失敗は誰にもある。大切なのは後の対応!
5月 21st, 2018
ご存知のように、弊社では2週間を一括りとした単元に基づいてテスト(マナビーテスト)を実施しています。子どもたちはこのテストでの結果を学習成果の指標とし、少しでも得点や順位を上げようとがんばっています。
保護者の方々は、わが子の学習成果をこのテストの結果である程度判断しておられると思います。以前もお伝えしましたが、テストの結果が順位で知らされるのはいささか刺激的で、成績がよければ大きな励みと自信を得ることができますが、成績が芳しくないときには気分が沈み、自信が揺らいでしまうお子さんもいます。特に、「がんばった!」という実感を胸にテストに臨んだのに生憎な成績に終わったときは、本当にがっかりしてしまいます。今回はテストをよい意味での刺激とし、学力向上のために積極的に活かす方法について、共に考えていただきたいと思います。
わが子の学力向上を願わない親なんていません。おそらく大概のかたは、開講後しばらくはわが子の成績に関心を寄せ、「どんな結果を得ているのか」と、テストの成績がわかる日を心待ちにしておられたと思います。今はどうでしょうか。前述のように、テストの成績が芳しくないと気分を落ち込ませたり自信を失ったりするお子さんが出てくるのと同様に、保護者も残念な成績が続くことに落胆し、わが子の勉強に対する関心やサポートの熱意を失ってしまう傾向があるようです。
すでにそうなりつつある保護者はおられませんか? もしもあてはまるかたがおられたなら、気持ちを立て直し、わが子が前向きに取り組む姿勢を取り戻すためにどうしたらよいかを、今こそ真剣に考えていただきたいと存じます。子どもがやる気を失ううえで最も残念なのは、親の情熱あふれる後押しが得られなくなったときです。成績だけで子どもは勉強の意欲を失うわけではありません。今、わが子の勉強ぶりや成績に不満のあるかたは、「どうしたらわが子は意欲を失わずに受験生活を全うできるか」という視点に立ち、巻き直し策を考えていただきたいですね。
上記のことは、筆者自身の過去の後悔と重ね合わせて保護者にお伝えしていることです。ずいぶん昔の話で恐縮ですが、筆者もわが子を家庭学習研究社の教室に通わせて受験させました。当時、いつまで経ってもわが子の勉強ぶりや成績に進展が見られず、業を煮やした筆者はいろいろと反省や注意を促すための働きかけをしたのですが、わが子はそのたびに興奮して言い返してくるばかりでした。「もはや受験の結果は期待できないな」という親の内心を察したのか、入試が近づいてもわが子の取り組みが熱を帯びる様子はなく、ほぼ予想した通りの入試結果に至りました。
入試を終えた直後は、わが子に対して「ふがいないやつ」とは思ったものの、「親としてもっとやりようがあったのではないか」と振り返っているうちに、はっと気づいたことがあります。筆者はわが子にがんばりを要求するばかりで、どう巻き返すかについての冷静な話し合いをせず、また、わが子の気持ちに即して考え、奮起を引き出すような働きかけもしていませんでした。入試結果は、ある意味において親である筆者に対する採点に他ならなかったのです。
ただし、今や社会人となった息子の様子を見ていると、受験までの不完全な勉強のなかにも、貴重な収穫を得ていたことに改めて気づかされます。自分なりに準備と心づもりをしてテストに臨む。そのテスト結果について、不完全でも点検や反省をし、次に臨む。こうしたことの繰り返しを通じて、誰に言われなくても自分の行動を顧みて修正していく姿勢がそこそこ身についています。このような姿勢は、社会に出てからますます求められるものですが、中学受験をめざして学んだ経験があってこそ培われたものに他なりません。このことに鑑みるなら、「成績が思い通りにならなければ、受験しても意味がない」「受験をめざしても無駄」などということはありません。わが子が中学受験生だったころ、もしも筆者がもっと親として適切なフォローやサポートをしていたなら、息子はもっと望ましい成長を遂げていたのではないかと、今更ながら後悔しきりです。
