知れません。しかしながら、今回は入試の結果に関わらず、中学受験をされたすべてのご家庭にお伝えしたいことを書かせていただこうと思います。それは何かというと、「わが子に中学受験をさせたことの真の意義とは何だろうか」ということです。

 これは筆者の私見ですが、「中学受験への挑戦を通じて人生の疑似体験をした」ということが、中学受験の大いなる意義なのではないでしょうか。少しオーバーな表現だと感じられるかもしれません。そこで、少し説明を加えましょう。受験生活は、まさに“山あり谷あり”の日々だったのではないかと思います。調子が上げ潮のときは勉強が活気づきますが、スランプに陥ったり、やる気を失ってしまったりしたときには、受験勉強を投げ出したくなったこともあることでしょう。そうした“紆余曲折”は、ちょうど人生を渡るプロセスになぞらえることができるでしょう。20160201

 “苦あれば楽あり”という言葉がありますが、そういう体験を通じて人間は成長することができます。受験に至る過程はまさにそれであり、こうした体験がお子さんを大いに鍛えたことは想像に難くありません。

 思い出してみてください。受験生になったばかりの頃は、まだ人生について何も知らない幼児期のようなものです。それから、塾通いが軌道に乗り、楽しく通い始めた頃が少年期でしょうか。やがてお子さんは受験生らしい言動をするようになり、それにつれてたくさんの喜びや悲しみを経験するようになります。いつの間にか立派な青年となったのです。

 近年は、子どもを夢中で取り組ませる対象が少なくなりつつあります。そのいっぽう、ほしいものがふんだんにあり、お金さえ払えばいつでも手に入れられる生活が用意されています。こうした環境においては、よほど大人がうまく導いてやらなければ、子どもがしんどい思いをして何かをやり遂げる体験をすることは難しくなっています。

 中学受験は難儀なものです。楽しいばかりで突っ走り、最後まで何の苦労もなかったなどという子どもはまずいないことでしょう。そんな子どもを見守る親も、手を貸して最後まで手伝ってやることなど到底できなかったはずです。

 だからこそ、中学受験をしたことに意義が生まれるのではないでしょうか。昔から伝えられる諺に「可愛い子には旅をさせよ」というのがありますが、今日の時代においては死語になりかねない言葉です。何しろ、少子化がとことん進み、豊かな生活を享受する家庭環境においては、親は子どもにいくらでも手を差し伸べることができます。下手をすると、子どもは辛い試練を乗り越える経験をろくにしないまま大人になってしまう危険性すらあります。

 もう一度振り返ってみてください。お子さんの受験までのプロセスを。きっといろいろなことがあったのではありませんか? もしもそれを経験しないまま中学生になったとしたらどうでしょう。それを思うと、「中学受験をさせてよかった」ときっと思われることでしょう。

 さあ、お子さんはもうすぐ中学生になり、人生の次なるステップへ向かいます。でも心配要りません。中学受験で体験した様々な困難、そしてそれを乗り越えるためにやり遂げた数多くの努力があります。親の出る幕はまた少し減ることでしょう。お子さんのさらなる成長がほんとうに楽しみですね。

※今回の記事と同趣旨のことを、2月17日(日)の折込チラシの記事に書いています。よろしければ、ぜひ目を通してみてください。

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