“やる気スイッチ”をON(オン)にするルーティンを築こう!!
9月 17th, 2018
こんなふうに、わが子をしょっちゅう叱っているおかあさんはおられませんか? こういう家庭のお子さんのほとんどは、勉強を「やらされるもの」「やらなくてはならないもの」という受動的な受け止めかたをしています。だから悪循環が連鎖している状態にあると言えるでしょう。
それでいて、大概の子どもは「勉強は必要なものだ」という気持ちはもっています。ダラダラテレビを見たりマンガやゲームにかまけたりしているのは、それらが格別楽しいからというよりも、やらなければならない嫌なものから逃避するための、身近で手軽な道具だからだとも言えるでしょう。
そもそも、勉強は(ものを知るということは)好奇心や探求心を充足させる喜びを与えてくれるもののはずです。決して忌避の対象となるようなものではありません。それなのに、どうしてこんなことになるのでしょう。
この8月に、弊社では「玉井式」の創設者である玉井満代先生をお招きして「教育講演会」を実施しました。そのとき、今お伝えした疑問と深く関わる話を聞き、はっとさせられました。玉井先生は仕事でしばしばインドを訪れておられますが、インドでは子どもたちが目を輝かせ、夢中で勉強に取り組む姿が当たり前のように見られるそうです。その理由ですが、インドはまだまだ貧しい家庭が圧倒的に多く、学校に行きたくてもいけない、勉強したくてもさせてもらえない子どもがいっぱいいます。そんななか、やりたいだけ勉強できる境遇を得ているのは掛け値なく幸せなことであり、「自分は恵まれているのだから、一生懸命勉強に励むのは当たり前だ」と、子どもたちは思っているのだそうです。勉強する機会を得られること自体が幸せなことなんですね。しかしながら、日本の子どもはそういった気持ちになりたくてもなれない環境のもとで暮らしています。どうしたものでしょうか。
少し話が横道にそれるかもしれませんが、先だってテニスの全米オープンの女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手のインタビュー記事を読んでいて、心の惹かれる思いをした箇所があります。それは、彼女の「テニスができることはハッピー!」という言葉です。もう少し詳しくお伝えすると、試合に出て、優れた対戦相手とテニスをする。それは最高の楽しみであり、そのために練習を重ねるのですから、ポジティブな精神でテニスと関わるべきだと彼女は考えているようでした。だから、テニスをずっと続けたいし、それが今できていることはこの上なくハッピーなことだというのです。
恵まれた日本の家庭の子どもは、あまりにも苦労を知らない環境で暮らしています。子どもを目当てにしたエンターテインメントの類が大きな市場を形成し子どもを惹きつけ、目先の楽しさを得ることに日本の子どもたちは慣れきっています。前述のインドの子どもたちのように、「自分が勉強できる境遇にあることに感謝し、喜んで取り組む」といった状況を今更実現するのは難しいと言わざるを得ません。しかしながら、どのような国で生まれようとも、人間社会で生きていくうえで勉強は不可欠です。よりよい社会を築き、よりよい生活をしていくには、一人ひとりの人間が「学ぶ」ということに真摯に向き合う必要があります。子どもたちも一定の年齢になると、そのことをある程度認識しています。だから、勉強は必要なものだとは思っているのです。
で、ここからが今回の本題です。「勉強は大切だと思っている。けれど、いざとなると億劫になる。目先の楽しいことにかまけてしまう。どうしたらいい?」――この問題の解決方法を少し考えてみようと思います。
勉強は、わかるまでのプロセス、目標とする次元に到達するまでのプロセスにおいて、楽しいというよりも辛いと感じる側面があるのも事実です。しかしながら、いったん勉強のもつよさに触れ、その経験が繰り返されたなら、大人も子どももなく、誰でも勉強せずにはいられなくなります。問題は、勉強のよさに気づき、考えることが楽しくなるレベルにどうしたら漕ぎつけられるかでしょう。
