人はよい親になるための素質をすべてもっている!

7月 2nd, 2018

 あなたは子育てを楽しんでいますか? 子育てに生きがいを見いだしていますか? それとも辛いと思っていますか? 不安になることが結構ありますか?

 「楽しいし、生きがいでもある。しかし、ときには不安になるし、辛いと思うこともある」――それが多くのおかあさんの本音ではないでしょうか。わが国では、子育てにまつわる問題として、「おかあさんがたの負担が大変大きい」ということがしばしば指摘されています。子どもの日常のしつけや世話の、実に80数%をおかあさん一人が引き受けておられる。それがわが国の現実なのです。それに加えて、みなさんは「わが子の受験」という大きな課題を抱えておられます。親の精神的な負担は否応にも増すばかりです。

 そんなおかあさんを少しでも応援できたなら…。そう思うものの、そもそも筆者は子育ての達人でもなんでもありません。そこで、今回は子育てや家庭教育に関わる書物のなかから、みなさんに元気を吹き込み、毎日の親業に指針を与えてくれそうな著述を探し、まとめてみたしだいです。

 子育てに関する本を数多く著しておられるスティーブ・ビダルク氏は、著書で次のようなことを述べておられます。

 親は誰だってわが子に対して深い愛情をもっています。子育てに対する情熱をもっています。しかしながら、日常の些細な面倒に突き当たっているうちに、いつのまにか大切にすべき本質を見失いがちです。まずは原点に今一度立ち返りましょう。そのうえで、今回みなさんにお伝えしておこうと思うことが一つあります。それは、「言葉のもつ大きな力」に着目するということです。

 私たちの話しかたや言葉には大きな力があります。その力は使いかたしだいでプラスにもマイナスにも作用します。言葉は子どもの心をうち砕くこともできるし、また、子どもをより善い自分に基づいて行動する人間へと導くこともできるのです。

 親が言葉のもつ力をどのように意識し、いかにして用いるか。それがそれぞれの家庭の文化を形づくることにもなります。親の行動のありかたとして、次の二つのうちあなたはどちらに近いでしょうか。

 子どもは正直です。自分の悪い側面を指摘され、叱られ続けると、そういった行動を一層増幅させて手がつけられなくなっていきます。反対に、よい面をほめられ感謝されると、善なる心に基づいた行動を強化していきます。言葉にはそれほどの力があるのですね。

 どちらが望ましいかは言うべくもありません。ほとんどのかたは後者を志向しておられることでしょう。それにもかかわらず、現実の行動は前者に近いものになってしまう。そんなことはありませんか? 親として期待する子どものふるまいと、実際の子どものふるまいにギャップが生じると、どうしても親は苛立ちます。その結果、思いとは裏腹な対応をしてしまうのでしょう。

 私たちは1日に自分自身へ6万回語りかけると言われています。ネガティブな語りかけをする人は、他者への語りかけもネガティブなものになりがちです。常日頃から、ポジティブで自らを力づける言葉を心の内に語りかけることが重要ではないでしょうか。

 次に一つのエピソードをご紹介しましょう。これは、外国の民間教育運動家の著書から引用したものです(文字数・体裁等の都合で文を調整しています)。

 ある国で行われたワークショップでのことです。参加者の一人にパン屋さんがいましたが、この人は奥さんに無理やり連れてこられたようでした。奥さんは彼の虐待的な言葉の使い方がひょっとしたら直るかも知れないというかすかな望みを抱いていました。彼は両腕を組んでぶつぶつ言いながら座っていましたが、間もなくワークショップにしっかりと参加していました。

 翌日、ワークショップの講師が町で彼を見かけました。すると、彼はニコニコしながら近づいてきて、「あれは本当によく効くねえ!」 講師が「どういう効き目があったのですか?」と尋ねると、「まあ、わたしは世界最悪のボスという評判でね。しかし、『ワークショップで学んだ‟人を力づける言葉”とやらを、試しに使ってみるか』と考えたんだ。それで、いつもは怠け者の従業員に『しっかり仕事をしてくれてありがとう。きみがその重い袋を運んでくれたおかげで、わたしは腰に負担をかけずに済んだよ』と言ってみたんだ。すると、彼は飛び上がらんばかりに驚いた様子だったけど、それからにっこり笑って、いろいろと手伝ってくれてね、『ボス、何かすることはありませんか?何でもやりますから』なんて調子だったんですよ。妻にもこれを試してみようと思ってるんです」 

 誰でもそうですが、自分の存在をプラスの観点から指摘されると、単にうれしいだけでなく、前向きな自分を取り戻すものです。まして子どもならなおさらです。

 みなさん、ここで自分の子どもの最もよいところについて、それぞれ頭に思い浮かべてみましょう。そして、1年前、2年前よりも成長したところはどこか考えてみましょう。それだけで元気が湧いてくるのではありませんか?  

 そして次は、子どもの毎日をよく観察し、子どもについて感じたよい点を、場面に応じてタイミングよく言葉で表現して伝えるのです。それによって、子どもは自分に対する自信を取り戻すとことができます。のみならず、自分の足りない点にも心を向けるようになります。なぜなら、ほめてくれた人物がおかあさんなら、「おかあさんは自分に何を期待しているか」に思いを馳せないわけがないからです。親に言葉でほめられるということは、それほどの違いを生み出すのです。

 一度試してみてください。子どものよい点・よい行動を心からの言葉で伝えてやりましょう。そのとき、お子さんの表情をしっかりと見届けてください。きっと親としての新たな気づきがあるはずです。

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