受験の準備学習をいつから始めるか その2

2月 23rd, 2016

 前回に引き続き、「いつから中学受験のための塾通いを始めるか」をテーマに書いてみます。前回は、「6年生からの塾通い」を検討されている保護者に、筆者の考えをお伝えしてみました。今回は、主として5年生から、4年生からの場合についてお伝えします。

 ただし、「何年生からがいちばんよいか」といった視点ではなく、受験対策を始める学年それぞれに留意したいポイントが違いますので、そのあたりに視点を合わせた事柄を書いていくつもりです。多少なりとも参考にしていただければ幸いです。
 

② 5年生から受験対策(塾通い)を始める場合

 5年生から学習塾に通い、受験生活をスタートさせるお子さんはかなりの数に上ります。弊社では、4年部からの入会に次いで5年部からの入会が多く、メジャーな選択の一つとなっています。何年か前の調査によると、会員受験生のうち全体の3割強が5年部からの入会組でした(低学年部門は受験指導をしないので、低学年からの通学者は「4年部からの入会者」に組み入れています)。

 4年部からの入会と、5年部からの入会の違いの一つは、算数の学習にあります。弊社の4年部では算数と国語の学習指導を行っていますが、算数は少しずつ教科書範囲の先取りをし、4年生の秋ごろには5年生の範囲の学習を始めています。なぜ先取りかというと、算数は入試問題と教科書との学力上のギャップがいちばん大きな教科であり、6年部でできるだけ基礎から応用への橋渡しをしっかりやっていく必要があるからです。

 したがって、5年部から初めて弊社の教室に通われる場合、5年生の教科書範囲の途中から学んでいただくことになります。このようにお伝えすると心配されるかもしれませんが、心配無用です。4年部での学習内容は受験レベルから見ると“基礎の基礎”ですから、教科書内容をしっかり自分のものにしていれば、5年部での算数学習で「ついて行けない」ということはありません。

 ただし、4年部で算数と国語の指導をきちんと受けているお子さんには、「授業の受けかた」や「家庭学習の定着度」などにおいて相応のアドバンテージがあります。また、理科や社会の受験学習は5年部からスタートします。4教科の受験勉強をいきなり始めるわけですから、負担に感じるお子さんが多少はおられるかもしれません。

 無論、こういうことは十分に想定していることです。弊社では、5年部の開始当初からしばらくは、「塾の学習への適応」といった視点から“慣らし運転”的な助走期間を設け、少しずつ4教科の受験対策に慣れていただくよう配慮しています。

 また、前期講座のスタート時には、「学習計画」の見本を参考に、親子で毎日の家庭学習の計画表を作成していただきます。予習(5年生では、負担の少ないものにしています)、復習のスケジュールを立て、それに沿った学習を少しずつ軌道に乗せていくよう指導していきます。

 結論を言いますと、5年生になるまでに教科書の基礎内容をしっかり身につけ、さらに生活習慣が自立しているお子さんであれば、何の不安もありません。初めて塾に通われることで、「塾の勉強は楽しい、面白い」と受け止め、塾という新しい世界に新鮮な気持ちで参入されれば、大いに力を伸ばしていけるでしょう。実際、5年部のスタート後、みるみる頭角を現し、ずっと入試までトップランクの成績を維持しているお子さんは結構おられます。

20160224a なお、5年生では習い事やスポーツと並行して受験勉強をするお子さんが相当数おられます。それは決して無謀なことではありません。肉体的な負担を考慮しつつ、上手に家庭勉強の時間を確保することでハンディは解消できるからです。また、好きなことをするわけですから、「受験勉強と両立させるんだ!」という強い意志でがんばれば、却って学習効率を高めることもできるでしょう。6年生からの塾通いでも書いたように、制約というものはうまく活かせば、子どもの成長を促すことにもなります。
 

