学院と清心の先生をお招きしたイベント 実施報告 2
12月 2nd, 2019
前回に引き続き、11月15日(金)に実施したイベント、「学院と清心 素顔の魅力がここに!」の内容をご紹介します。
本ブログはいつも文字数が多いのですが、今回のような催しの報告文を書くと一層長くなりがちです。「こんなに長いと読む人は少ないだろう」と思ったのですが、いざ掲載してみるといつもより多くの閲覧があり、「後半もがんばって書こう」という元気をいただきました。読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
今回は後半に割り当てていた二つのプログラムの内容をご紹介します。まずは、第3部の「学院・清心で過ごす6年間と未来」から。題目からおおよそプログラムの意図はご理解いただけると思います。広島学院とノートルダム清心で過ごす6年間の学校生活を通じて、生徒さんたちはどのように成長を遂げるのか。そして、この学校での成長は、未来に向けてどのような可能性をもたらすのだろうか。このことについて、先生がたに語っていただきました。以下は、広島学院の倉光先生、ノートルダム清心の神垣校長のお話を簡単にまとめたものです。
★広島学院
入学したての頃の生徒は、自分のことに一生懸命です。「〇〇君を成績で負かしたい」といった具合です。「社会のため他者のため」という意識は未熟で、価値観に大きな隔たりがあります。そこから6年間かけて子どもは成長し変わっていきます。
思春期が訪れ、母親を「クソババア!」と言って反発しながらも事なきを得て、高校生になった頃には随分大人になっている。そこが高校受験のない中高一貫校のよさの一つでしょうか。6年の間紆余曲折を繰り返しながら成長していくことができるんですね。
最近、「発達障害」という言葉が流布しています。酷い言葉です。この病名にショックを受け、親が心配するケースが多いです。アスペルガーなどの言葉を突然言われると親は動転します。こういう病気に当てはまるかどうかを確かめるチェックリストがありますが、学院生にも結構当てはまります。個性とみるか、病気とみるか、その判断は簡単ではありません。「キモイ」と言われて病気扱いされることと、「すばらしい才能をもっている」と賞賛されることとが紙一重だったりもします。
東京の有名私学の校長先生は、「男子校はオタクの楽園である」と述べておられます。学院生も自分たちのことを「変人の集まりだ」などと言って笑っていますが(筆者:優秀であるということは尖がっているという側面もあるんですね)、自分の好きなことや興味の対象にのめり込みながら、そうした活動を通じて自分の個性を伸ばしていけることが、男子校である広島学院のよさです。
広島学院には各学年にILプログラムという授業があります。そこでの学びのテーマは、「どうやって人の役に立つことができるか」です。たとえば、高2のILには沖縄を歩くプログラムがあります。沖縄の人たちが沖縄戦で追いつめられていったプロセスを、実際に自分たちで歩いて確かめていきます。過酷なプログラムですが、そこまでやって初めて戦争の凄さを実感することができます。途上国のことを調べる。すると、貧しくても明るくニコニコしている人々が大勢いることに驚きと不思議を感じます。その理由は何だろうと考えることで、人間についてより深く学ぶことができます。
以上は学院の6年間で学べることのごく一部ですが、こうした学びを通して己を知り他者に思いを致す人間へと成長していくことができます。そうして、自分の進むべき方向性を定めていってほしいですね。どこの大学かが6年間でめざす成果ではありません。
★ノートルダム清心
一般に女子は男子よりも個性の開花が早いものです。中1で女子校に入ると、まずは自己の確立ということが成長のテーマになります。入学時に、「なでしこノート」と呼ばれるスケジュール帳を配布します。日々の活動の様子を自分の手で書き記すことで、段々と自分というものが見えてくるんですね。
自己の確立にとって、友人や先輩との交流は大きな影響をもたらします。特に、クラブ活動や学校行事などで経験するお姉さん(清心では先輩のことをこう呼びます)との交流は、めざすべき自分のロールモデルになります。たとえば、学園祭の準備をする際に、運営にあたる先輩の様子を見て多くのことを学んでいきます。まだ子どもの中学生の段階で、大人のような高校生のお姉さんと交流できる。中高一貫校のよさはこういうところにもあるんですね。
今、清心では校舎を改装し図書館の設備を充実させています。1フロアが全て図書館として利用されます。より多くの生徒が自由に図書館を利用できる環境を用意することで、自分が興味をもてるものとの出合いが増えることを期待しています。
先ほど述べましたように、入学してからの当面の目標は自己の確立であり、まだ自分自身のことに意識が向いているのが普通です。しかし、勉学に勤しむ日々の積み重ね、友人やクラスメート、先輩との交流、キリストの教えについての学び、興味をもった書物などを通して少しずつ成長し、「~のために」という他者への思いや、自分の進むべき未来に向けた志を育ててほしいと願っています。女子のみの私学ですから、自分の素が出せる環境にあります。そのことも、一人ひとりが学問に打ち込んだり、人となりを磨いたりするうえで貢献していると思います。 ( 中 略 )
