これからの時代の中学受験のありかた その2
12月 20th, 2019
前回は、「子どもの望ましい成長に資する学習指導を実践する」という、弊社の指導の根本理念をお伝えしたところで終わりました。
「子どもの望ましい成長」というと、漠としたイメージしか湧かず、いささか具体性を欠いているかもしれません。健全な知的発達を促しながら受験対策が実現できるようサポートすることを意味しますが、弊社の内部では、「新たな知識を得ることに喜びを感じ、自ら学ぼうとする姿勢を携えた子どもたちを育成する」という表現をよく用いています。それが将来自分のなりたい職業に就き、有意義な人生を歩むうえでとても大きな作用を果たすと考えるからです。
上記の方針は、「自学自習」という言葉で括ってもよいでしょう。自学自習をなぜ重んじるかというと、「中学高校での6年間の学習生活を充実させるためには何が必要か」を思い浮かべていただくとわかり易いと思います。中学生になると、一人前の人間として扱われますから、何事も自分で考え、自分で判断し、自分で行動することが求められます。大人に依存した勉強で受かってもあとで苦労することになりがちです。中学校入学後に、突然自立した勉強ができるようになるということは期待できません。
また、中学高校課程を終えた後には大学受験があります。大学への受験にあたっては学部や学科(専攻)を絞り込まねばなりませんが、その際には単なるあこがれや思いつきではなく、ある程度自分の適性や希望する方向を検討し、その可能性を見通したうえで目標を設定する必要があります。そのためには、中学高校の6年間をただ漫然と過ごすのではなく、「自分はどういう人間か」「自分は何をしたいのか、どんな仕事に向いているのか」などについて考えたり、そのために必要な情報を自分で収集したりすることが求められます。これは当たり前のことです。それなのに、この当たり前のことができていないために、社会への参入にあたって躓く若者が後を絶ちません。それどころか、大学へ入学して初めて学問選択の誤りに気づき、後悔する(退学する)学生も少なくないと言います。
少し話が飛躍したかもしれません。そこで、「中学高校の6年間」に話題を戻そうと思います。中学高校時代の学びを充実させ、将来の進路選択に向けて選択肢を広げるには、どんな姿勢や能力が必要でしょうか。
細かい点をあげるときりがありませんが、ざっとあげると上記のようになります。なお、7について若干補足説明をしておきます。何事もすべてを自分でやり遂げることは難しいものです。自分でどうしてもうまくやれないことは、他者の力を借りて解決する。これも自立した人間の一要素だと言われています。
中学校では小学校とは比べ物にならないほど多くの刺激があり、新入生には一種のカルチャーショックが生じるものです。たとえば部活が始まり、友人関係も格段に広がっていきます。ふと気づくと、勉強がおざなりになっていることもあるでしょう。だからこそ、学びの土台がしっかりしているかどうか問われることになります。
というのも、私立の中高一貫校の多くは、主要教科の中学課程のカリキュラムを圧縮し、2年間で終了します。3年生になると高校課程へと進みますから、ぼんやりしていると学習の高度化について行けなくなってしまいます。当たり前のことですが、中学校課程の学習内容は、小学校課程の学習内容が発展したものであり、高校課程の学習内容は中学校課程の学習内容を発展させたものです。中学校課程の学習が疎かになると、基礎ができていないために高校課程の学習に支障を来してしまいます。
こうした状況を踏まえると、中学校進学にあたって欠かせない前提は何かということが見えてくると思います。それが「自学自習の姿勢」ではないでしょうか。ただし、難しいのはまだ心も体も成長途上の小学生の受験勉強ですから、中学生や高校生ほどの見識も自覚も期待できません。そこで弊社では、「小学生の自学自習を可能にするための学習システムと指導」を研究し、弊社の教室に通って受験勉強をする子どもたちの最大多数が一定の水準の成果をあげられるような学習指導の実践に努めています。
弊社の学習システムを簡単に図式で示すと次のようになります。
わかり易い図がつくれずもどかしいのですが、上図のように、弊社での受験対策は授業と家庭学習を交互に組み合わせた形式となっています。
小学生の家庭学習が成立するには、「テキストのどこをどうやればよいのか」がわかり易く工夫されている必要があります。そのためにテキストを自社制作しています。あまり難度の高い課題を詰め込むと、子どもの意欲や自信を奪いかねないので、難易度配列には細心の注意を払っています。
また、予習とは言っても、小学生にできるレベルにするため、テキストの導入部分を読んでくることを予習の原則としています。授業が終わったら、家庭でおさらいと発展的な問題への取り組みをします。
2週目の後半の授業(授業5)では、授業4までの学習のおさらいをします。そして、その後の家庭学習でさらに2週間学んできたことのおさらいをして週末のテストに臨みます。
授業と家庭学習、さらにはテストの繰り返しを通じて、子どもたちは少しずつ勉強の要領を身につけるとともに、毎日の学習を定着させていきます。そうして、最終的には決めた勉強をやらずにはいられないほどの、強固な学びの態勢を築いていくことをめざします。
講座の進行とともに、個々の得意不得意がわかってきます。また、子ども自身が「勉強に足りないものは何か」を理解するようになります。それにしたがって、苦手対策の勉強を家庭で自主的にやるようになったり、先生に質問してわからないところの埋め合わせをしたり、友達に教えてもらって疑問を解決したりするなど、勉強の推進にあたって効果のある方法を段々と幅広く身につけるようになっていきます。
どうでしょう。詳しく書けばきりがなくなるのですが、ここまでの説明と、先ほどお伝えした1~8の重要ポイントを照合してみてください。概ね意図をご理解いただけるのではないかと思います。
以上からもおわかりいただけるかと思いますが、中学受験をめざすことの価値は「志望校への合格」だけでなく、「将来に向けた“伸びしろ”を築ける」ということにあるのではないでしょうか。そこが高校受験や大学受験との大きな違いであろうと思います。成長途上の子どもが受験するのですから、将来の大成に向けた備えを兼ね合わせることもできるのです。そのことに着目した受験指導なら害はありません。
近年、「非認知能力」「GRIT(グリット)」などの言葉が教育・心理学系の書物にしばしば登場します。非認知能力とは、その言葉の通り認知できる能力(テスト学力やIQなど)に対して認知できない能力を指します。たとえば、忍耐力、継続力、実行力、リーダーシップ、他者を思いやる能力、などです。「グリット」は日本語で「やり抜く力」などと言われます。これも非認知能力の一要素でしょう。どんな困難な状況にもへこたれることなくものごとをやり抜いて行ける力を言います。これらの能力は、実社会でレベルの高い仕事をやり遂げるための推進力になるものです。学力を身につけることは当然必要なことですが、それだけに終わってしまった人間は、今日の社会では通用しません。
子どもたちがこうした能力を携えた人間に成長するためにも、受験合格だけに偏重した勉強を小学生にやらせるのではなく、自ら学ぶ姿勢を身につけられる受験勉強を経験することが求められるのではないでしょうか。弊社はまだまだ力不足ですが、少なくともめざしている方向は間違っていないと確信しています。自学自習の姿勢を備えての入試突破は、21世紀を生き抜いて行ける人間になるための、古くて新しい最善の方法なのです。
随分長い文章になってしまい申し訳ありません。以上のような弊社の中学受験指導にご賛同いただけたでしょうか。これからお子さんの受験が始まるご家庭におかれては、ぜひ弊社に貴家のお子さんを預からせていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。