子どもの自己肯定感と自然体験・生活体験等の関係 その2

7月 30th, 2018

 前回は、自然体験や生活体験、手伝いなどを豊富にしている子どもは、自己肯定感が高いという調査資料をご紹介しました。今回も、引き続きこの話題を取り上げてみようと思います。

 自己肯定感は、ものごとを遂行し成果を得るうえで欠かせないものです。特にやるべきことが簡単でない場合、「自分にはやれるだけの力がある」と思っているか、それとも「自分にはやれるだけの力がない」と思っているかで、取り組みの能動性や情熱、集中力、粘り強さなどにおいて大きな違いが生じるからです。

 まずは自己肯定感に関する調査の結果を概観してみましょう。なお、調査対象は前回と同じで、小学4年生3084人、5年生3152人、6年生3043人、中学2年生5140人、高校2年生5647人です。この調査は、平成27年の2~3月に、「国立青少年教育振興機構」によって行われたものです。

 自己肯定感に関する調査は、6つの質問項目によって行われました。それぞれの質問に対し、「とても思う」を1点、「少し思う」を2点、「あまり思わない」を3点、「全く思わない」を4点とし、各質問項目の平均点を基準に「高い」「やや高い」「ふつう」「やや低い」「低い」の5段階に分類した結果をまとめたのが上記グラフです。

 資料①は、小4~小6、中2、高2の対象者すべてから割り出した数値を示しています。これによると、自己肯定感が「高い」「やや高い」の合計は48%でした。6つの項目のなかで、自己肯定感が高かったのは「学校の友だちが多い方だ」と「自分には自分らしさがある」で、それぞれ8割、7割強が「高い」もしくは「やや高い」となっています。自己肯定感が低いのは「勉強は得意な方だ」で、「高い」もしくは「やや高い」と回答したのは4割強の子どもでした。

 次に、学年別に自己肯定感の状況を調べた資料をご覧いただきましょう。

 この資料をご覧になったかたの大半は、「自己肯定感が、年齢を重ねるごとに低下している」ということに注目されたのではないでしょうか。なぜ年齢が上がるにつれて自己肯定感が失われていくのでしょうか。

 筆者の想像ですが、これは「子どもが年齢とともに現実の厳しさに直面し、自分への信頼の気持ちを失っている」だけではなく、「子どもが年齢とともに、現実をより客観的に批判的に見つめるようになった」からであろうと思います。子どもは成長の過程で様々な体験を繰り返しますが、その結果自分にできるか・できないかを事前に見通すようになります。自分の現実を、願望を織り交ぜてとらえるのではなく、冷静に可能性を検討する視点が育ってくるからではないでしょうか(無論、このことに関しては様々な見解や意見の相違があろうかと思います)。

 ここまでは、日本の子どもの自己肯定感の現状を示す資料をご覧いただきました。ここから、今回のテーマに直接関わる話題に移ります。自然体験、生活体験、手伝いなどが、子どもの自己肯定感にプラスの影響をもたらしているかどうかを、調査資料でともに確認してみようと思います。

 いかがでしょう。各資料は、自然体験、生活体験、手伝い、生活習慣のそれぞれについて、「多い(身についている)」から「少ない(身についていない)までを5段階に分け、自己肯定感の状態を比較してものですが、いずれも「多い(身についている)」子どもほど「自己肯定感が高い」という結果を示しています。

 自然と触れ合う体験は、人間としての瑞々しい感性をよみがえらせてくれるものです。本来備わっている探求心も、より活動的になるのではないでしょうか。生活体験が豊かであれば、自分や他者と向き合う姿勢が育まれます。物事に取り組むうえでの能動性は、「自分や他者への信頼」が背景にあってこそ発揮されますから、高い自己肯定感を伴うことは疑う余地がありません。子どもは家の手伝いをすることで、「自分は家族のために役立っている」という手応えを味わうことができます。当然、自己肯定感が強化されるのは間違いありません。生活習慣がしっかり身についていれば、「何でも自分のことは自分でして当たり前」という観念が自己に浸透していきます。これも自己肯定の気持ちと密接につながっていることは言うまでもありません。

 こうしてみると、自然体験も、生活体験も、手伝いも、生活習慣(の自立)も、すべて自分という人間を肯定的に見る姿勢の醸成に深く関わっていることが容易に想像されますね。子どものうちに、自己肯定の気持ちを育む様々な体験をさせてやりましょう。そうすれば、子どもは大人に近づいていく人生の過程で突き当たる様々な問題に対しても、決してあきらめることなく前向きに向き合い、自分で活路を見いだせる人間へと成長していけるのではないでしょうか。

 夏休みは、毎日の生活のありかたについて振り返り、足りない点や望ましくない点をチェックするよい機会です。また、修正すべき点が見つかったなら、そこを重点的に改善していくこともできます。今回の調査結果とお子さんの現状とを照合し、お子さんがより前向きに物事に取り組む姿勢を強化していくための参考にしていただければ幸いです。

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