男の子の自立は「ほめて、おだてる作戦」で!

6月 8th, 2020

 小学生の受験勉強で、親が苦慮することの一つが“勉強のとりかかり”です。約束の時間になったのに、いつまでもぐずぐずしたり遊んだりで、一向に机に向かおうとしない。そんなわが子にイライラするおかあさんは少なくありません。生活習慣はある程度自立できても、勉強面での自立は、小学生の子どもにとって最も難しいことだと言われています。

 そこで今回は、「どうしたら、わが子が自分から率先して机に向かうようになるか」をともに考えてみようと思います。というのも、弊社に通って受験勉強をしている子どものうち、良好な成績を安定して得ているのは勉強の自立度が高いお子さんです。ただし、一足飛びに子どもは変われるものではありません。まずは、決めた時間にとりかかれるようになる」ことをめざしましょう。それがうまくいけば一気に見通しが明るくなっていきます。

 ここに、小学校高学年の子どもたちの勉強のとりかかりの現状について調べた資料があります。だいぶ前にご紹介したことのある資料ですが、参考になると思います。

 この資料によると、親に言われなくても自分から勉強を始める子どもは高学年で3~4割程度であることがわかります。1~3年生のデータは割愛していますが、低学年からの流れで言えるのは「高学年になるにつれ、自立度が少しずつ上がっている」ということです。

 ただし、自分から勉強を始める子どもが3~4割という数値は十分とは言えません。また、結果は男女合わせてのものであり、自分から勉強を始める子どもは圧倒的に女子のほうが多いという指摘もあります。問題はどうやら男子にあるような気がします。

 実際のところ、上記以外にも様々な行動の自己決定に関する調査項目がありましたが、男子の自立度が女子を上回った項目は一つもなかったそうです。ですから、行動の自立性の問題は女子よりも男子のほうにより多く存在するのは間違いないと思います。

 理由として、大学の研究者は男の子に対する保護者の干渉の度合いが女の子よりも高いことをあげておられます。男子は概して女子よりも精神面の成長が遅く、幼稚です。だからこそ、親は簡単に手を貸すのではなく、子どものことは子ども自身に判断させてやらせるべきでしょう。そのチャンスを奪われると、それだけ自立も遅れることになります。

 ただし、悲観的に考える必要はありません。子どもは本来、自分で決めること、自分でやり遂げることが好きです。その点は男子も負けていません。むしろ、幼い頃にはできるかできないかに関わらず何でも一人でやりたがり、親が手伝おうとすると「自分でやる!」と口をとがらせて抗議したことがあるのは男子ではないでしょうか。

 何かと頼りなく、放っておけなくなりがちな男子ですが、だからこそ自立に向けた効果的なサポートが求められるのですね。中学受験のプロセスで最も親を悩ませるのは、「男の子は、放っておくと勉強しない」という問題です。この問題を解決できなければ「無理やりやらせる」という男子特有の方法がありますが、筆者は賛成しかねます。というのも、この方法で受かっても、先が思いやられるからです。「先のことは、またあとで考える」とおっしゃる保護者もおられますが、大人の手を離れる年齢になって親が対処できることは一つもありません。「勉強を自立させるのは今しかない」と思うべきでしょう。

 そこで、つぎは「どうやったら、自分から率先して勉強にとりかかるようになるか」という話題に移ろうと思います。

 男子に限らず、子どもは誰でも「偉くなりたい」という気持ちを強くもっています。また、よいことに関しては「自分でやったんだ」と主張したがります。ちゃんとやれたときには、「親にほめてもらいたい。認めてもらいたい」と望みます。これらの心理の底にあるのは、「誇れる人間になることへの憧れ」ではないでしょうか。男の子には、特にそれが言えると思います。

 わが子が自分から勉強にとりかかることを期待するなら、親はこういった子どもの気持ちを尊重し、上手にくすぐりながらその気にさせる必要があるでしょう。ただし、ご存知のように男子は概して自分の願望と現実とにギャップがあります。そして、その割にはネガティブな自分の現実に無頓着で、反省の色が見えないものです。そこを大人は指摘して叱ってしまいがちですが、それでは男の子はよくなりません。男の子を自立に向かわせるには、親は「気長な気持ちで臨むこと」、「感情的に叱らないこと」、「なるべく楽天的になること」、「寛大になること」が必要です。そして、やや大げさなくらいの笑顔や身振り手振りでほめることが求められます。「虫のいい話だ」と思われるかもしれませんが、寛大で楽天的な親によって救われる男の子は少なくないのです。少なくとも、親を恨んで、しかも自らに努力を課さない人間に育つよりはずっと効果的な対処法だと思います。

 以上のような前提に立って、それぞれのご家庭の事情に合わせてお子さんの自立に向けた働きかけを考えてみていただけたら幸いです。お子さんに有効な対処は、個々でそれぞれに違っていると思うからです。以下は、筆者が原則として提示する対処法です。

 まずは、勉強に限らず何でも構わないので、わが子が自分で率先してやろうとしていることを見逃さずにほめてやりましょう。自分からやろうすることを、親は強く望んでいるのだということを感じ取ったなら、子どもは「勉強も自分で」と変わっていきます。子どもは「親に信頼されている」と感じると、素直に本当の気持ちを言ってくれるものです。怒鳴りたいのを押さえ、「今日は、時間になってもなかなか勉強しなかったね。何かあったんだね」と声をかけたなら、意外な理由があるかもしれませんし、たとえ言い訳をしたとしても、子どもの今の心の状態が掌握できるでしょう。そこから話を詰めて行けばいいのです。小学校高学年の子どもの学習意欲は、「親の期待に沿った人間でありたい」という願望と強くリンクしています。親の望む取り組みを、わが子に一貫して伝えてやりましょう。

 あきらめずに、明るく、自分を信じて励ましてくれるおかあさん。それを子どもが受け入れないはずがありません。「打てども響かない」かのように見えるわが子(男の子)ですが、粘り強く根気よく、一貫してわが子を励まし続けることこそ、おかあさんがたに求められる応援です。それには、情熱を失わないことです。ある心理学者は、「“情熱”とは、“夢中”や“熱中”とは違います。『一つのことを最後までやり続けること』なのです」と述べておられます。わが子の自立を願い、癇癪を起さずに粘り強く親の期待をメッセージで伝えてあげてください。

 なお、冒頭でお伝えしたように、「勉強への自発的とりかかり」は、子どもの自立的行動のなかで最も困難なものだと言われています。だからこそ、働きかける親に“情熱”が求められるんですね。がんばってください!

※本文中の資料は、「小学三年生の心理 落合幸子/編著」より引用しました。

★子どもの自立促進に関する過去の記事  《参考》
勉強を嫌がらない子どもにするために その1   2019.10.07
勉強を嫌がらない子どもにするために その2   2019.10.14
親の声かけ・励まし原則 ~あいうえお~    2019.08.05
子どもの“やる気”のメカニズム研究 その1   2020.03.09
子どもの“やる気”のメカニズム研究 その2    2019.03.16
子どもを自立させ、頑張らせるおかあさんって!?    2019.02.11
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