イベント「人生を決める私学の6年間」実施報告
11月 28th, 2016
今回は、11月18日(金)に広島ガーデンパレスにて実施した「人生を決める私学の6年間」というイベントについてお伝えします。この催しは、私学教育の特性やよさについて、現役の私学校長自らに語っていただこうという趣旨で開催したものです。話者として、修道の田原俊典校長と広島女学院の星野晴夫校長をお招きしました。
当日は160名あまり収容の会場があらかた埋まり、ちょうどよい雰囲気で催しを行うことができました。せっかくお越しくださった校長先生がたをがっかりさせる心配がなくなり、とりあえずほっとしたしだいです。お忙しいなか参加いただきました保護者のみなさまには、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
催しは3部構成で実施しました。その概要は以下の通りです。
☆第1部 中高6か年一貫教育がもたらすもの
思春期から青年前期に移行する十代半ばは、人間としての枠組みができあがる重要な時期にあたります。そこに高校受験があるかないかは、いわゆる「青春時代」の過ごしかたを大きく変えることになるでしょう。私立一貫校は、高校受験のない学校環境をどう活かした教育を実践しておられるのでしょうか。
☆第2部 私学教育とは何か
私学には建学時から掲げられ受け継がれた教育の理想があります。創設者が大切に育んだ教育理念があります。それらが学校の独自性や味を涵養するのです。たとえば、修道にはリーダーを育む土壌があります。広島女学院では、明治の創設時から英語教育が熱心に行われていますが、近年は国からSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)に認定され、多様化する社会に適応できる人間の育成に努めておられます。こうした学校の特色について校長先生に語っていただきます。
☆第3部 私学のココが魅力です!
学校説明会など、学校主催の催しではなかなか聞けない情報があります。また、そういう情報は保護者からは質問しにくいことが多いものです。たとえば、「入学試験に受かる学力以外に、入学前に培っておきたい要素にどのようなものがあるか」「入学後に学力不振に陥ったとき、フォローはあるのか。あるとしたらどのようなものか」などです。こうした、「聞きたいけれども聞きにくい」質問にお答えいただき、修道と広島女学院の私学としての魅力の一端を感じ取っていただくために設けたコーナーです。
以上の全部をご説明すると大変長くなってしまいます。そこで、このブログでは第一部の「中高6か年一貫教育がもたらすもの」の内容のみ、かいつまんでお伝えしようと思います。
では、第1部で先にお話しくださった修道の田原校長のお話からご紹介しましょう。田原校長は、まずは「人生を決める私学の6年間」という催しタイトルについて言及され、「私学の6年間で人生は決まりませんよ」と、おっしゃいました。のっけから企画者である筆者はたしなめられたわけですが、これは校長独特のユーモアと謙遜の表れであると解釈し、ありがたく拝聴しました。修道で学ぶ6年間は、「人生を変える」と言っても大袈裟でない、多くの収穫をもたらしてくれる貴重な時間であると筆者は確信しています。
さて、第1部は「6か年一貫教育」という環境を私学はどう活かしておられるのかという点にスポットを当てたものです。田原校長は、「最近は、公立学校も6か年一貫教育を導入するようになったが、私学の教育を形だけ真似たに過ぎない」とおっしゃいました。どういうことかというと、たとえば修道ではOB教員が多数いて、学校愛に基づいた教育活動を、6年間を通して行っておられます。異動はありません。公立学校では、たとえ6か年一貫教育を標榜しても教員は数年おきに変わります。私学と公立学校とは、そこが根本的に違うのだと強調されていました。
6年間の途中には思春期があります。思春期というのは大変な時期です。それまで親を絶対視していた子どもも、「親も普通の人間だ」と悟ってきます。自分の外見を気にするようになり、毎日鏡を見るようになります。とても微妙な時期なのです。田原校長は、心理学者の河合隼雄先生が思春期の子どもを“さなぎ”にたとえておられることを紹介され、そのたとえは、「さなぎは羽化をじっと待ってやらねばならない。辛抱強く成長を待つことが必要で、徒(いたずら)にいじってはいけないものだ」ということを意味するのだと述べておられました。
