子どもが興味をもつ瞬間を逃さないで
4月 11th, 2016
「うちの子は自分から勉強しなくて・・・」「うちの子はなかなかやる気を出さない」などとお悩みの方は少なくないと思います。成績がふるわなくて、親がいくら叱ってもわが子は机に向かおうとしない・・・という問題は、多くのご家庭で共通する悩みですね。
その場合、叱りつけることで(力ずくで?)勉強させようとお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、その場合は少し冷静になって考えてみてください。「叱って机に向かわせよう」と考える前に、まずは家庭での親子のやり取りを振り返ってみませんか。
ある書物の中で、“お母さんと一人の小学生がスーパーマーケットでの買い物中に、
「ゴーヤって、きゅうりに似ているね。何で?」(女の子)
「いいから、食べたいならカゴに入れなさい。」(お母さん)
というやり取りをしている場面を見かけた。お母さんに悪気はないのだろうが、この対応は非常にもったいない”という内容の話を目にしました。
これと似たようなやり取りは、おそらくどの家庭でも日常的にあるのではないかと思います。特に仕事や家事でいそがしくしている最中に、子どもから「何で?」「どういうこと?」などと連発されたりすると、とても相手にしていられない・・・という方も多いのではないでしょうか。
しかし、こうした「ゴーヤときゅうり」のような話は、子どもにとっては大発見です。これまで完全に別物だと思っていた2つの野菜が、ふとしたきっかけで「もしかしたら仲間なのかもしれない」という点に自分で気づいたわけですから。この発見を誰かに伝えたい、お母さんは知ってるのかなという思いがあるからこそ、この女の子は口に出してお母さんに質問したのでしょう。
もし、この質問を受けたのが、お母さんではなく学校や塾の先生だったとしたら、どうでしょうか。きっとその先生は大喜びしているに違いありません。なぜなら、学習を進めていく上で指導者が最も力を注ぐのは、「導入」の部分だからです。子どもが興味・関心を抱いた瞬間がその事項に関する学習の始まりだと考えれば、いつ何時訪れるかわからないその瞬間を逃さないことが非常に重要になるわけです。
この導入で、子どもの心をこれから学ぶ単元にしっかり向けられれば、その後の学習の流れは8割方固まりますから、かなりの確率で成功に導くことができるといっていいでしょう。それが、先ほどの話のように子ども自ら興味を持ってくれたとなれば、教師達が心を砕く導入部分を子ども自身が進んで学んでくれることになり、その後はどんどん興味関心をもって自ら学びを進めていってくれるはずです。ですから、先ほどの場面のお母さんの対応はものすごく「もったいない」のです。
この時、お母さんが「本当だ!確かにこの二つ似てるよね」とか「家に帰って一緒に調べてみる?」などと返答をしていたらどうなっていたでしょうね。きっとこの女の子は、自分の発見を認めてもらえたうれしさを感じ、「ゴーヤときゅうりの関係性」が記憶の中に深く刻まれていたのではないでしょうか。別の機会にでも自分で調べてみて、この件に関して理解が深まるのはもちろんのこと、そこからもっと興味の対象が広がっていっていたかもしれません。
子どものやる気を高め、勉強に対して前向きにさせる親子の日常会話とは、この繰り返しと積み重ねです。こうした言葉かけをする機会は、日々の生活の中に数え切れないほどあるはず。そのチャンスを逃さず反応してもらえる家庭環境と、それともいつも素っ気ない対応しか返ってこない環境とでは、子どもの知的好奇心や学習意欲の伸びに大きな差が生まれてしまうのは言うまでもありません。
もし、普段子どもの言葉には大した関心を示さないのに、勉強だけは「自分で興味をもって自発的にやりなさい」・・・という状況があるとしたら、それは少し身勝手な親の言い分なのかもしれませんね。
このような子どもの興味関心が高まる瞬間はいつ訪れるかわからない上に、普段いつも一緒にいるお母さんだからこそ、それがどれだけの価値をもっているのかが見えにくいという面もあるでしょう。しかし、普段から心のうちに準備しておくことで対応は全く違ってくるものです。
毎日ふとした出来事をきっかけに、子どもは様々な「学びの入口」に立つことになります。毎日わが子と過ごすお母さん・お父さんには、その瞬間を逃さず新たな学びの中へと導いてあげる意識をぜひもっておいていただきたいのです。
(butsuen)