家族関係・親子関係の3国比較調査 その2

8月 7th, 2017

 少子化がすっかり定着した今日、大学も生き残りに向けて様々な対策を講じているようです。もはや日本人学生だけでは経営を維持するのが難しく、外国人留学生を積極的に受け入れている大学も多数あると聞いています。

 そんななか、先月は青山学院女子短期大学が、2019年以降の学生募集を行わない見通しであるということが新聞誌面で明らかにされていました。同大学は、日本の私立女子短期大学で屈指の難関校であり、かつては6つの学科を擁し、志願者は9千名近くに及びました。しかしながら、少子化の影響、女子学生の4年制大学志向の高まりなどで短期大学の多くは縮小、閉鎖、4年制への移行などを余儀なくされ、同大学も今春の志願者は2千名を割れていた模様です。

 このように、女子の短期大学にとって存続の危ぶまれる状況が訪れていますが、これは4年制の私立大学にも言えることで、もはや全体の半数近くが定員割れの状況に至っていると言われています。そのいっぽうでは、特定の有名大学に受験生が集中する傾向があり、両極化の現象が見られます。少子化は教育界の問題にとどまらず、日本の産業や社会全体に大きな影響を及ぼしつつあります。もはや国をあげての対策が急務であると言えるでしょう。

 さて、今回は前回に引き続き、日本とアメリカ、韓国の0~15歳児の親を対象とした国際比較調査の結果をご紹介しようと思います。調査の実施者、実施年度、標本数などについては前回と同じです。

 最初にご紹介するのは、「現在の教育の問題点」がどのようなものかについての意識に関する調査結果です。

資料1 現在の教育の問題点

 日本や韓国は同じ東アジア文化圏に属し、民族性にも似たところがあります。高学歴を得るための受験競争が激しいということも共通しています。したがって、教育の問題点に対する意識も似ているようです。韓国は、トップランクの大学への受験合格を巡る競争が激しい点では日本以上だとも言われており、そのような状況を問題視する人の割合も日本よりも15.1ポイント高くなっています。

 受験をめぐる競争が激しいのは、努力して勉強に打ち込めば豊かな暮らしが手に入る社会であるということの裏返しでしょう。こうした社会の仕組みに沿った形で教育は行われますから、2番目にランクされている「教育が画一的である」ということや、3番目にランクされている「学歴によって収入や仕事に格差がある」などの問題も生じているのだと思われます。このように、国民をあげて学力獲得に熱心である両国では、「基礎学力が不十分である」という認識はあまりないようで、日本では7番目、韓国では6番目のランクになっています。

 それにしても、日本と韓国では保護者の教育に対する問題認識が大変似通っているようです。問題点としてとりあげられた項目のランクアップの順位がほとんど変わりません。わずかに、6番目と7番目が入れ替わっているだけです。

 いっぽう、アメリカは大きく様相を異にしています。資料をご覧いただくと一目瞭然ですが、「無気力や不登校のまん延」という項目をのぞくと、日本・韓国の上位にランクされている項目と、アメリカの上位ランクの項目とはまるで逆になっています。

 アメリカの親が教育上の問題として第一にあげているのは、「盗み、暴力、薬物乱用などの非行」です。これは移民国家で、生活水準の格差が非常に激しいアメリカの抱える大きな問題のひとつです。特に黒人やヒスパニック系アメリカ人の家庭の多くは貧困にあえいでおり、子どものころから犯罪を犯したり、薬物に手を染めてしまったりするケースが少なくありません。当然、初等教育の段階から勉強面での脱落が生じやすく、「基礎学力が不十分である」という問題も生じてきます。

 ただし、アメリカであれ、日本であれ、韓国であれ、家庭のライフスタイルやものの考えかたは、かつてないほど多様化しています。それがいずれの国においても学校での一斉指導を難しいものにしているのではないでしょうか。「画一的である」「教師と生徒との接触が乏しい」などの問題がいずれの国においても同じように指摘されているのはそのためではないかと思われます。

 では、次の調査項目に移りましょう。教育に関する問題は、主として学校教育の現状に対するものでした。そこで、今度は家庭教育に関わる内容のものを取りあげてみました。

資料2 子供の勉強をみる  (画像をクリックすると拡大表示されます。)

 この資料は、家庭で子どもの勉強の面倒をみるのは誰か、ということに対する意識を調べたものです。どうでしょう。今度は日本とアメリカが比較的似た傾向を示しているのに対し、韓国は少し違っているようです。

 子どもの勉強をみるのは夫婦共通の仕事であるという認識をもつ家庭の割合は、3国ともほぼ同じくらいでした。しかし、韓国では「主として母親の役割である」という認識をもつ家庭が45.1%に及び、他の国よりも断然多いという結果が示されています。

 なお、「その他+わからない」に分類されているのは、祖父母、年上のきょうだい、家庭教師などではないかと思われます。アメリカの富裕層は、家庭教師に勉強を見させているケースが多いのかも知れません。

 最後に、家庭で子どもの遊び相手になっているのは父親か、それとも母親か、に関する調査の結果をご紹介しましょう。

資料3 子供と一緒に遊ぶ  (画像をクリックすると拡大表示されます。)
※資料1~3 内閣府「子供と家族に関する国際比較調査」より

 この資料においても真っ先に目につくのは、「子供と一緒に遊ぶ」役割が、韓国では主として母親の役割であるという認識がかなり強いということでしょう。3国とも、「夫婦同程度の役割」であるという認識に立った考えがいちばん多いのですが、この部分だけ大きく違っています。

 これは、「家庭で子どもの面倒をみるのは母親の義務である」という男尊女卑の考えかたが韓国に根づいているからだというよりも、勉強にしろ遊びにしろ、子どものことに関しては母親の権限が非常に強いということではないかと思われます。

 なお、「子どもの勉強をみる」との比較でわかったことですが、勉強のほうは「父親母親同程度の役割」という認識がいちばん多いものの、「主として父親」や「主として母親」としている家庭が日本やアメリカにおいてもかなり見られました。いっぽう、「子供と一緒に遊ぶ」のほうでは、日本もアメリカも圧倒的に「父親母親同程度の役割」とする家庭が多いようです。理由はよくわかりませんが、「遊ぶときには家族全員が揃って楽しい時間にすべきである」という考えによるものかもしれませんね。

 以上、学校教育や家庭教育という側面から、日本、アメリカ、韓国の親の考えの共通点や違いを見てきました。あなたの考え、あなたの家庭の現実を比較対照し、参考にしていただける点があったなら幸いです。

Posted in 子育てについて, 家庭での教育

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