テストの成績=現在の実力 と思い込まない!

9月 29th, 2020

 テスト制度は受験対策を標榜する学習塾において欠かせないものです。カリキュラムに沿って学習しつつ、単元の区切りに合わせてテストを行い、勉強のはかどり具合や現在の実力をデータで確認していきます。このデータをもとに、足りない部分、わかっていない部分を割り出してテコ入れをし、学力を伸ばしていくわけです。

 弊社で2週間に一度実施している単元テストは、「マナビーテスト」と呼ばれていますが、みなさんの家庭ではこのテストでの結果をどのように受け止め、生かしておられるでしょうか。今、「現在の実力をデータで確認」と述べましたが、実はマナビーテストの結果が正直に実力を数値化した形で示されることはほとんどありません。小学生のテストでは、実力以外の要素が得点にかなり影響しているからです。今回はそのことをよくご理解いただき、テストデータをより有効に活かした受験勉強を実現していただけたらと思ってこの記事を書くことにしました。

 では小学生の場合、実力以外のどういう要素が得点に影響するのでしょうか。その多くは、幼さと経験不足ゆえに生じるミスです。典型的な事例は次のようなものです。

 

●算数

 あなたのお子さんは、テスト問題をどのような順序で解いておられますか? ①番号順に最初の問題から解いていく。②易しそうな問題から手をつけ、一定の得点と残り時間を確保したうえで、難しい問題に取り組む。③先に難問を攻略し、自信を深めたうえで残りの問題を一気に片づける。

 実力さえ十分なら問題を解く手順など関係なく高得点を得られる可能性がありますが、どの方法にもリスクがあります。①ですが、易しい問題が先にあるとは限りません。のっけから出鼻をくじかれて悪戦苦闘して時間を失い、それが焦りにつながってボロボロになるケースがあります。同じようなことが、最もスタンダードなパターンの②にも当てはまります。易しいと思って手をつけた問題が意外と難しくて途中で投げ出し、あわてて別の問題に手をつけたがうまくいかない。焦りが更なる焦りを読んでわけがわからなくなる。そういうこともあるでしょう。③は算数に自信のある子ども以外に採らない方法ですが、やはり最初に手をつけた問題が運悪く滅多にない難問だった場合、①や②と同じようなプロセスをたどることになります。

●国語

 国語のテストには長文がつきものです。国語のテスト対応力の要は「速読即解」にありますから、読みのスキルが不足しているお子さんは苦労することになりがちです。長文を一気に読み通すことができるかどうか。それによって、問題に対処する時間的な余裕が随分違ってくるのです。 

 素材文を読むこと自体に手間取ると、手をつけない問題をいくつも残して時間切れになることもあるでしょう。そこで、ざっと文章に目を通したら、文意が理解できているかどうかにかかわらず、すぐに問題に手をつけるお子さんもいます。しかし、大半の問題は文章の内容理解を試すものですから、うまく解答できるはずがありません。しかたがないので、「漢字の問題を確実に」と、この種の勉強に偏るお子さんもいます。しかし、これらの配点は僅かです。しかも、漢字の出題には同音異義語や同訓異字があって紛らわしいものが多く、必ずしも得点できるとは限りません。

 前述のように、国語の文章題の肝は速読即解です。家での勉強においては、5年生ぐらいになったら、一気に読み通して文意を掌握する練習をし、わからない表現や語句はあとから丁寧に調べて覚えるような勉強法をお勧めしたいですね。

 

 テストで失敗する理由はお子さんによってさまざまです。上記はほんの一例にすぎません。内面が成熟する途上の小学生の場合、早とちりや思い込みによるミスも大人に比べて格段に多いものです。そういうことも含め、毎回のマナビーテストの点数や成績を、「ほんとうの力をどのくらい発揮した結果か」という視点から検証し、反省点や課題を埋め合わせていくような勉強をしていただきたいですね。子どもは放っておくと、そういう見直しやチェックをしませんから、この部分については親が関わる必要性が大いにあると思います。

 ともあれ、本物の実力をつけていけば、稚拙な失敗や未熟さゆえの失敗はだんだんと減っていくものです。これからお伝えすることは参考になるかどうかはわかりませんが、よろしければ目を通してみてください。現4~5年生を念頭に置いて書いています。

 まず算数についてですが、授業が終わったその日のうち、もしくは授業の内容が多く記憶に残っている翌日のうちに、何を学んだのかを親に説明する時間を設けることをお勧めします。改まった場ではなく、例えば夕食の時間でも結構です。「何を学んだのか」を反芻し親に説明するプロセスは、何よりも有効な復習になります。問題をただ見直したり、解答・解説をなぞってやり直したりするのでは、ほんとうの意味で頭が働いたことになりません。頼みにするのは自分の頭・記憶だけ。それをもとに他者に学んだ事柄を説明することは、ほんとうに頭を鍛える勉強になります。

 親は意見を言ったり、子どもの発言を訂正したりする必要はありません。「もうちょっと、詳しく知りたいな。あとで問題を使って説明してくれないかな」などと反応し、食事の後の勉強前に、お子さんを一緒にやりとりをすると、お子さんのやる気も一層高まり、一人で勉強するときの取り組みに好影響を及ぼすことでしょう。

 国語については、マナビーテストが返却された後、定期的に親子一緒の振り返りの時間を設けることをお勧めします。何をするのかと言うと、こちらも保護者が答えを教える必要はありません。テストでバツを食らった問題について、「どうしてこの選択肢を選んだのか」「どういう考えでこの答えを書いたのか」を、お子さんに説明させるのです。親はつい教えたくなるし、あまりにも下らない答案に失望して叱りたくなる場面も生じるでしょうが、それは逆効果にしかなりません。

 どうしてこれを答えだと思ったのか、なぜ正解はこれなのか。このことをお子さん自身が考え、納得するプロセスを応援していただきたいのです。ですから、問いかけや、逆質問などをして、お子さんに気づきを与える役どころを演じてくだされば、大いに効果があると思います。答案を見直すとき、消しゴムで消した部分に正解を書き込んだ形跡を発見することは少なくありません。そう、お子さんはいつも惜しいところで失点している可能性大なのです。失敗を検証する作業は、こういう惜しい間違いを未然に防ぐ力を与えてくれることでしょう。

 なお、国語のテスト対策として最も基本的かつ重要なのは、「長文をすばやく正確に読み通せる力を養う」ことです。前述のように、家庭でのテキストの予習や復習のとき、一気に素材文を読み通して話題の流れや大要をつかむ練習を毎回繰り返せば、かなり読みの力は上達すると思います。その際、文章を声に出して読むようにしましょう。先日のブログ記事にも書きましたが、声に出して速く正確に読めるようになるにつれて、目で文章を追って意味を読み取る黙読のスピードや精度もあがってきます。黙読は、文字の言葉の示す音を脳内でイメージする作業です。声に出して読むのが上手になれば、自然と黙読力も向上します。

 小学生の受験勉強は、大人から見るともどかしいものです。しかし、同時に言えるのは、いったん成長や上達の曲線が上向きになると、一気に変わってくるということです。もどかしい上達のプロセスをうまく乗り切るコツは、親が教えることではなく、子ども自身に考えさせることであり、子どもが夢中で取り組む姿勢を育むことです。それは、受験での成功はもとより、親子の大いなる信頼関係の構築にも貢献してくれるのは間違いありません。

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