中学受験生の親として見失いたくない視点

10月 24th, 2016

 まもなく2016年度の冬期講座、2017年度の前期講座の会員募集を開始いたします。これから中学受験準備のための塾通いを検討されるご家庭におかれては、ぜひ弊社の各校舎への通学をご検討いただきますようご案内申し上げます。

 会員募集に関する情報は、11月6日(日)の新聞折り込みチラシでお知らせします。HPに詳細を掲示するのは5日(土)の夕方ごろの予定です。これまでお問い合わせや資料請求等、ご連絡をいただいているご家庭には、11月7~8日頃までに入会案内の資料を送付いたします。

 さて、今回はこれから受験準備の生活が始まるご家庭、今受験生活を送っておられるご家庭の保護者の方々、特におかあさんにお願いしたいことについて書いてみようと思います。

 わが子に中学受験をさせようという親は、間違いなく教育熱心であり、またわが子によい人生、知的な人生を送ってほしいと願っておられる方々だと思います。そこには、親としての大きな期待や愛情があるのは間違いありません。

 しかしながら、受験生自身はまだ小学生であり、中学を受験する意味をある程度わかっていたとしても、将来までを見通した高いレベルの計画性や戦略性の伴った勉強ができるまでには至っていません。むしろ、親の目からはやるべきことを疎かにしたり、ちゃらんぽらんな勉強に終始したりしているようにしか見えないことが多いものです。

 また、取り組みの成果を検証しながらより高いレベルをめざすのが進学塾での勉強です。そのためにテストが定期的に繰り返されるわけですが、全員が同じ目標をめざす集団ですから、普通にがんばっても成績はなかなか上がらないものです。常によい成績をあげるお子さんは少数であり、順風満帆に受験生活を終えるお子さんはほとんどいません。

 中学受験対策の開始にあたっては、以上のような小学生の受験勉強ゆえのもどかしさが親に降りかかってくることを踏まえ、「いかにして辛抱強くわが子のがんばりを引き出すかが、親にとっ重要なことなのだ」「どんな状況に至っても、わが子にとっての最善の応援団であり続けるのだ」という気持ちを忘れないようにしていただきたいと存じます。そのことを、スタートラインに立つ今胸に留めておいていただければ、きっとお子さんの様々な予期せぬ状況にも対処できることでしょう。

 わが子が思うように勉強してくれないとき、叱るのは当然のことです。ただし、闇雲に感情を剥き出しにして叱っても決して子どもはよくなりません。むしろ、やる気喪失の原因になりかねません。また、子どもの自信やプライドを揺るがせ、前向きさを失わせる恐れもあります。そして、筆者が最も懸念するのは、他の何よりも大切な親子の絆が逆に弱まってしまうことです。親子関係は受験ごときで弱まるものではないようにも思えますが、受験勉強で常に親に叱られたり否定されたりした記憶は、ずっと子どもの心の片隅に残ります。それはあってはならないことではないでしょうか。

 今回は、ネガティブな視点に立った話をお伝えしてしまいました。お許しください。ただし、みなさんがもしもわが子に対し、常に愛情深く忍耐強く子どもの可能性を信じてバックアップされたなら、これまで述べたこととは全く逆の、すばらしい親子関係が築かれることでしょう。やる気喪失に見えるときも、成績が不安定な状態に陥ったときも、「何かきっと理由があるはずだ」と冷静さを失わず、わが子と向き合って話し合い、問題解決に向けて応援してあげてください。そういう親のもとで受験を乗り切った子どもは、受験結果も総じて良好ですが、それ以上に大きな宝物を得ることができます。20161024a

 その結果、親への“信頼と尊敬の気持ち”や“感謝の気持ち”がずっと残り、半永久的に良好な親子関係を維持することができるでしょう。これは、子ども本人の人生にとっても、親の人生にとってもかけがえのない重要なものではないでしょうか。

 思い出してみてください。お子さんが赤ん坊だったころのことを。その頃は、ただわが子を見つめるだけで自然と笑みが浮かんできたのではないでしょうか。そうして、初めてわが子が立ち上がり、自分の足で歩み始めたとき。それはもう、親として無条件にうれしい瞬間だったことでしょう。

 ところが、そんな親の気持ちが子どもの年齢とともに変わっていき、段々とわが子の成長ぶりに不満を抱くようになっていきます。これを裏付ける資料があります(ちょっと古い資料で、以前別の記事でご紹介したことがあります)。

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 日本の親は、生まれてから小学校の卒業年齢に至るまで、他国の親よりも子どもの成長に対する満足度が低いのですが、より気になるのは、子どもの年齢が上がるにつれて不満の度合いが強くなっていることです。10~12歳の段階で「満足」と感じている親は36%余りしかいません。これが、「能力はあるのに自分に自信をもてない」と言われる日本人の弱点につながっているのではないかと思われます。

 原因は何でしょうか。その一つが受験だと言われています。受験は成績をめぐる競争という側面があり、どうしても親は他の子どもと比較したり、全体の中での順位を気にします。受験がなくても、日本ではテストが頻繁にあり、成績に対して親は敏感になりがちです。そのことが、わが子にどんな影響を及ぼすかを考えていく必要があるでしょう。

 この点を踏まえるなら、親に要請されるのは子どもの成績に不満を抱くことではなく、子どもに自信を失わせないことであろうと思います。また、子どもに努力することの価値を教えることであろうと思います。どのような成績のときも闇雲に叱らない。「大切なのは、精いっぱい努力することなんだよ」と応援してくれる。そういう親のもとでは、子どもは余計なプレッシャーなくがんばることができます。そのほうが入試の結果も得られるのです。

 かつて子どもの数が多かったころ、受験がブームであったころと比べると、中学入試の門は随分広くなっています。大学受験となるともはや全入の時代が訪れています。こうなると学歴には大した価値はなく、重要なのは本物の力だということにならざるを得ません。このような時代にあって子どもたちに求められるのは、自分で自分の力を伸ばしていく姿勢を養うことであり、人間としての全体的な力やバランスを整えることであろうと思います。

 中学受験をうまく活かせば、計画的に学ぶ姿勢、努力の成果を信じて学ぶ姿勢、段取りをつけながら学ぶ姿勢など、将来の大成につながる大事なものを育むことができます。そうしたものの価値をご理解いただき、受験生活がお子さんの人間力を養う場になるよう支援していただくようお願いいたします。

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