子どもに関心を寄せ、ほめることを忘れないで

10月 9th, 2018

 このところ様々な仕事や用事に追われ、ブログを書く充分な時間がありません。そこで、今回は今までに書いた文章のなかから、まだこのブログでご紹介していないものを探してみました。しかしながら、過去の記事が700回分ほどもあり、掲載済みの可能性もあります。読んだご記憶のあるかたもおられるかもしれません(少し手を入れています)。予めご了承ください。

 子どもをほめることの重要性と効能については、すでに何度もお伝えしました。また、教育書や子育て本の類では、一様にほめることが奨励されていると思います。ところが、その割にほめるという行為を上手に活かしておられるかたが少ないようです。小学生までの子どもは、おかあさんにほめられてこそ学びの活力を得ることができます。そのことをまずは思い起こしていただき、ほめて伸ばす自分なりの親像をもう一度追求していただきたいですね。

 これからご紹介する話は、外国の心理学者が実施した実験とその結果です。対象は、小4と小6の子どもでした。実験は5日間にわたりました。まず、1日目に算数のテストをし、結果から成績、年齢、男女比を均等にして、称賛・叱責・放任・統制の4グループに分けました。

 称賛グループは、ほめて子どもの反応をみるグループです。このグループでは、2~5日目のテスト前に、教室で実験者が一人ずつ名前を呼び、その都度「前回のテスト結果はよかったよ」と告げて全員の前でほめ、次もがんばるよう激励しました。

 叱責グループは、叱ってその反応を確かめるグループです。このグループでは、実験者が称賛グループと同じように一人ずつ名前を呼び、全員の前で「前回のテストの結果がよくなかった。ミスが多かった」と告げ、厳しく叱りました。

 放任グループは、称賛グループや叱責グループと同じ教室にいるものの、二つのグループへの実験者の対応を見ているだけで、何も言葉かけをされなかったグループです。

 最後の統制グループは、先の3グループとは別の教室に入れられ、何の情報も与えられずにただテストを受けただけのグループです。実験をする際、何もしなかった場合のデータを取り、実験で得られたデータと比較照合するために用意されたグループです。放任グループと違うのは、同じ教室に入れられず、他の子どもがほめられたり、叱られたりする様子を全く見ていなかった点です。

 さて、4つのグループの結果はどうなったでしょうか。

 まず、称賛グループから実験の結果を見てみましょう。テスト成績は、回を追って右肩上がりに向上しています。そして、最終回の成績は、他のグループを圧倒するほどに向上しています。

 叱責グループはどうでしょう。2回目は成績が上がり、称賛グループと同じよい結果を得ました。ところが、3回目以後は段々下がっていき、最終回は称賛グループに大差をつけられてしまいました。叱られることは、1回に限ってはショック療法的な効果があり、子どものがんばりを引き出すようです。しかしながら、ご存知と思いますが、大概の人間は何度も叱られているとうんざりするし、叱責の言葉を聞き流してしまうようになりがちです。つまり叱るという行為は一過性の効果しかもたらさず、継続的な努力へと結びつけることはできないようです。

 3つめの放任グループは、2回目こそ少し成績を上げたものの、後は右下がりに終わってしまいました。推移の様子は叱責グループに似ていますが、常に叱責グループよりも成績は下回っています。これは何を意味するのでしょう。他の子どもがほめられたり叱られたりしている様子を見て、「自分もがんばらねば」と多少の刺激は受けたのでしょう。しかし、自分に関心をもってくれる人がいないことは、やる気にダメージを与えるのでしょうか。学習は沈滞化し失速してしまいました。

 最後の統制グループですが、このグループが2回目以降のテストで常にいちばん成績が振るいませんでした。これはいったいどういうことなのでしょう。実は、統制グループの課された条件が、子どもにとって一番辛かったのです。何も励みや指標となる情報がなく、しかも大人からほめられることも叱られることもない。関心の対象から除外される状態が、いかに人間にとって辛いことかを、この実験結果は物語っているのではないでしょうか。

 この実験は心理学に造詣のある人にとってはお馴染みで、長く伝えられているもののようです。そして、「ほめることの大切さ」についての根拠として様々な形で活かされています。

 これをお読みくださっているみなさんにとっても、上記の実験結果から得られる教訓は日々の家庭教育に活かせるのではないでしょうか。実験の結果をまとめると次のようになるでしょう。

・子どもは大人にほめられることで奮起する
・大人から継続的に関心や期待を寄せられると、子どもは学習に大きな励みを得てがんばれる
・子どもの素直な反省につながらない叱責は、その場限りの効果しかもたらさない
・自分に関心や期待が寄せられないことは、子どもの学習への取り組みに大きなダメージを与える

 親は「がんばったら(成績が上がったら)」ほめてやる」といった接しかたをしがちです。ほめるだけの根拠がなければほめられない。そう考えがちです。しかしながら、著名な教育学者は「親が子どもをほめるのはがんばりの対価などであってはならない。がんばったらほめるのではなく、がんばらせるためにほめるのだ」と言っておられます。ほめるかどうかを、勉強に限定する必要はないのではないでしょうか。子どもの前向きさや努力のあとを感じることがあったなら、何であれほめてやりましょう。すると、子どもは自分に関心が寄せられていること、自分ががんばることを親が期待し、がんばれば喜んでくれるのだということを実感し、心に張りを得ることができます。

 保護者の方々におかれては、どうか些細なことでもわが子の努力を見逃さないであげてください。ほめれば子どもの心は活気づきます。きっと子どもたちの学習にもプラスの影響をもたらすことでしょう。

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