親子の強い信頼関係に基づく受験生活を!
1月 28th, 2019
先週のはじめに、広島県西部地区の私学入試の解禁日が訪れると、たちまち連日主要私学の入試が行われ、昨日(1月27日)の広島学院中学校、広島修道大学ひろしま協創中学校、広島大学附属東雲中学校の入試をもってほとんどの中学校の入試が終了しました(2月3日に、崇徳中学校の後期入試が予定されています)。まさに瞬く間のできごとのようでした。
受験生にとっては過酷とも思える日程ではありましたが、長期間にわたってバラバラに入試があるよりは、一気に入試を終えたほうが受験生にとってはよいかもしれません。まだ体力的にも精神的にも発達途上の子どもたちの受験ですから、全ての入試日程を終えるまで心身のコンディションをよい状態で保ち続けるのは至難の業です。また、小学校生活も大詰めを迎えますが、入試があるとどうしても学校生活はおざなりになりがちです。ともあれ、受験生のみなさんがベストを尽くして入試を終えられたことをお祈りするばかりです。
さて、今回はこれから受験生活を始めるご家庭の保護者に向けて、親のサポートのありかたに関連する情報をお伝えしようと思います。大まかな内容は表題の通りです。受験生活がいざ始まると、親はどうしても勉強の成果を形(得点や順位など)で求める気持ちが強くなります。その結果、子どもの精神的な力になってやることを失念し、わが子がどのような心理状況で勉強に取り組んでいるのかに思いを馳せることなく、「もっとがんばれ!」と追い込んでしまうこともあります。こういう受験生活が続くと、子どもは精神的に不安定になったり、自信を失ったりするおそれが生じますし、そればかりかもっと重要な親子の信頼関係にひびが入るような事態にもなりかねません。
逆に、親が受験生活のプロセスで適切な応援やフォローをしていけば、受験勉強が快適にはかどるだけでなく、子どもは親に対する尊敬や信頼の気持ちをより強くもつようになります。今回は、たまたま目にしたおもしろい(と筆者が個人的に思った)資料がありますので、まずはそれを見ていただこうと思います。その資料とは、東京大学の学生が、悩みをもったときに誰に相談するかというものです。
上記の資料は、2016年に東京大学が行った学生生活の実態調査の結果をまとめたものですが、優秀として知られる東大の学生にとっても一番の相談相手は両親であるという結果が出ています。
「よく相談する」と「ときどき相談する」を合わせた割合も両親がいちばん高くなっていますし、「たまに相談する」を合わせた割合においても両親がいちばん高くなっています。さらには、「全く相談しない」という項目においては両親の割合がいちばん低く、わずか22~23%に過ぎません。
両親の次に相談相手として頼りになるのは、大学内外の友人や先輩であるのも頷けますね。ちなみに、前年に実施された同趣旨の調査では恋人が両親の次にランクされていました(ただし、「全く相談しない」という回答の割合も高いのが目につきました)。これも納得できる結果だと思います。結局、自分にとって身近で強い信関係のある人物が相談相手になるということなのでしょう。それを裏づけるのが、大学の相談コーナーや教職員は、相談相手としてほとんど機能していません。日本でいちばん偏差値の高い大学の学生でさえ、いちばん相談相手として頼りにしているのは両親であり、また心を通じ合える身近な人物なのですね(きょうだいは例外のようですが)。
このことは、様々な子育て上の示唆を与えてくれるのではないでしょうか。非常に高いレベルの学歴を獲得するプロセスにおいても、親子間の信頼関係は大変重要なもので、そこでの親のサポートのありかたが入試の結果ばかりか、先々の親子関係にも多大な影響を及ぼすと言えるのではないでしょうか。東京大学への進学は、子どもがたまたま優秀だったから実現したというよりは、親の適切な子育てやサポートの成果なのだと受け止めることができるでしょう。日本で最も優秀とされる大学の学生でも、いちばん信頼する存在は親であるという調査結果から、まだまだいろいろなことが学べるように思います。
