最高峰の大学に進学する子どもって?

2月 20th, 2019

 中学入試が終わってひと段落しましたが、3月早々には2019年度の講座が開講します。「子どもの時間は大人よりもゆっくりと流れる」と言われますが、中学受験生の子どもたちにはその言は当てはまりません。特に新6年生にとって、残された準備期間は1年ありません。これから入試本番までの日々を悔いの残らぬよう大切に過ごしていただきたいですね。

 以前、「東京大学の学生にとって、悩みごとの相談相手はどんな人か」を調査した結果(東京大学による)をご紹介したことがあります。その資料は、東京大学の学生の生活の実態について様々な観点から調査したもので、そのなかに筆者が興味をもった事柄がありましたのでちょっとご紹介してみようと思います。

 まず、日本で最高峰とされる大学に進学している学生は、どのような高校を経て入学しているのかに関する資料をご紹介してみましょう。以下は、東京大学に進学している学生の出身校と現役入学の割合を調査したものです。

 毎年国立大学の入試が終わると、東京大学をはじめとする難関国立大学の高校別合格ランキングが週刊誌などに掲載されているので、どんな高校から進学しているのかについては多くのかたがご存知のことと思います。

 今回ご紹介する資料は高校別のランキングではなく、学校の運営形態ごとに分類したものです。それによると、東京大学に入学している学生の出身校としては、私立の6か年一貫校がいちばん多く、全体の半分強を占めていました。私立の6か年一貫進学校は、東京とその周辺部が圧倒的に多く、後は関西と地方の有力都市に少しあるぐらいです。この資料を拝見すると、いかに優秀な受験生が一極に集中しているか(人口動態から、当然と言えば当然かもしれませんが)を痛感させられました。この結果は、みなさんの予想と違っていたでしょうか。

 ただし、近年は公立の一貫校が併設型・中等教育学校を問わず増えており、人気も高まっています。新設されている公立一貫校も、やはり首都圏に多いものの、公立一貫校は私立一貫校と違って全国に拡散しつつあります。したがって、今後公立学校の比率が高まっていくかもしれません。また、近年は浪人して大学に進学する学生は昔ほどに多くありません。最高峰の大学ですら、現役率はかなり高いですね。近年よく耳にするのは、「無理して浪人してまで難関大学にこだわる受験生は少なくなっている」という指摘ですが、その通りなのかもしれません。

 つぎに、東京大学の学生の出身地方(都道府県)の比率を見てみましょう。

 日本で最高峰の大学ですから、出身者はさすがに全国に及びます。ですが、やはり人口の密集地にある大学ゆえ、圧倒的に東京や首都圏出身者が多いようです。次は「なぜ東京大学を志望したのか」に関する調査結果です。

 志望理由を点検してみると、やはり「日本最高峰の大学である」ということが問答無用の志望動機につながっているように感じられます。要するに、名声を誇り、潤沢な研究予算をもち、教授陣が優秀で、多くの卒業生が社会的に地位の高い職業に就いている大学ですから、優秀なお子さんが集まるのは当然のことと言えるでしょう。やはり東京大学は特別な存在なのですね。

 地方都市である広島の状況はどうでしょうか。以前、広島最難関の私立男子一貫校の先生に、生徒さんに進学先の候補として人気の高い大学の傾向について伺ったことがあります。それによると、その私学の生徒さんが志望する大学の傾向は次のようなものでした。

●最も人気が高い大学(学部)
A.東京大学
B.京都大学
C.広島大学医学部

●その次に人気の高い大学(学部)
D.他の国公立大学医学部
E.旧帝国大学レベルの国立大学

 筆者の印象では、一昔前ならAがBを上回っていたように思いますが、最近は両者がだいたい同じくらいの割合だそうです。理由については、「(関東は)地震などが心配」とか「(進路確保に関する)安全志向」などが少し頭をかすめたものの、具体的で説得力のある理由は特には思い当たりません。また、地元の国立大学医学部への志向は以前から強く、それが学力的に難しい場合はDを選択するケースが多いようです。よって、A~Cがこの私学で最も人気の高い進路であり、その次がDやEだと思われます。

 ただし、前述の傾向は地域最難関私学ならではのものです。多くのご家庭では中学受験の準備段階ではまだ将来についての明確なビジョンを親子で共有したり、具体的な進路(大学や、学部など)の目標を決めていたりするには至っておられないと思います。まして、就きたい(就かせたい)職業が具体的に存在するご家庭はごく少数ではないでしょうか。そう言ったことは、中学、高校、大学へと進んでいく過程で、しだいに候補が決まったり、範囲が絞られたりすればよいのですから。

 というのも、中学校入学時には大学進学についてさしたるビジョンをもっていなかったお子さんでも、学力を順調に伸ばしていく過程でどんどん視野に入れられる目標レベルが高くなり、結果として最高レベルの大学への進学が決まったという例が、筆者が知るだけでも相当数あります。また、ある特定の学問領域に特別興味があり、そこからめざす進路が決まり、それが励みになってすばらしい成長をとげるお子さんも少なくありません。

 こういうお子さんは、目先の中学受験で無理をしておらず、勉強を楽しむ余裕があったお子さんに多いように思います。ですから、中学受験をする前の段階で大切なことは、「“伸びしろ”を担保しながら、いかにして中学入試で求められる学力ラインに到達するか」だと筆者は思っています。たとえ最難関私学への進学が希望であっても、無理に無理を重ねた勉強では肝心の中学高校生活で失速してしまう恐れが多分にあります。

 保護者におかれては、お子さんが自分のやりたいこと、学びたいことに出合い、自分に合った進路を見出し、幸福な人生を歩んでいく流れを築けるよう、上手にバックアアップしてあげていただきたいですね。

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