清心で過ごす6年間においては、「人の中に入り、人に仕える」という心もちを大切にし、そのなかで将来の方向性を見つけてほしいと願っています。
※お詫び:第3部においては、行事進行上の都合でしばらく退席をいたしました。神垣校長のお話の終盤を割愛しております。ご容赦ください。
第4部は、「学院・清心アラカルト」と題するプログラムを用意しました。広島学院と清心について、保護者がお知りになりたいのではないかと想像することを、弊社から先生がたに質問という形で投げかけ、その場で答えていただくという趣向のコーナーです。たくさんの質問を用意し、先生がたにテンポよく答えていただくことで、保護者に「知りたかったことがたくさん聞けた」と満足していただける、楽しい時間にしたいと考えて企画しました。
しかしながら、時間的なしわ寄せが最終プログラムにはつきものです。今回も開始の段階で予定していた時間の半分も残っておらず、質問はわずか2つしかできませんでした(誠に申し訳ありません)。それでも、先生がたは心のこもった回答をしてくださり、保護者も聞き入っておられました。
回答(学院・倉光先生) 一説によると、入試が終了して一週間後にもう一度入試をしたら、合格者の三分の一は入れ替わるそうです。入試とはそれだけ厳しいものです。保護者におかれては、そういうこともご理解いただき、受験を生かすも殺すも親の対応次第なのだということを肝に銘じていただきたいですね。結果が全てではなく、入試の経験を次にどう生かすかで人生は随分変わっていきます。子どもの心に傷が残らぬよう配慮することが何よりも大切です。
合格の掲示をしていた15年位前のことです(現在は、ネットで合否はわかります)。誰もいなくなった時間に掲示を見に来られた親子が目に入りました。先に掲示を見たお子さんが、おとうさんに両手でバツ印の信号を送っていました。残念な結果に終わったようでした。その後、思いがけない光景を目にしました。受験生の子どもとおとうさんが並んで、校舎のほうに向かって一礼して立ち去ったのです。こういう親子なら、受験の結果がどうであろうと心配要りません。きっと、また努力を続けてよい人生を歩んでいけるでしょう。
学院の入試で合否の決め手になるのは何かというと、第一は算数で、次に国語だと考えられます(配点も算国重視)。算数Ⅰは「すばしっこさ(頭の回転)」をみます。算数Ⅱは、「じっくり考えて解を引き出せる力」をみます。両方をバランスよく鍛えておきましょう。
なお、学院入学後、高2で文理選択をしますが、理系が130名、文系が50名ほどです。半々ぐらいが望ましいと思うのですが(筆者:先生からはおっしゃいませんが、医学部志向が強い学校なので、先々もあまり変わらないように思います。前回掲載したアンケートを参照ください)。
回答(学院・倉光先生) 学院の敵はスマホだと思っています。生活の乱れや授業で眠るなどの原因はほとんどがスマホです。合格のご褒美として渡したりすると、たちまち手放せなくなります。思春期になるとのめり込み、堪らずに取り上げようとすると、狂ったように反抗します。「入ったら遊べる」などのインセンティブを与えると、優秀な成績で入った子どももダメになってしまいます。入学式がゴールになった子どもは、後の指導が大変になります。
「塾辞めたら?」「受験なんてやめたら?」――こんなふうにおかあさんに言われたら、子どものやる気を喪失させてしまいます。先々もよい親子関係の下で伸び伸びと学ぶことができません。おかあさんの禁句は次の3つです。
・命令文…「しなさい!」
・疑問文…「勉強終わった?」
・付加疑問文…「勉強終わったよね?」
3つ目がなぜ禁句かというと、この言葉に皮肉が感じられるからです。子どもはちゃんと感づいてしまいます。「あなたならちゃんとやれるよ!」と、子どもを信じて励ましてあげてほしいですね。そうすれば中学校に入ってからも大丈夫です。
回答(清心・神垣校長) おとうさんおかあさんが、受験生活を送っている今を大切にしてほしいですね。ただ「勉強がんばって!」だけではなく、受験生活を送っている毎日も親子関係を通して子どもは様々なことを学んでいます。毎日の生活を大切にする親の姿勢は、子どもにとっては「親が大好き」につながります。それが中学生になって、新しい世界にとけこみ馴染みながら成長していくための糧になるのだと思います。おとうさんおかあさんにおかれては、「今、子どもを育てているときこそ、かけがえのない時間なのだ」ということを心に留めていただきたいです。
以上で、広島学院・ノートルダム清心の先生がたをお招きして開催したイベントの報告を終わります。簡単なメモをもとに書き起こしたので、聞き漏らしたことや、記憶があやふやだったり、理解不足だったりしたことが原因で、適切でない表現をしている箇所があるかもしれませんが、「誠意をもってご報告しよう」という趣旨に免じてお許しください。
なお、質問1での神垣校長の回答は省略させていただきましたが、「受験生活においては、勉強一辺倒に偏らず、“学習習慣”や“生活習慣”といった点も大切にしてほしい」と言われていたことを、ここで申し添えておきます。このことは、2つ目の質問の回答にもつながるでしょう。よい習慣こそ、新たな学習環境、より高度な学びの領域に適応し、努力を継続して成果をあげるうえで必須となるものだからです。
先週・今週の記事が、広島学院と清心を理解するうえで参考になったなら幸いです。最後になりますが、広島学院の倉光先生、ノートルダム清心の神垣校長、ありがとうございました。