修道で伸び伸びと生活する6年間は、高校受験がないからこそ実現できるものです。この環境をうまく活かすことで、修道生は修道生たる自覚や特徴を身につけることができるのでしょう。そこには、ずっと修道の教師で居続ける、教育に愛情と情熱を注ぐ先生がたがおられます。それが私学だからこその師弟関係を生み出し、今日高い評価を得ている「修道魂」を携えた卒業生が多数育っているのだと拝察いたしました。
さて、次は広島女学院の星野校長にお話しいただきました。星野校長は、まず「教育とは人格の交わりである」ということをお話しになりました。それは、教育というものはじっくりと人間関係を築いていくことで成り立つという考えに基づきます。星野校長は、「中高6か年を通して、教師は生徒の発達段階に応じて生徒と接するなかで、しっかりとした人間関係を築くことが重要だ」ということを述べておられました。
このような関係があってこそ、生徒は授業を大切にするようになります。そうして、やがて一生続く師弟関係が成り立っていきます。また、卒業生が再び保護者となって学校と新たな関係を築くようになります。星野校長は、明治以来連綿と受け継がれている広島女学院の6か年一貫教育の特色をこのように述べられました。
6年間あるからこそ、建学の精神や教育理念も生徒に浸透します。「あなたの隣人とどう付き合っていくか」という、キリスト教に基づく創設者の考えも、しだいに生徒自身のものになっていきます。このような星野校長のお話を通して、キリスト教のミッションスクールという教育環境の特色やよさを多くの保護者が感じ取られたのではないかと思います。
第1部の内容紹介は以上です。なお、私学教育についてお伝えする催しをなぜ弊社が実施するのかについて一言申し上げておきます。先の見えない21世紀という難しい時代をこれから生き抜く世代の教育は、これまでに増して重要性を帯びています。「わが子にはどんな教育環境が望ましいか」という問いに確かな答えを見出せない保護者も多数おられることでしょう。私学6か年一貫校は、その答えを有する数少ない存在の一つだと弊社は考えています。そうした意味で、私学教育のよさを実感していただける催しを実施しているしだいです。
最後に、ただ校長先生がたにテーマを提示し、お話しいただくだけでは弊社の催しになりません。第3部の質問コーナーにおいては、弊社から校長先生がたに質問をし、それへの返答をいただくなかで、私学の教育環境で伸び伸びと成長を遂げるために何が必要かを保護者に感じ取っていただきたいと思いました。つまり、質問の内容と校長先生の言葉を通じて、弊社が受験で大切にすべきものが何であると考えているのかを発信したつもりです。
ちなみに質問は次のようなものでした。
1.入学試験で合格点をとれる学力を養うことのほかに、修道・広島女学院に進学するにあたってどんな準備や備えが必要でしょうか。
2.何事も「はじめが肝心」と言います。修道・広島女学院に入学した当初、生徒がまずもって大切にしておくべきことはどんなことでしょうか。
3.入学した時点では目立たなかった生徒が、あるときからぐんぐん伸びる。そういうことは実際にあるでしょうか。あったらぜひ教えてください。
4.入学当初はどの生徒も希望に燃えていることでしょう。しかし、なかには成績が低迷して苦労を強いられる生徒もいるのではないかと思います。そういう生徒に何らかのバックアップをされているのでしょうか。
5.6か年一貫校の魅力の一つは、部活に代表されるように、大人と子どもほど外見も年齢も異なる中学生と高校生が互いに交流する場があることだと思います。そのことについての意義をお聞かせください。
6.修道や広島女学院を卒業し、社会に出た後すばらしい活躍をされている生徒さんに共通する特徴はありますか? 勉学の状況との関連も含めてお答えください。
ざっとこのような質問を用意しましたが、時間の関係で1~4までの質問にお答えいただきました。田原校長と星野校長は、掛け合いで互いの考えを交換しながら、ほかでは滅多に聞けない率直かつユーモアと誠意溢れる話をしてくださいました。おかげでとても楽しい時間になりました。この時間こそ、弊社が保護者に提供したかったもので、「もう少し質問時間が欲しかった」と思ったくらいです。終了後は、楽しいお話の余韻をたっぷり味わうことができました。
校長先生がたの答えがどのようなものだったか、聞きたいと思われたでしょうか。文字数の関係もあり、残念ですが今回は割愛させていただきます(申し訳ありません)。当日お越しになった保護者の方々にとって、お二人の校長先生のお話はすばらしいプレゼントになったものと確信しています。