そのための方法として、筆者は子どもが勉強にとりかかるプロセスに一工夫加えることをお勧めしたいと思います。どういうことかというと、「遊びから勉強への切り替えスイッチをスムーズにする」ために、「決めた時間になると自然に勉強を始めるルーティンを築く」のです。すでに何度かお伝えしましたが、子どもの学習意欲は「勉強しなさい」の言葉では湧きません。むしろ逆効果です。必要なのは「習慣化」し、やるのを当たり前にすることです。一定のペースで勉強を繰り返していると、子どもは必ず勉強のもつよさに気づくようになります。特に、自分の推測したことが正解だったときの喜びは何とも言えないものです。こういう経験をしていると知らず知らずに学習意欲も高まってきます。「習慣化→意欲向上」の流れを築くのです。そうすれば、勉強が億劫なレベルを脱することができるのです。
では、ルーティン化、習慣化を成功させるために何をしたらよいでしょうか。弊社は、隔週実施のテストを軸にした2週間の学習サイクル)に基づく学習計画を立てるよう指導していますが、計画を立てても実行できない子どもが今回の問題の主人公です。わかっているけど取りかかれない子どもが、計画に沿って取りかかれるようにするための工夫が必要なのです。
筆者が考えた案をちょっとご紹介してみましょう。きっとみなさんなら、もっとよい案が出てくるでしょう。文にするとわかりにくいので、イラストと組み合わせてみました。
ちょっと補足説明をしておきます。①ですが、子どもは家族と楽しく話をすると、すごくやる気を起こします。すでに書いたことがありますが、会話を通じて親の愛情を感じると、「親は自分に何を期待しているか」に思いを馳せ、それをすることに積極的になります。団欒の後が勉強の時間になっていたら、「さあ、次は勉強だ!」と気持ちを切り替え、しっかりと取り組むようになります。会話の内容は、おとうさんがへまをした話でも、スポーツの話でもなんでも構いません。
②も同じような理屈ですが、子どもは家族みんなで何かに取り組むときは、「自分もやっているよ!」ということを示そうと張り切るものです。おとうさんは読書、おかあさんは洗濯ものを畳む時間にするなど、ご家庭の事情に合わせて何をするかを考えてください。毎日できなくても結構です。家の決め事と言える程度の回数を励行しましょう。時間も、子どもの勉強時間にピッタリ合わせる必要はありません。
③ですが、子どもは親が自分の話に真剣に耳を傾けてくれると、とても喜びます。①と同様にこういう時間を過ごすとき、子どもは頭の片隅で「親は自分に何を望んでいるか」と考えるようになり、「次は勉強の時間だから、すぐにとりかかろう」という気持ちになります。ただし、その日の行動を詰問調で尋ねる形式は逆効果です。すぐにたしなめたり関心のなさそうな態度で聞いたりするのでは効果はありません。子どもの気持ちに寄り添い、同調しながら聞いてやるだけで結構です。
どうでしょう。やってみませんか? ①~③はいずれも根は同じ考えに基づくものです。そう、家族一緒に何かをすること、親の愛情を感じること、親が自分のすることに関心をもってくれること。これらこそ、子どものやる気に好影響をもたらすスイッチなのです。親が商売をしていて、子どもと一緒に過ごす時間がないうえ、勉強も見てやれない家庭がありました。そこで、毎日10分だけ時間をとって学校から帰宅した子どもにその日の報告を聞いてやり、それからおやつ、宿題という流れをずっと繰り返したという話を聞いたことがあります。その子どもは学力を大いに伸ばし、やがて有名な国立大学に進学したそうです。ルーティンというものの威力とすばらしさを感じずにはいられません。
上記の3つは単なる提案です。どうしたら子どもの気持ちを盛り立てられるのかを踏まえたなら、みなさんのほうがよい案を思いつかれるかもしれません。習慣化はすばらしい成果をもたらします。面倒で嫌になったはずのことでも、習慣化に成功するとやらずにはいられなくなるのです。必ずやり、それを継続する。この好循環の流れを子ども時代に築いたなら、それは目の前の目標達成(中学受験での結果)のみならず、人生の充実に向けて、欠かせない財産となるのです。
よい習慣は一生の宝です!