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子どもの“やる気”のメカニズム研究 その1

月曜日, 3月 9th, 2020

 新型コロナウィルスの感染拡大への対処として、全国のほとんどの小中高がと休校という措置をとっています。弊社のような進学塾は、かなり広範囲から子どもたちが通っているため、通学道中も不特定多数の人との接触が考えられますし(原則、保護者による送迎を勧めていないという事情もあります)、授業においても多数の児童が交流しますから、学校の対処の流れに沿ってと休講いう手段を採りました。

 新年度の学習指導が開講時から頓挫しているため、保護者も戸惑っておられるかも知れません。また、学校が休校状態であること自体、仕事をもっておられる保護者にとっては負担です。もはや国をあげての大問題となっています。今朝などは、広島の繁華街にあるドラグストアに、開店30分以上前から長い列ができていました。おそらくは、マスクなどを求めてのことでしょう。一刻も早く感染拡大が収束し、世の中が平常に戻ることを願うばかりです。

 さて、新年度の講座が始まったものの稼働していない状態ですので、会員家庭のお子さんにはとりあえずカリキュラムの最初のところを家庭で勉強していただいています。そこで問題になるのは、決めた時間に決めた勉強にとりかかれるかどうかということです。お子さんは、自分なりにテキストを広げ、手引きを読む、例題を通して単元の基本事項を学ぶ、練習問題を解く(ノートに式や答えを書く)、配布した解答・解説と照合して適切な考えかたを確認する、などのプロセスをきちんと踏んで勉強しておられるでしょうか。おそらく、塾の勉強に慣れていない4年部生などは、取り組みに難渋するケースが多いのではないでしょうか(保護者の負担が増していれば申し訳ありません)。

 長い受験生活において、保護者の悩みになりがちなのが「うちの子にはやる気がない」「どうしてこんなにやる気がないのだろう」など、やる気に関わる問題です。今回は、新年度の講座が家庭学習からの出発になってしまいましたので、この問題に早くも直面しておられるご家庭が少なくないのではないかと思い、話題にあげてみたしだいです。すでに何度も同じテーマで書いていますが、毎年受験生は変わりますし、保護者も同じ方々ではありません。今回初めてお読みくださるかたも多数おありでしょう。よろしければ目を通してみてください。

 まずは、「子どもは放っておいたら勉強しない」「わが子はやる気が足りない」という思い込みはないか振り返ってみてください。ものごとに興味関心のない小学生など一人もいません。当然、好奇心に基づくやる気はもっています。問題は、「もっとやる気を!」という大人のアプローチのしかたにあるのです。これは、子どものやる気を失わせるネガティブメッセージに他なりません。

 そこで保護者には、お子さんと和やかな会話の時間をもっていただき、さりげなく「あなたはどういうときにやる気が湧いている?」と尋ねてみることをご提案します。きっといろいろな返事が返ってくるでしょう。おそらくは次のようなものが多いのではないでしょうか。

 上記は、何年か前に弊社の4・5年部生へのアンケートの結果で多かった回答をご紹介したものです。1~4は、いずれも親との関わりでやる気が生じているということにお気づきでしょうか。親は5~8のような事柄を期待しがちです。しかし、小学生までの段階においては、「まずは親との関係性がやる気のベースになるのだ」ということを踏まえていただきたいと存じます。

 というのも、児童期までの子どもは、親に認めてもらったり、親との精神的なつながりを感じたりすることで、自分の存在を肯定的にとらえ、気持ちを落ち着かせることができます。この状態を得て、はじめて子どもは本来もっている知的欲求や好奇心を稼働させることができるのだと言われています。親が絶対的な存在である児童期までの子どもにとって、やる気は子ども自身に帰するものではなく、「親しだい」のものなのだということを、ぜひ心に留めていただきたいですね。

 親の愛情をしっかりと受け止めると、子どもは安心して自分の周囲にあるものごとに関心をもつことができます。4~8は、そういった前提が整ってこそやる気のもとになるのですね。

 反対に、子どものやる気を失わせるのはどんなことでしょうか。もはや、ここで事例をあげつらう必要はないかもしれません。上記の1~4の逆を思い浮かべていただくとすぐにおわかりになるかと思います。親に叱られてやる気になるとしたら、それはほめられることをたくさん経験しているという前提条件があるからでしょう。叱られてばかりでは、子どもは心を落ち着かせることはできませんし、自分を肯定的にとらえることもできなくなります。

 子どもが奮起する条件として、2は非常に大きな役割を果たします。うまくできなくても、親ががんばりを見ていてくれ、喜んでくれたり励ましてくれたりする。このことは、親への信頼や尊敬の気持ちを大いに高めます。成績で一喜一憂せず、「やるべきことをがんばる姿勢を奨励する」親であってください。きっとお子さんは、成績に振り回されず、自分自身の満足のために勉強に取り組む人間に育っていかれることでしょう。

 3や4も、子どものやる気を刺激する大きなファクターです。1や2と根は一緒です。かけがえのない家族と楽しい時間を共有するとき、必ず子どもは「親は自分に何をを望んでいるか」ということに思いを巡らすと言います。楽しい団らんが終わると、子どもは自発的に机に向かって勉強し始めるという話をよく耳にしますが、理由は今述べたようなことであろうと思います。

 今回は、どの子どもにもやる気はある、子どものやる気は親しだい、ということをお伝えしました。このことは、小学生であれば何年生にでも適用できることです。まずはわが子との信頼関係の現状、親のわが子に対する接しかたを振り返ってみてください。そこから状況を改善する道が開けることでしょう。

 受験までの道のりは長く続きます。「やる気が見られない → 叱る → ますますやる気がなくなる」といった負の連鎖に陥ると、立て直すのが大変になります。「子どものやる気の大本は親にあり」を心に留め、温かく辛抱強くお子さんをサポートしてあげてください。

次回はこの続きをお伝えできたらと思っています。よろしくお願いいたします。

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