受験生活の安定軌道に向けて、親に求められる視点
3月 18th, 2019
2019年度の前期講座(3~7月)が開講して2週間あまりが経過しました。先週末には第1回のマナビーテストが実施されましたが、お子さんは「がんばった!」という充実感や手応えを得ておられるでしょうか。
新6年部生はともかく、新4・5年部生はまだ受験生としての自覚などほとんどないのが現実でしょう。それに、まだ開講したばかりですから、自分の勉強がこれでよいのかどうかについて考えるゆとりもなくこの2週間を過ごされたのではないかと思います。ですから、テストの点数や成績に振り回されるのではなく、「わが子はやるべきことをわかっているか」「わが子はやるべきことをやれているか」という観点からお子さんを見守り、サポートしてあげてください。
このことに関連し、今のうちに保護者の方々にご配慮いただきたいことがあります。開講当初に作成をお願いした「学習計画表」は、まとまりのあるものになったでしょうか。また、授業を終えた後、お子さんは何をしたらよいかを理解し、取り組んでおられるでしょうか。2週間の学習のまとめとして実施されるマナビーテストでは、テキストの当該単元の内容や、副教材の内容から概ね出題されます。そのことをお子さんは理解し、テスト準備に向けてがんばっておられるでしょうか。
開講後の1カ月余りの期間を、弊社では「受験生活のウォームアップ期」と位置づけ、受験勉強を成り立たせるうえで基本となる事柄を定着させるよう指導しています。この期間を起点として前期(3月~7月)終了までに受験生活や受験勉強を一応の軌道に乗せることが当面の目標だと思ってください。ここをうまく乗り越えれば、毎回のテスト結果を見てはため息をつくような事態には至りません。
以上のことを踏まえ、今回は「1年間のスタート時だからこそ、親が配慮すべきことは何か」ということをテーマに書いてみようと思います。中学受験の主人公は子ども自身ではありますが、しつけや人間形成の途上にある小学生の受験ですから、保護者の関わりなくして実りある受験生活の実現はあり得ません。このことを是非心に留め、上手にお子さんをサポートしていただくようお願い申し上げます。
さて、職場などわれわれ大人の世界において、「この人はできるな」「あの人は、能力が高い」と思わせる人にはある種共通の特徴があることに気づかされます。たとえば、「見通しをもって行動している」とか、「判断が正確で速い」「時間管理や行動の切り替えに長けている」「人と上手に協調しながら仕事ができる」「引き受けたことを、最後まで責任をもってやり遂げることができる」などです。こうしたファクターをいくつも備えている人が、“有能”とみなされる人だと言ってよいでしょう。
こうした“有能”な人の特徴はいつごろどうやって形成されるのでしょうか。少なくとも言えるのは、人間としての主要な枠組みは児童期までに形成されるということであり、そこには親のしつけや家庭環境が少なからず影響を及ぼしているということです。中学受験をめざして勉強する子どもの様子を見ていると、すでに先々の人生の歩みを予感させるような特徴がいくつも見出せます。たとえば、「計画に基づいて勉強している」とか、「今日、何をすべきかがわかっている」「勉強する時間になったら、遊びごとを切り上げてすぐに勉強に移れる」、「分からないところを、先生や友達に相談したり質問したりして、上手に解決している」「今日は、『どうしてもここまではやり切る』という、こだわりや実行力がある」等々……。受験生活で成果をあげるために努力を積み重ねていくプロセスは、やがて大人になってから求められる様々な能力の基盤形成としても、大いに役立つことでしょう。
中学受験を経験した人の長所の一つは、行動が洗練されているというということです。これは、2年、3年にわたって生活の中にかなりハードな受験勉強を組み入れ、継続的に取り組んできたことの賜物に他なりません。また、そういった受験生活をうまく築けたからこそ志望校への合格が果たせますし、上手に受験生活を乗り切ったことへのご褒美として、行動の洗練性などが身につくのですね。
一つ、気をつけていただきたいことがあります。受験勉強で不可欠なもののひとつに、「テストを繰り返しながらデータをとり、それを参考にして勉強法を整えていく」ということがあります。テスト成績は、受験生の子どもたち一人ひとりの勉強の様子をデータ化したものであり、そのデータを見てどこに問題があるのかを認識し、修正していくことの繰り返しが受験生活なのです。ですから、テストデータは、自分の学習状態を映し出す鏡のようなものなのです。しかしながら、そのことを忘れてしまい、受験生本人も、その保護者も「能力を突きつけられた」と受け止めてしまうケースも少なくありません。そうなると、成績に振り回されながら点数に悩み、点数に追い回される辛い受検生活に陥りかねません。テストの成績データは、どんな勉強の結果もたらされたものかの振り返りと反省に生かしてこそ意味をもつものなんですね。おとうさんおかあさんにおかれては、お子さんが残念な成績をとって帰ったときには、「どんな勉強の結果か」「問題はどこにあったのか」を冷静に振り返り、お子さんが「次は絶対に取り返すぞ!」という意気込みで勉強に励むよう促してあげてください。
今の段階で保護者にお願いしたいフォローは、次のようなことがらです。
無論、上記のことがらは学習塾の指導の一環として私たちにも大きな責任があります。ですが、「自立勉強」をめざす弊社の受験勉強においては、家庭での学習の取り組みが成果に大きな影響を及ぼします。ご家庭でお子さんと共に生活しておられる保護者の協力なしには実現できません。この点をご理解いただき、お子さんの勉強の自立に向けた応援をよろしくお願い申し上げます。
「どうしてこんな成績になるのか」と、首をかしげるような成績をとるお子さんがいますが、これは能力のせいではありません。何を学ぶべきかを理解し、手際よく実行していく流れを築き損ねたからです。やるべきことをやるのが当たり前になる。ひいては、やるべきことをやらずにはいられない、やるべきことをやらない自分が許せない、といった段階に漕ぎつけたなら、学力は当たり前のように伸びていくものです。そればかりか、この先の人生において求められる「自立した学び」の姿勢が築かれるのですから、お子さんの前途は洋々たるものになることでしょう。
ほとんどの子どもたちの学びの現状は、まだまだ理想とは程遠い状態にあるのが普通ですが、大人がうまくフォローし導いていけば、1年2年のうちにすばらしい変化が生じるものです。保護者の方々にはご理解とご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。