受験生活のスタートに向けて ~よい習慣づくりから道は開ける!~

2月 10th, 2020

 中学入試の余韻が残るなか、次年度講座の開講日が近づいています。とは言え、通学生の募集活動はまだまだ続きます。これから学習塾選びをされるご家庭もおありでしょう。弊社の各校においては「入会ガイダンス」という呼称の入塾説明会を繰り返し実施しています(開催日程は当HPにご案内しています)。この催しにぜひ足を運んでいただき、どんな学習塾かをお確かめいただければ幸いです。

 弊社の高学年部門(小学4~6年生対象)の新年度講座は、いずれの学年も2月29日(土)に開講する予定です。新年度性の募集は昨年11月から行っていますので、すでに入会済みで開講に向けて待機しておられるご家庭も多数おありでしょう。そこで今回は、受験を成功へと導くうえで最も基本となる保護者の役割についてお伝えしようと思います。

 弊社が保護者にまずもってお伝えしたい役割は、学習の「習慣づけ」に関わるサポートです。4~5年生には、勉強の内容に関わるサポートもある程度求められますが、それよりも遥かに受験の結果や将来の歩みに影響するのが、「学習習慣」を定着させるための保護者の働きかけです。というのも、学力は“継続”と“積み重ね”の産物であり、いくら資質に恵まれていても、長い期間にわたる学習を絶やすことなく行っていかないと、宝の持ち腐れに終わってしまいかねません。望ましい「学習習慣」は、自己の才能を開花できるかどうかを決定づけるきわめて大きな作用を果たします。

 習慣がいかに重要かを物語る例が、ある書物に紹介されていました。ご紹介しておきましょう。

 ある成績優秀な高校生が、俗にいう一流の大学に合格した。両親の学歴は低く、生活はといえば青果物を扱う店で多忙な生活を送っていた。したがって、子どもの勉強に気を配るゆとりはなかった。しかし、子どもが幼稚園や小学校から帰ってくると必ず実行させることがあった。その一つは、母親が子どもと向かい合って座り、子どもの話を聞くことであった。

 二つ目は、必ず机の前に座らせることで、それは10分から30分そして1時間と伸ばしていった。それが終わると子どもはおやつを食べ、遊びに行くことになる。親がしたことといえば、これだけの話である。しかし、これは含蓄のある話であり、そこに教育的・神経科学的な意義を見出すことができる。

 これを読みになったかたのなかには、「教育的・神経科学的な意義ってどういうことなの?」という関心をもたれたかたが少なくないと思います。その部分を引用すると少し長くなりますので、手短にご説明していきましょう(以下の太字部分はそのまま引用した箇所です)。

 まず教育的意義ですが、「両親は、教えることはしなかったが、自主的に学ぶ態度を育てた」ということです。長い期間にわたって繰り返したしつけの効果に他なりません。「こうした幼い頃の他律的なしつけは、やがてこれが内面化され自律的な行為に転化していく。事実、子どもは学校から帰ってくると、自律的に一度は机の前に座らなければ気がすまないようになった」のです。習慣として学習が定着すると、これが長期にわたる積み重ね効果を引き出してくれるのですね。

 もう一つの神経科学的な効果とはどういうものでしょうか。幼児や小学生までの子どもは、まだ自己の価値観を確立するまでには至っていません。勉強についても、まだどうすべきかを自分で判断し実行に移すのは難しいといえます。そこで、大人が導いて毎日机に向かう行為を反復させるわけですが、それが「子どもにある価値の神経回路をリセットする」ことになります。つまり、机が目に入ると自然に勉強に対する神経回路が呼び出され、リセットされるようになります。「こうした回路のリセットとは、少ない心的エネルギーを使い、努力という言葉が不要になることである」と著者は述べておられます。

 以上を簡単にまとめてみましょう。大人がうまく導いて学習の習慣化を図れば、

という効果が引き出せるのですね。

 「勉強は苦痛で億劫なもの」「勉強は辛く大変なもの」という観念が消えてなくなるわけですから、長い目で見ると大変な違いがもたらされるのは間違いありません。

 以上のことは、中学受験をめざして勉強している児童にも大いに当てはまります。毎日の家庭学習を習慣づけることに成功すると、長い受験生活が苦痛に満ちたいばらの道にならずに済みます。親はイライラを募らせたり、無用な手出しをしたりする必要がなくなります。これがどんなにうれしく安心なことかは、実際に受験生活が始まってみるとよくおわかりになることでしょう。

 2月29日(土)には開講式(オリエンテーション)が行われます。そのときに、これから使用するテキストや副教材のほか、「学習計画表」を配布します。学習計画の作成にあたっては、添付する見本を参考にして、それぞれのお宅の生活サイクルにあった計画を作成してください。新4~5年生であれば、スポーツや習い事もおありかもしれませんね。そういったスケジュールも加味し、親子で相談しながら計画を立ててください。

 学習を習慣づけることで、自立した学びの生活が実現する。毎日の勉強が負担でなくなる。この流れを想定するわけですから、くれぐれも親が一方的に命令して学習計画を立てることがないようお願いしたいですね。また、初めから全開状態での勉強を塾から要求されることはありませんから、無理のない計画を作成することが大切です。

 弊社においても、開講当初は「学びかたの指導」や「受験生活に慣れるための指導」に重点を置き、勉強が負担にならないよう配慮しています。開講してしばらくは、勉強にとりかかる時間になったらお子さんの様子を見守り、遅れがちであったら「あっ、時間になったね」などと声をかけるとよいかもしれません。共働きの家庭であれば、予め取り組んだノートを親が確認する約束をしておき、1日の終わりにあたって目を通したうえでシールやスタンプなどでちゃんとやった印を残してやるなどのフォローをするとよいでしょう。

 なお4年生については、お子さんが取り組んだ問題の〇つけをお願いしていますので、保護者によるノートチェックは必須です。まだ親の承認や激励が意欲につながる年齢ですから、お子さんが励みを得て前向きに取り組むよう上手にサポートしていただくようお願いいたします。

 受験生活が、自律へと成長していくプロセスをたどるか、受け身の姿勢が染みついて親がいつもバックアップさせられることになるか。これによって、受験の結果のみならず中学進学後の歩みに大きな違いがもたらされます。今なら受験生活の出発点ですから、焦ることなく流れを築くことができるでしょう。

 勉強は楽なものではありません。お子さんがやりたがらないときもあるでしょう。しかし、だからといって子どもに無理矢理やらせる姿勢で臨むと、勉強はますます辛いものになっていきます。いっぽう、「やるのが当たり前」にもって行けたなら、辛いものではなく、やらずにはいられなくなっていきます。また、習慣づけることでしだいに勉強の面白さや醍醐味もわかってくるものです。どちらに傾くかで、子どもの勉強に対する価値観は全く正反対になっていくことでしょう。親はどちらをわが子に望み、どうサポートするべきか。それはもはや言わずもがなでしょう。

 お子さんが勉強から得られる手応えを味わいつつ、充実した受験生活を送られますことを心より念じています。どうぞよろしくお願いいたします。

※今回の記事の引用部分は、「脳力を伸ばす学び方」(高井高盛/著 ちくま新書)によります。

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