夏場のコンディションは睡眠で決まる!
8月 3rd, 2020
長い梅雨が8月を目前にしてどうやらやっと明けたようです。例年のことながら、梅雨明けが近づくころに大雨に見舞われることが多く、今年も西日本や東北地方では激しい雨による土砂崩れや河川の氾濫に伴う災害が多数発生しています。被害に遭われた方々の暮らしが1日も早く回復されますことを心よりお祈りするばかりです。
さて、例年なら今頃は夏休みの真っ最中ですが、今年に限ってはコロナ禍の余波を受けて学校の夏休みが大幅に短縮されています。そのため、中学受験をめざしている子どもたちは、日中は学校があり、夕方から塾に通って受験対策の勉強をするというハードな毎日を送っています。日中は学校、夕方からは塾というパターンは、子どもたちにとってはおなじみのことではありますが、真夏ともなると移動中も体力を消耗させるほどの暑さと闘わねばなりません。体調の維持は細心の注意が必要であり、保護者の方々にはお子さんの健康面のサポートをいつも以上に心がけていただきたいと存じます。
暑い盛りの時期の健康管理において特に注意していただきたいのは睡眠です。ただ単に睡眠時間をたっぷりとるというのではなく、規則正しい生活のもとで決まった時間に決まったパターンで就寝することが大切です。特に夜更かしは厳禁です。適切に睡眠をとっているかどうかは、健康維持のみならず学習の成果にも少なからぬ影響を及ぼします。今回は、中学受験生が夏を上手に乗り切るうえで必要な睡眠の取りかたを話題に取り上げてみました。
さて、そもそも睡眠の果たす役割とはどのようなものでしょうか。むろん、大人ならおおよそのことは知っておられると思います。ただし、育ち盛りの子どもたち、それも中学受験準備の学習に励んでいる子どもたちにとっての適正な睡眠ということになると、「疲労回復」や「体調維持」といった漠然としたものではなく、もう少し厳密に睡眠の役割や重要性を知っておく必要もあると思います。睡眠については、過去のブログにおいてもかなり詳しくお伝えしています。今回の記事のおしまいの部分に掲載タイトルと掲載日を記しておきますので、よろしければ目を通していただければと思います。
ご存知かと思いますが、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠という質的に異なる2種類の睡眠があります。これらの睡眠は一晩のうちに交互に何回か繰り返されており、“睡眠周期”と言われています。入眠に入ると、まずレム睡眠から始まり、次にノンレム睡眠にスイッチします。1回の周期に要する時間は、大人で90分ほどだと言われています。子どもの成長にとって大切なのは、この睡眠周期が適切に繰り返されることです。中学受験生についてあえて言えば、この睡眠周期をしっかりと維持することで、入試本番でもてる能力を100%出し切れる状態を築くことができます。つまり睡眠は冴えた頭脳育成にとっても欠かせません。睡眠を大切にしてくださいね。
ともあれ、まずレム睡眠とノンレム睡眠が、それぞれどのような睡眠なのかを確認しておきましょう。レム睡眠という呼称は、英語のRapid Eye Movementsの綴りの頭をつなげたものです。この呼称からもわかるように、眠っているときに閉じた瞼の下で眼球が頻繁に動いており、比較的浅い眠りの状態にあります。ノンレム睡眠は、眼球の活発な動きがなく、安らかな深い眠りの状態にあります。それぞれの眠りの特徴をご説明しておきましょう。以下は、脳科学の専門家である福岡教育大学名誉教授の永江誠司先生の著作からの引用です。
睡眠の最初の3時間の中に最も深い眠りが含まれています。いわゆる熟睡です。その後の睡眠では、浅い段階のノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返されていきます。最初の深い眠り、すなわち深い段階のノンレム睡眠は、大脳の回復あるいは修復にとって大切なものであり、この時に成長ホルモンが分泌されます。したがって、入眠からの3時間は、子どもの成長にとってとくに大切な時間といえます。この時の睡眠が邪魔されないように気をつけなければなりません。
これに対し、レム睡眠は大脳の情報の整理あるいは定着に大切だと考えられています。レム睡眠では、脳は覚醒に近い状態にあります。眠りのこの状態にあるとき、起きて活動していた折に学習された情報の整理整頓が行われるのです。睡眠中のノンレム睡眠とレム睡眠の占める割合は、子どもと成人では異なっており、発達的に子どものほうがレム睡眠の占める割合が大きいことがわかっています。新生児や乳児のレム睡眠の割合はほぼ50%ですが、大人になると、20~25%ぐらいになります。
これを読むと、睡眠に入ってからの3時間がとても重要だということがわかります。勉強が終わった後、テレビを長時間見たり、ゲームに興じたりすると、強い光が脳を刺激して子どもの眠りを妨げると言われています。就寝時間になったら、穏やかな精神状態で眠りにつくような習慣を築いていただきたいですね。
また、ノンレム睡眠には主として1日の活動で生じた疲労を回復させる働きがあり、レム睡眠は学習によって得た情報を整理整頓する役割を果たしているようです(上記引用文の下線部分より)。
1日24時間のうち、約半分は起きて活動するための時間、残りの半分は眠るための時間として脳にプログラムされていると言われます。脳の健全な働きと成長のためには、このバランスが崩れないようできるだけ1日の活動パターンを固定化し、リズムよく過ごすことが望ましいと言えるでしょう。
睡眠が脳の健全な発達に欠かせないということについて、前出の永江先生は次のように述べておられます。
子どもの活動水準は、大脳の機能水準に依存しています。大脳の機能水準は、睡眠によって大きく影響されます。したがって、子どもの睡眠が不足していれば大脳の機能水準は低くなり、その結果、気分がすぐれず意欲も減退して活動水準が低くなります。逆に、睡眠が適切にとれていれば大脳の機能水準は高くなり、その結果、気分もよく意欲も向上して活動水準も高まります。子どもが起きているときに清明な意識水準を維持し、高い活動水準を維持するためには、適正な睡眠をとることが大切です。
あるおとうさんが、「睡眠は時間の無駄でしかない」と、わが子の睡眠時間を大幅に削られたという話を聞いたことがあります。また、あるおかあさんは「親も仕事を家にもち帰って夜中まで働いているのだから、あなたも一緒に起きて勉強をしなさい」と6年生の息子さんに命じられたという話もあります。
これらは、子どもの脳の成長や働きにとって非常に危険であり、マイナス効果しか生み出さない方法だと思います。勉強の成果は時間だけでは決まりません。むしろ早寝早起きを励行し、昼間の活動水準を上げ、夜はしっかり眠る。これによってメリハリや集中力の伴う受験生活を送ったほうが勉強の成果も上がるし脳の成長にもプラスになるでしょう。
暑い夏こそ睡眠をしっかと確保し、規則正しい生活を送って能率のよい学習を!
★「睡眠」に関連する過去のブログ記事 ★
「適性な”睡眠”が学習と生活のリズムをつくる!?」2017年10月2日掲載
「子どもの睡眠不足にご注意を!」2016年6月27日掲載
「あなたの子どもの睡眠時間は足りている?」2016年6月20日掲載
「夏休み後半の過ごしかたを大切に」2015年8月17日掲載