自己肯定感が学習活動に及ぼす影響 その1

8月 6th, 2018

 先々週、先週は、「自然体験や生活体験、手伝いなどと、子どもの自己肯定感との関係」を話題に取り上げてみました。かなり多くのかたがこの記事をお読みくださっているので、もう少し話を進めてみることにしました。

 自己肯定感が、子どもの学習の活性度、ひいては学力に大きな影響を及ぼすのは間違いありません。そのことは、先週ご覧いただいた調査資料である程度ご了解いただけたのではないでしょうか。このブログをお読みくださっているかたの多くは、中学受験生の保護者であろうと思います。当然、わが子の学力形成について高い関心をおもちのはずです。そこで今回は、自己肯定感と学力の関連性について筆者の頭に浮かんだことを書いてみようと思います。

 みなさん、まずはご自身の小学生時代、中学・高校生時代、さらにはその後の学びの人生を振り返ってみてください。もっと高い学力の持ち主になるには、どうすべきだったと思いますか? あるいは、何がかつての自分に足りなかったと思いますか(失礼な質問をお許しください)?

 答えは人それぞれでしょう。筆者自身について申し上げると、「もっと段取りをつけて計画的に学ぶ姿勢を養っていたら」と悔やんでいます。筆者は30数年広報業務を担当し、常に企画や原稿の締切日に追われる日々を送ってきました。この仕事は学生時代までと違って、「できませんでした」の言い訳は通りません。大きな催しは半年以上前から企画を練りますが、時間的猶予がなくなったときなど、「段取り力」の不足を痛感したものでした。ただし、なんとかここまでやってこれたのは、「きっとできるはず」という気持ちを失わずにがんばってきたからだと思います。また、数多くの場を踏むプロセスで、「段取りが事の成否を分ける」ということを身に沁みて感じたからだと思います。

 また、「教科の好き嫌いが小学生時代から顕著で、大学受験に至るまでそれが尾を引いた」ということも後悔の一つです。仕事柄、とても面白い算数の入試問題などに出くわしますが、そんなときには「こういう問題を解く楽しさを味わっていたら、文系に偏っていなかったのでは」と、ついつい思ってしまいます。以上の二つは、筆者が中学受験を経験していたら、状況は随分違っていたかもしれませんね。段取りとつけて学ぶこと、学ぶことの楽しさや面白さに触れる経験をすること。この二つは、弊社の指導方針の柱となるものですから。

 ところで、なぜ上記のような問いかけをしたのかについて申し上げると、それには理由があります。ご自身のこれまでの人生の歩みを、自己肯定感とのつながりで振り返ってみていただきたかったからです。また、今の自分をつくった原動力は何かということについて、改めて振り返ってみていただきたかったからです。そうすれば、今のお子さんの学びの状態をよりよい方向へと改善するうえで有効は方法に気づかれるかもしれません。お子さんの内面の強化に向けたサポートを怠らないことや、学びに対する受け止めかたをより能動的なものにすることも、学力を伸ばすうえで大変重要な役割を果たしています。これらにも、ぜひ目を向けていただきたいですね。

 多くの親は自分の経験を忘れ、わが子の勉強のことになると、直接勉強に関わることばかりに目を向けがちです。しかしながら、子どもの学習成果を規定しているのは、勉強それ自体よりも、自己肯定感や、学習意欲、学習習慣、ものごとに取り組む姿勢などです。これらが、学習成果をあげるうえでの前提として重要な役割を果たしているのです。何を、どれだけ、どのように取り組むと学力がつくかは、この前提が整ってこそ効果に直接結びついていくのではないでしょうか。また、それを研究して多くの受験生の学力形成に貢献することこそ、学習塾に課せられた大きな役割だと思っています。

 前述の「学びの前提」となる諸要素は、今日の時代にますます重要性を帯びているように思います。というのも、高度経済成長期までの日本では、「大人になったら、お金持ちになりたい!」という願望を胸に勉学に励む子どもが多数いたものです。しかしながら、すでに得るべきものを得た親が築いた環境の下で育った今日の子どもには、そういった上昇志向は希薄です。勉学に打ち込む意欲を否応なく引き出す社会的要因がないなら、人間が本来もつ探求心や向上心を呼び覚ます環境や刺激を子どもに与え、勉学への志向性が子どもに宿るよう大人が働きかけるしかありません。

 次の資料を見てください(文部科学省のHPから引用。データ以外の一部を加工。以後の資料も同様です)。

 上記の資料は、日本、アメリカ、中国、韓国の高校生の生活意識を調査し比較したものです。いずれの国でも、「将来志向の頑張り型」の子どもが「のんびり型」よりも多い傾向にありますが、4か国を比較すると、日本の子どもに気になる点が見受けられます。たとえば、「将来のために~」は40ポイント強で三番目、「できるだけいい大学~」は20数ポイントで最下位です。そのいっぽう、「食べていける~」のポイントは4か国中最上位、「人並みの生活~」のポイントは4か国中二番目となっています。つまり、将来志向の意識は低く、無理をしてまでがんばろうとは思わない高校生が多いという現状が明らかになっています。

 さらに、次の資料をご覧になると、現代の子どもの「のんびり志向」がより詳しくわかると思います。

 父親や母親は、「現在中心」の考えと「未来志向」とのバランスがとれています。ところが、子どものほうはと言うと、圧倒的に「現在中心」に志向が偏っています。将来ある中学生や高校生が、その場しのぎの享楽的生活や人生を追い求めているのが気になります。こういう考えかたは、当然将来の人生の歩みに幅をもたせるための勉強にも、マイナスの影響を及ぼすおそれが多分にあるでしょう。

 気がつけば、当初思っていたことと微妙に話題がずれてしまいました。また、文字数が多くなってしまいました。今回はここまでで終了させていただきます。うまくまとまるかどうか自信がなくなりましたが、「今の子どもたちの保護者に」という思いで書いています。よろしければ引き続き読んでみてください。

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