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学びに向き合う‟姿勢”と‟気持ち”を大切に!

月曜日, 8月 26th, 2019

 夏休みが終わり、学校が再開しました。これに合わせ、私たち家庭学習研究社の後期講座も開講となります。

 学校が始まる、塾の勉強も始まる。こうしたことで、お子さんの様子に何らかの変化は見られませんか?学校や塾の再開を楽しみにされるようなら心配ないのですが、なかには嫌がったり拒否反応を示したりするお子さんもおられるかもしれません。

 というのも、夏休み期間中に塾への通学はある程度あるものの、普段と比べると子どもたちは自由に使える時間をたくさん手にします。やりたいことを気の向くままやれる夏休みの生活に浸かってしまうと、時間や行動に制約が多い学校や塾での時間を苦痛に感じるお子さんも出てきます。特に、勉強がもともと好きでなかったお子さんが、夏休みを自堕落に過ごす生活に陥ってしまうと、こういった状況になりがちです。おたくのお子さんはどんな様子でしょうか。

 もしも、夏休み明けからの塾通いや受験勉強に対して、お子さんが「気乗りしない」「嫌だ」「勉強なんてしたくない」といったようなネガティブな気持ちを抱いているように感じられたなら、このような心理状態からお子さんを解放してやる必要があるでしょう。というのも、受験生はまだ人間形成途上の小学生です。「志望校合格のために、自分のできることを精いっぱいやろう」というところまで気持ちが定まらず、「親が言うからしかたなくやる」といった受け身の勉強を、ダラダラと続けることになりかねません。それはお子さんの将来にとって決して望ましいことではありません。

 少子化が進行した今日は、合格を巡る競争も随分緩和されています。しかも、私立一貫校や公立一貫校の受け皿も増えています。一部の難関校は例外としても、中途半端な受験勉強でも志望校の一つに合格できる可能性は十分にあります。しかし、学びに向かう姿勢も気持ちもできていない勉強で受かって、果たして中学進学後はだいじょうぶなのでしょうか。少なくとも言えるのは、中学、高校、大学、社会への参入まで目を向けると、相当な苦労を強いられることが予想されます。

 いっぽう、人間形成途上の段階にある子どもの受験であるということを踏まえ、保護者がわが子の受験準備のプロセスを上手に応援されたなら、お子さんはこれから待ち受ける先の見えない高度化社会を生き抜くために欠かせない重要な資質を手にすることができるでしょう。そういうと難しい話になりそうですが、簡単に申しあげると、「叱ってやらせる受験生活」から抜け出し、「子どもなりに工夫しながら前向きに取り組む受験勉強」へとシフトしていくことが、お子さんの将来につながるということです。

 親はわが子の勉強となると、どうしても黙って見ていられず、いろいろと命令や口出しをしがちです。しかしながら、それを続けると、いつまでも子どもの勉強は前向きになりません。小学生の勉強は欠点が多いものです。しかし、それを見かねてこまごまとコントロールするよりも、ときどき一緒に考えてやり、解きかたの糸口を見つけたときの喜びや、推論することの楽しさを味わう経験をさせることのほうが、遥かに子どもの学びに有意義な変化を引き出すことになります。

 「わが子が勉強に前向きでない」という悩みをもっておられるなら、今からでも遅くありません。お子さんに勉強の楽しさを味わわせることから、受験に向かう態勢の巻き直しを図ることをお勧めしたいですね。それをきっかけに、子どもの人生の歩みが大きく変わることすらあるからです。以下の文章は、以前もご紹介したことがありますが、望ましい勉強のありかたを教えてくれると思います。ある脳科学者の文献から引用しました。

 

 一般に、人間が頭を働かせているときの主役は、確固たる論理や客観的な知識ではないらしい。最近の脳科学によると、脳の複雑な思考や情報処理を支えているのは、主観的で気まぐれな情動の心だという。脳の働きの部位で言うなら、知性の座たる「前頭前野」ではなく、最も古い脳部位、すなわち「脳幹部」(大脳辺縁系を含む)ということになる。大脳辺縁系や視床、視床下部を含む古い脳は、外部情報と内部情報の接点であり、「好きか嫌いか」「愉快か不愉快か」などの価値判断と、喜怒哀楽のような情動をつかさどる。

 なぜ情動の脳が「主」で、理論的な新皮質が「従」になるのかといえば、発生の順にしたがって生命の維持にとってより大切なほうが主導権を握るようにできているからである。これは、脳の構造がサルからヒトへ進化を始めたときから不変ということである。

 

 この文章から導き出せる重要な真理があります。勉強を楽しい(快)と受け止めると、それが優秀な頭脳の形成につながるということです。

 これを、私たち学習塾の学習指導に絡めて考えてみましょう。家庭学習研究社は、「学ぶ楽しさを体感しながらの受験勉強」を理想としています。無論、受験勉強は楽しいばかりではありませんが、中学受験の勉強には発見の喜びや知識を得ることの楽しさを味わえる要素がたくさんあります。「学習塾は、合格を得るために通うところだ」と思っておられるかたには奇異に感じられるかもしれませんが、学ぶことから得られる「楽しさ」は、人間の知的成長にとって欠かせないものなのです。

 上記引用文によると、楽しさ=快であり、その快なる精神的な働きは、先ほどの「古い脳」の支配する感情によってもたらされます。もしも、学ぶことが快の感情へとつながったなら、人間(子ども)はより積極的に学びに向き合うようになるでしょう。その繰り返し、積み重ねが脳(前頭前野)の鍛錬につながり、やがては学力を高いレベルへと引き上げてくのです。

 最も古い脳、すなわち「感情脳」は、最も新しい脳である「前頭前野」(知的活動のコントロールタワー)と密接なつながりをもっています。学ぶ=快の感情が、人間を勉強へと向かわせ、その繰り返しを通じて鍛えられた前頭前野が、やがては「知性の座」としての本領を発揮し、古い脳の働き(感情)をより適切な方向へと制御するようになるのです。たとえば、「受験勉強は辛い面もあるけれど、できたときにはものすごくうれしい。だからもっとがんばろう!」というふうに、感情のもつネガティブな側面の働きを抑え、より建設的な方向に行動を向かわせるのですね。

 こうした営みを子ども時代にたっぷりと経験したなら、前頭前野は健全に発達し、学力の豊かな人間になれるだけでなく、感情を知性的にコントロールできる人間に成長できるのではないでしょうか。こうした好循環の流れをつくるうえで、小学生時代の学習は大切な意味をもっているのです。時間も手間もかかる受験勉強は、なおさら大きな効果を引き出してくれることでしょう。

 少々イヤなこと、気の進まないことでも、課題解決の糸口を見つけたときの喜びや、やり遂げた後に得られる達成感のほうをよしとし、少々辛くてもがんばろうとする。――このような姿勢こそ、社会の荒波を乗り越えるために欠かせない資質です。そうなるための出発点は、「勉強の楽しさを知る」ことにあるのですね。今から、お子さんをこうした観点からサポートし、応援してあげていただきたいですね。

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