さて、本題に入りましょう。中学受験生の親に求められるサポート。それは子どもが意欲と前向きさを背景とした受験勉強を実現させるような応援です。親には忍耐と愛情深い見守りが欠かせません。それが受験勉強での成果につながり、入試でよい結果をもたらすだけでなく、先々まで変わらぬ親への信頼の気持ちを育てるのです。弊社は、親の見守りと応援の核に、「自立に向けた支援」ということを位置づけています。以下は、弊社が受験生の保護者にお願いしたい事柄を簡単にまとめたものです。
1.大事なことは子どもに決めさせる
子どもの学習を能動的で自立したものにするには、子どもの側に「自分でやろう!」という意欲や、「自分でできる!」という自信が必要です。
そこで大切にしたいのは、何でも親が決め、子どもを命令や指示で動かさないこと。毎日の学習計画を立てるにあたっても、親は相談役に徹し、だいじな部分は子どもに決めさせることが大切です。
「自分で決めた!」――この気持ちが子どもの背中を押し、積極的学習態度や計画の実行力を引き出します。
2.子どものすることを信頼する
「うちの子は、放っておくとすぐ遊んでしまいます。だから、机に縛り付けてでもやらせないとダメなんです」と、おっしゃる保護者がおられます。これではいつまで経っても、子どもの自律的学習姿勢は育ちません。
親は、わが子だからこそ信じてやる必要があるのではないでしょうか。無論、子どものすること全てを信頼できるようになるには相応のステップが必要ですし、時間もかかります。日常のちょっとしたことから、少しずつわが子を信頼してやることから始めてはどうでしょうか。きっとお子さんの目は輝いてくることでしょう。
3.一歩ずつの進歩を忍耐強く引き出す
子どもが最後まで意欲を失わず、受験生活をまっとうできるかどうかのポイントの一つに、親の評価軸をどこにおくかがあります。
親が成績主義で臨むと子どもは辛いものです。少々成績が上がっても、常に親には上を期待されますから、がんばりのエネルギーが得られません。
一方、親の評価軸が「前より子どもが少しでも進歩したかどうか」におかれていたならどうでしょう。子どもはプレッシャーから解放され、伸び伸びと学べます。親の影響力が強い中学入試では、こうした配慮も欠かせません。
4.生活習慣の確立が自立への第一歩
朝の起床から夜の就寝まで、1日の生活習慣が自立しているかどうかは、子どもの受験生活に多大な影響を及ぼします。毎日の生活に規則性やリズムがあると、勉強も一段とはかどります。早寝早起きを励行し、自分のことは自分でやれる態勢を今のうちに築いておきたいものです。
また、生活習慣が自立していることは、子どもの中学進学後の人生に多大な恩恵をもたらします。自堕落な生活に陥ると、それが習い性になってしまいます。受験生活のスタートにあたっては、「生活も勉強も自立する」ということを意識し、サポートしてあげてください。この点を押さえた受験に失敗はありませんし、受験は子どもの大いなる成長の場になることでしょう。
子どもを自立させ、自ら学ぶ力をもった人間に育てる。そのために親が戒めるべきことがあります。それは、過保護と過干渉。親には、子どものすることが何もかも未熟で頼りなく見えるものです。そこでつい先に先に手を回し、手伝ったり、指示を出したりしがちです。
しかしながら、それは子どもの自立の芽を一つひとつ摘み取る行為に他なりません。ある教育学者の書物に、「子どもに親が手を貸せば、その分だけ確実に子どもの自立を遅らせることになる」という著述がありますが、まさにその通りではないでしょうか。
だいぶ文字数が超過してしまいました。今回の話題は次週以降に引き継ぎ、「親がストレスを感じずにわが子の受験生活をサポートするには、どんなことを心がけるとよいか」について提案させていただこうと思います。また、前出の東京大学の資料から、「東京大学の学生はどんなことについて悩みを抱えているか」についての調査結果もご紹介してみようと思います。よろしければ、引き続きお読みください。