脳の活性化を促す食事を!

10月 29th, 2018

 勉学の秋、読書の秋、スポーツの秋、思索の秋、食欲の秋……「~の秋」という言葉はいろいろありますね。秋は人間の活動に最も適した季節だからでしょうか。その中で、今回は「食欲の秋」に絡めて、食事を話題に取り上げてみました。

 ちなみに、なぜ「食欲の秋」という言葉があるのか、考えてみたことはおありでしょうか。考えなくてもすぐにお気づきかもしれません。「実りの秋」という言葉もあるように、秋は様々な農作物や木の実などが豊富に手に入る季節です。また、人間にとって最も心地よい気温は18度前後だと言われますが、同じ気温でも春から初夏にかけての季節は蒸しやすく、秋の空気のほうが肌に心地よいものです。勢い食欲も増そうというものでしょう。

 話が脇道に逸れてしまいそうですので、本題に入りましょう。子どもにとっての食事は、健康面だけでなく、体づくりという観点からも見逃せません。また、それは頭脳形成とも密接につながっていますから、食事をバランスよいものにすることは、子どもの成長にとって不可欠と言えるほど重要なことだと言えるでしょう。保護者におかれても、わが子の食生活や栄養摂取の状態を定期的に振り返ってみることをお勧めしたいですね。

このブログをお読みくださっているかたの多くは、中学受験生の保護者であろうと思います。そこで今回は、子どもの体づくり、特に子どもの脳の発達という観点から、食事と栄養摂取のありかたについてみなさんと共に考えてみたいと思います。

 言うまでもありませんが、健全な体の発育や脳機能の活性化を促すためには、必要な栄養素が過不足なく供給されなければなりません。たんぱく質、脂質、糖類は、三大栄養素と言われますが、これらをバランスよく摂取することが基本となります。

 三つの栄養素について保護者の方々、特におかあさんがたにご説明するのは、「釈迦に説法」のようなものですが、念のために確認させていただきます。

 たんぱく質は、ペプチドやアミノ酸などに分解され、骨や筋肉など体の組成を支える働きをします。また、脳の神経細胞の信号伝達を支える物質やホルモンなどのもとになります。脂質は、体を動かす際のエネルギー生産の基礎物質となり、体内に豊富に蓄積されています。糖類(炭水化物)はブドウ糖に加工されて体内の細胞に供給され、エネルギー源として利用されます。脂質と糖質はエネルギー源として不可欠であるという点では同じですが、前者は体内に備蓄して活用されるという点で、また後者は即効性が求められる領域でのエネルギー源となる点で、それぞれに適用範囲が異なっています。また、ブドウ糖は脳にとっての唯一の活動エネルギーとなるものです。これらの栄養素を絶えずきちんと摂取することは、子どもの健康な体づくりや学習活動にとって欠かせないものだということがわかりますね。

 では、毎日どのような食べ物を摂取すると、三つの主要な栄養素が賄えるのでしょうか。専門家の先生によると、大まかには次のような食物を摂取するのが基本のようです。

 無論、三大栄養素のほかにも摂取すべき栄養素として、ビタミン・ミネラル類など、他にも重要なものがあります。日常の食事を通して、これらの摂取状況が望ましいものになっているかをどうかを、振り返ってみてはいかがでしょうか。

 今回の話題に即した側面から、もう一つ強調しておきたいことがあります。それは、勉学に勤しむ子どもたちにとって欠かせない、脳の働きを活性化するための食事です。今回の記事を書くにあたり、参考にさせていただいたのは、脳科学の専門家である福岡教育大学名誉教授の永江誠司先生の著書ですが、先生は次のように述べておられます。

 子どもの脳の働きをイキイキとさせるため、特に大切にしたい食物は魚と野菜です。時々大量にではなく、毎日適量に食べることが大切です。そのために、例えば一日の食事にご飯と味噌汁のほか、魚一品、野菜二鉢、果物一個を基本に考え、さらに肉類、豆類、イモ類、乳製品などの食材を適度に加えてとらせることを心がけるとよいでしょう。

 近年話題にされることが多いので、よくご存知のことと思いますが、食事が偏ると、すぐキレやすい子どもになったり、拒食症や過食症に苛まれる子どもになったりしがちです。また、朝食を抜くと、頭の働きに欠かせないブドウ糖が午前中に枯渇してしまい、授業を受けても身にならない事態を招いてしまいます。これについてはすでにお伝えしたことがありますが、脳の栄養源となるブドウ糖は、1回の食事で12時間分しか賄えません。夕食を夜7時に摂ったとすると、その食事を通してつくられるブドウ糖は、登校時にはすでに枯渇気味になってしまいます。毎朝規則正しく朝食を食べることの大切さが、上記のことでもわかりますね。

 ところで、「夜に寝ているとき、ブドウ糖は消費されないのではないか」と思われたかたがおありでしょうか。脳は眠っているときにも活動しているので、ブドウ糖を同じように消費しています。ですから、昼夜関係なく脳は栄養を必要としているのです。「朝食抜きでも、うちの子は困っていない」とおっしゃるかたはありませんか? それは、他の臓器の備蓄分を転用することでしのいでいるため、見かけ上問題がないように見えるだけで、脳が健全に働いているわけではありません。ブドウ糖の欠乏状況にあるのは間違いありませんし、他の臓器にも負担を及ぼしますから、健康上も好ましくありません。

 最後に。近年は、家族そろって楽しい会話を交わしながらゆっくり食事をすることが少なくなりつつあると言われます。そのことは、子どもの成長にとって様々なマイナス効果をもたらしています。同じ家族なのに、個々がバラバラに食事を摂ると、食事は食べ物を口に放りこむだけの作業と化してしまいます。子どもにとって、家族一緒の食事は、コミュニケーションの方法を学ぶ場でもありますし、家族の絆を深めたり、親の愛情を感じ取ったりする重要な場でもあります。一人で食事を摂る傾向が強い子どもは、家の外でも一人で食べることを志向するようになると言われます。このことは、子どもの健全な成長にとっても好ましいことではありません。

 今回は、子どもの健全な成長や脳の活動にとって好ましい食事のありかたを話題に取り上げてみました。多少なりとも参考にしていただければ嬉しいです。

Posted in アドバイス, 子育てについて, 家庭での教育

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