そうした筆者自身の反省も含め、これからお子さんが中学受験をされるご家庭の保護者にお伝えしたいことがあります。まず、「わが子はやる気がない、能力が足りない、こんなことではどうせろくな結果は…」と、ネガティブな発想でわが子を絶対見ないでいただきたいということです。今より、わずかずつでもやる気を出し、努力する姿勢を築いていけば、1年間で大変な進歩や違いが生じます。それなのに、まだ入試が来てもいないのに、わが子への期待や関心をトーンダウンさせたのでは、せっかくの、成長のチャンスをみすみす取り逃がしてしまいます。
この点に絡めて胸に留めていただきたいのは、「勉強しても成績をあげられないのは、ある意味あたりまえのことだ」ということです。理由は簡単。みんな同じように勉強しているのですから。そんな集団のなかでは、現状の成績を維持することさえ容易ではありません。見かたを変えれば、どの子どももやった分だけの成果は得ているのです。そのことを認識したうえで、子どもに無用なハッパをかけるのではなく、「どうすれば、より上の状態に漕ぎつけられるか」を親子で一緒に考えるべきではないでしょうか。子どもの勉強の活性度が落ちるのは、子ども自身のせいばかりではありません。親の適切なサポートがあれば、一時的に子どもがやる気を失ったとしても、必ず挽回できるのです。
そこで保護者にお願いしたいのは、成績を軸にしてほめたり叱ったりを繰り返すのをやめることです。無論、成績が上がったときにほめることまで反対しているのではありません。親は成績で一喜一憂するのではなく、テストの点や成績にかかわらず、子どもが「失敗した」「やってしまった」という残念な問題がいくつあったかを一緒に点検し、「こんな問題、もう一回出たら絶対に征服してやる!」という意気込みをもち、次の勉強に臨んでいくようなサポートに徹することをお勧めします。
私の過去の指導経験を思い出すと、入試が近づくほどに学力を上げていくお子さんの多くは、成績が悪かったときには、なぜ失敗したのかを逃げずに正面から振り返り、必ずやり直しをしていたということです。「次は絶対に取り返すぞ!」という意気込みは、失敗を点検してしっかりやり直しをしてこそ生まれるものです。
これはアメリカの心理学者の著作にあったのですが、アメリカの子どもたちは成績がよかったらやる気を高める傾向が強いのに対し、日本や東アジアの子どもは成績が悪かったら取り返そうと奮起しやる気を高める傾向が強いと指摘していました。こうした気質の違いは親のものの考えかたや子育ての違いによるもので、「学力は生まれつきの能力で決まる」と考えがちな西欧社会に対し、「学力は努力次第で高められる」と考える日本人をはじめとする東アジア圏の社会との考えかたの違いが、子どもの勉強に対する関わりかたにも影響を与えているようです。日本の子どもの学力が相対的に高いのは、そうした民族的な気質の違いも一要因であるといったようなことがその本に書かれていました。
この考えにもとづくなら、成績がよくなかったことの原因は、努力不足によるものだという考えを軸に置き、失敗の原因を確かめて次に生かそうという姿勢をわが子にもたせるような働きかけをすることが親に求められるのではないでしょうか(無論、努力する姿勢は親の強要で育つものではありません。子どもが自分の能力に対する信頼の気持ちを失わないよう、上手に励ますことが求められます)。
テストで思わぬ大失敗をしてしまう。それは誰にでもあることです。問題はそのあとなんですね。イヤな記憶はただ消してしまうのか、臥薪嘗胆よろしく、失敗を忘れずに次に備えるか。その繰り返しが先々の歩みに大きな違いをもたらすのです。
失敗を恐れず、失敗を糧にして次に備える。そうした姿勢を尊重し、お子さんを励ましてあげてください。その働きかけを一貫して行けば、必ずお子さんは自分で這い上がるすべを身につけていきます。