受け身の勉強が気になる日本の高校生
4月 3rd, 2017
ある日新聞に目を通していると、社会面の記事の見出しが目に飛び込んできました。「日本の高校生 勉強受け身」というものです。そのすぐ横に、「日米中韓調査 上昇志向も低さ目立つ」とあります。どうやら、日本を含めた4か国の高校生の比較調査の結果を紹介する記事のようです。
この調査は、昨年(2016年)の9月から11月にかけて、国立青少年教育振興機構が、日本、アメリカ、中国、韓国の4か国の高校生を対象として、勉強のやりかたや学校生活などについて質問したものでした。回答を得た7854人のデータを集計した結果、それぞれの国の高校生の違いが浮き彫りになりました。日本の高校生については、見出しの通り、「勉強に取り組む姿勢が受け身である」ということや、「上昇志向が低い」ということでした。
学びの姿勢や価値観は一朝一夕に形成されるものではありません。高校生になってから急にそうなったわけではなく、幼少期から受けてきたしつけ教育によって少しずつ形成されたものです。むしろ、人間としての基盤が形成される小学生時代に由来する要素が大きいのではないかと想像されます。そこで今回は、この記事の内容をご紹介することで、家庭でしつけ教育にあたっておられるおとうさんやおかあさんがたに、何らかの指針や方向性が提供できたらと考えた次第です。
では、前述の新聞の掲載されていた調査の結果を見てみましょう。
まず、「問題意識を持ち、聞いたり調べたりする」という質問項目への回答結果を見てみましょう。「そうである」と答えた日本の子どもは12.3%でした。これは、知的興味や関心、勉強への積極性をはかる質問だと思いますが、アメリカや中国の高校生と比較すると随分ポイントが低くなっています。韓国の高校生共々、知的興味・関心の低さが目につく結果となっています。
次の「教わったことを他の方法でもやってみる」という質問項目に対しては、日本の生徒で「そうである」と答えた生徒はわずか7.5%しかいません。アメリカの45.8%と比較すると実に6倍以上の少なさです。
日本や韓国は学歴獲得を巡る競争が激しく、暗記主義のテスト対策に偏っているという指摘の多い国ですが、そうした現実を反映しているのでしょうか。日本の生徒は、「テスト結果に直接反映されることしかやろうとしない」「学んだことを応用するのが苦手」とよく言われますが、そのことを証明するデータを突きつけられた感があります。
三つ目の「授業中、積極的に発言する」という質問項目に対して、「そうである」と答えた日本の生徒は、驚くことに3.7%でした。授業中に積極的に質問するという生徒が7割8割もいたら、先生もその質問をさばくのに四苦八苦するでしょう。質問するには、わからないこと、知りたいことを頭の中で整理し、要領よく話さなければなりません。したがって、授業で質問するには相応の勇気や積極性が必要で、熱心に質問する生徒はどの国でもそう多くはありません。それにしても、他国の生徒の15~17%に対して日本の生徒の3.7%という結果は残念な状況のように思います。
上記以外の質問に対する回答結果について書かれた箇所をご紹介しましょう。
勉強時間でも「平日に学校の授業と宿題以外にどのくらい勉強するか(塾なども含む)」について、「しない」と答えたのは、日本が24.2%で4カ国で最も高かった。「試験前にまとめて勉強する」は69.3%に上り、「一夜漬け」の多さもうかがえる。
日本の高校生の「上昇志向」の低さも際立った。「リーダーになること」を強く望む割合は、米国50.8%、中国24.7%、韓国18.9%に対し、日本は5.6%。「高い社会的地位に就く」「有名な大学に入る」はいずれも13%台で米中韓を下回った。
調査に関わった明石要一・千葉敬愛短大学長は、「勉強が受け身になる背景として、生徒が能動的に学ぶ授業が少ないことが考えられる」と指摘。「勉強への姿勢が、控えめな人生目標にも反映しているのではないか」と見ている。
今、公教育は「アクティブラーニング」をスローガンに掲げて「学びの積極性」を引き出すべく、全国の学校で様々な試みがなされているようです。それは、日本の子どもたちの学びの消極性を自覚し、それへの打開策という側面もあるのでしょうか。
勉強への姿勢が消極的であることと、人生目標が控えめであることとには相関関係は確かにあると思われます。ただ、高度成長期の日本と比較し、日本社会に夢がなくなってしまっていることが根底にあり、「学歴を得てもたいした人生が待っているわけではない」など、勉強のモチベーションが得られない状況も無関係ではないように思います。また今日の日本では親の多くは大卒ですが、その親の様子を見て育った子どもの多くは、「親のようになりたい」と思っていません。生きがいや心の充実感を得にくい世の中になってしまっています。
どうすれば、子どもが知的興味に支えられた積極的な学びを取り戻せるでしょうか。弊社のような進学塾に通う子どもたちは、ともすれば試験に受かるための勉強になりがちで、気をつけないと今回の国際比較調査の結果で示されるような受け身の勉強姿勢が染み付いてしまう危険性があります。
子ども自身が知ることに熱心で、自ら調べて新たな知識を収めたり、様々に考えを巡らせて問題解決にあたったりする姿勢を培いたいものです。そのために私たち学習塾はどのような指導をすべきか、親はどのように子どもの勉強を支援すべきか、互いに同じ視点から子どもの学びを応援していきたいものです。
そのことに関する記事はこれまで何度も書いてきましたが、折を見てまた私たちの考えをお伝えしてみようと思っています。保護者におかれても、「どうすれば積極的に学ぶ姿勢がわが子に身につくか」ということを是非掘り下げてお考えいただきたいと存じます。そのことは、今後のお子さんの人生の歩みに多大な影響を及ぼすと思います。