子どもの読書活動の活性化に向けて その1
11月 5th, 2018
秋も深まってまいりました。今回は、“読書の秋”に因み、「子どもと読書」をテーマに書いてみようと思います。
みなさんは、「子どもと読書」と言われて何か頭に思い浮かぶことはありませんか? 筆者が真っ先に連想したのは「読書活動の減少(衰退)」でした。携帯ゲームやスマートフォンなどの普及(あるいは、テレビ視聴や塾やスポーツ・習い事なども原因ではないかと思いました)で、子どもは読書から離れつつあるのではないかと想像したのです。確かに、中学・高校生においてはかなり当たっていたのですが、こと小学生に関しては筆者の予想とは異なっていました。
これは、小学校の「朝の読書活動」推進の努力が実を結びつつあることや、教科書の素材文に登場した本と、学校図書館の蔵書との連動性を高める努力などの成果であるといったようなことが、メディアから入手した情報にありました。
子どもの読書活動について残念に思うのは、高校生の月あたり平均読書数が僅か1.5冊(2017年調査)であり、約半数の高校生は全く読書をしないというデータを目にしたことです。下記は、子どもの「不読率」について調査した結果ですが、これをご覧になっても中学高校生の読書離れが進んでいることが伺えます。
中学高校生がなぜ読書をしないのかについては、次の資料である程度おわかりいただけるでしょう。
一番多い理由は「本を読まなくても不便はない」というものですが、これは「なぜ本を読むのか」の発想が実益の享受に基づいていることの裏返しであり、筆者はとても残念に思いました。本を読むのは、「面白い」から、「感動を得られる」から、「読後感の気持ちのよさがある」からというのが、筆者の考える読書の主要な理由です。割合としては多くないものの、「学校の授業で読書は十分」「学校の成績に関係ない」という理由が一定数あるのも、筆者には本を読まないことの理由として思ってもみなかったことなので驚きました。
「読みたい本がない、何を読んだらよいのかわからない」という理由が2番目に多いことにも正直がっかりしました。実は、小学生で読書をしない子どもも、「読みたい本がなかったから」という理由がいちばん多かったことを示す資料があります。小学生なら、大人のサポートで対策がある程度できるでしょうが、中学高校生ともなると、大人が働きかける余地は少ないと言わざるを得ません。どうしたものでしょうか。
勉強や部活、スポーツ、趣味、友人との付き合いなどは、中学高校生が読書の時間を確保できない理由として筆者にも納得できるものですが、「そうした忙しい生活の中で、時間をやりくりしてもしたいのが読書であってほしいな」とも思いました。
次の資料は、読書量とコミュニケーションスキルや礼儀作法のスキルの相関関係を調査した結果を示すものです。
これをご覧になると、読書がもたらせてくれる恩恵は、子どもが想像するよりも、否、われわれ大人が想像するよりもずっと幅広く深いものだということに気づかされます。本の中での人物のやり取りや内面描写を読み取りながら、子どもは登場人物と一緒に仮の体験をし、それを自分の内面に取り入れているのでしょう。本を読んでいるとき、子どもは無論のこと大人にも「これは嘘ごとなんだから」という意識はありません。感情移入をしながら自らも体験し、共感したり反発したりしながら自らの知識や考えとして取り込んでいるのですね。
ついでに申しあげると、読書量はほぼ学力とも比例する(ただし、極端に多いのはマイナスに作用)という調査結果も目にしたことがあります。
今回は、子どもの読書の実態と、読書のもたらす恩恵などについてご紹介しました。次回は、子どもの内面世界の広がりや深まりと年齢との関係に着目した資料をもとに、子どもと読書について考えてみようと思います。