③ 4年生から受験対策(塾通い)を始める場合

 前述のように、4年生から入会して受験勉強を始めるケースが弊社では一番多く、全体の5割強~6割弱を占めています(年によって若干の変動があります)。

 4年生からの塾通いのメリットは、無理なく受験環境を整えることができるという点でしょう。まだお子さんに“受験生”という自覚は期待できませんが、その分楽しみながら塾に通い、少しずつ勉強に向き合う姿勢を育てたり、受験生として求められる学習方法を身につけたりすることができます。

 算数は易しい基本的な内容を、比較的じっくり学んでいきますから、基礎的な考えかたや学びの手順を習得することができます。先ほど、4年生から教科書範囲の先取りをしていくということをお伝えしているので、「えっ?」と、驚かれたでしょうか。実は、4年部で学ぶ算数の程度や内容は、教科書内容とのギャップをできるだけもたせないようにしているのでさほど難しくありません。いきなりハードルを上げると、勉強に対する親近感を育てたり、やり遂げる喜びを多数のお子さんに提供したりすることができなくなってしまいます。大多数のお子さんが無理なく学べるよう配慮していますのでご安心ください。

 だからこそ、4年部の算数指導では、丁寧に図を描いたり表をつくったりして、筋道立てて考えを進めていくような姿勢を築くことを重要視しています。それが、入試レベルの学習を上手に乗り切るために大変役立つからです。

 国語については、文章読解や文法、漢字などを基礎レベルで繰り返し身につけるよう指導していきます。読みの能力の熟達をはかるには、何と言っても読書を定着させるに限ります。そこで、読書指導を採り入れている点も4年部の特色の一つです。

 読書は受験勉強の邪魔だと思われがちですが、むしろ逆で、大変必要なものです。読書量の豊富なお子さんは、速く正確に黙読できる態勢を整えることができます。黙読の達者なお子さんは、文章を読み取る際に、時間当たりの情報処理量が多く、迅速に内容を把握することができます。そのことがテストなどの時間的な制約がある条件において、大いに威力を発揮することは間違いありません。

 上述のような脳の働きをワーキングメモリと言いますが、読書量が豊かであれば、それだけワーキングメモリを鍛えることになりますから、迅速に確実に活字の内容を理解する能力が磨かれます。つまり、本格的な受験対策を始める前に読みの力を鍛えておけば、理科や社会の学習にも大いに役立つことになります。

 なお、4年部では算数も国語も授業前に予習は必要ありません。その代わり、家庭でしっかりと復習をするようお子さんがたを指導しています。何をどう復習するかについては、開講後に繰り返し案内しますから心配無用です。

20160224b こうしてみると、4年部の1年間は受験勉強そのものをするというよりも、本格的な受験勉強を始める前の助走として必要な事柄を準備したり整えたりする、といった側面が強いということがおわかりいただけるでしょう。

 したがって、4年部に通われた場合、保護者にはあまりテスト成績に過敏にならないようにお願いいたします。親が焦ると、お子さんは学ぶことを楽しむどころかプレッシャーを感じてしまい、伸びるものも伸びなくなりかねません。何よりも、意欲や自信という学びの推進力を失ってしまう恐れがあります。成績よりも、積極的に学ぼうとする姿勢や家庭学習の習慣づけという視点を大切にし、辛抱強くお子さんを見守っていただくようお願いいたします。

 弊社の4年部に通っているお子さんは、習い事やスポーツを並行して行っている割合がかなり高いようです。勉強の負担がまださほどでありませんから、大いに結構なことだと思います。ただし、本人が「やりたい」「続けたい」という明確な意思をもっていない場合、どっちつかずになって学習成果が上がらないこともあるでしょう。そういった点にはお気をつけください。

 4年部からの入会が割合として多いこともありますが、4年生から順調に勉強を積み重ねてこられた結果、すばらしい学習姿勢や学力を身につけておられるお子さんが多数おられます。長く通っていただくわけですから、そこで得られるゆとりの部分を活かし、一人でも多くのお子さんが理想的な受験生活を送れるよう応援させていただく所存です。

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