子どもの受験勉強に親はどう関わるべき?
11月 24th, 2020
ここ2~3回の記事は、中学受験の主役が発達途上の小学生であることを踏まえ、子どもの望ましい成長に資する受験の実現に向けて大人が配慮することの必要性をお伝えしました。弊社はこのような考えに立脚し、昭和42年の設立以来50余年にわたって一貫した活動を継続しています。
受験対策に大人が関わり、子どもをバックアップする。それは未熟な小学生の受験ですから必要なことです。むしろ、中学受験は大人のバックアップなしに成立しない受験だと言えるほどです。しかしながら、合格のためとはいえ、大人が過重な負担の伴う勉強を子どもに押しつけると、勉強のもつ本来のよさを子どもが享受できなくなり、「将来に道をつける」という受験本来の目的が損なわれてしまう恐れもあります。大人の関与は必要ではありますが、さじ加減しだいで子どものすばらしい成長を引き出しもすれば、逆に望ましい成長をスポイルすることもあるのです。そこが中学受験の魅力でもあり難しさなのだと言えるでしょう。
これからお子さんの受験生活が始まるご家庭におかれては、お手数ですがここ2~3回の記事に再度目を通していただければ幸いです。そして、保護者自身の教育観や子育て方針と照らし合わせてみてください。もしも弊社の学習指導と保護者のお考えとが一致するようでしたら、ぜひこの冬休みの講座から、もしくは来年の前期講座からの入会をご検討いただきますようお願い申し上げます。
さて、繰り返しになりますが、子どもの将来という観点から中学受験対策のありかたを考えると、私たち大人に求められる視点として外せないのが「子どもの学びの自律に向けた支援」です。自ら学ぼうという意欲を携え、やると決めたことを着実に実行に移す。このような姿勢を受験のプロセスで子どもが身につけたなら、志望校に受からないはずはありませんし、万一希望が叶わなかったとしても、中学・高校の6年間でいくらでも巻き返しは可能でしょう。それ以上に言えるのは、大学進学、社会への参入の段階に至ると、自らを律する姿勢の持ち主であることが、あらゆる人生の局面で有効に作用することになります。今日のグローバル社会で自分を通用させられるのは、「自立した人間」「自らの知恵で困難を突破できる人間」なのですから。
このことをもう一度胸におくと、子どもの受験勉強に対する大人の関わりかたも自然と収まるところに収まっていくことでしょう。すなわち、指示や命令で子どもの勉強を取り仕切るのでもなく、勉強を子ども任せにして放任するのでもない。すなわち、「付かず離れず」の見守りと応援が最も望ましいのではないでしょうか。
私たち家庭学習研究社は、講座の開始後、子どもの取り組みが少しずつ自立していくよう配慮して指導を行っています。たとえば、子どもたちが毎日の家庭学習を計画に基づいて進める習慣が身につくよう、講座の開始時に学習計画表を全会員家庭に作成していただくよう案内しています(モデルプランを参考に、親子で相談して作成してもらいます)。また、家庭学習(授業の予習・復習、副教材の学習、テストに備えたまとめの学習など。なお、予習は4年生には課しません)が円滑に進められるよう、講座の開始当初は繰り返し取り組みかたについて指導します。ノートは復習の効率性を高めるうえで重要な存在です。そこで、授業の板書を上手に写したり、家庭で取り組んだ問題の○つけや修正を要領よく行ったりできるよう、ノートの取りかたについても適宜指導しています。
保護者にお願いしたいのは、こうした学習をお子さんが受け入れ、お子さんなりにやりこなせているかどうかを見守っていただくことです。無論、4年生と6年生では、子どもの意識も自分でやれるレベルも全然違います。子どもの年齢なりに、少しずつ進歩しつつあるかどうかを見守り、ほめたり激励したりしつつ、必要に応じてアドバイスをするのが親の役割です。「付かず離れず」とは、大まかにはこのような関わりなのだと思ってください。
たとえば、4年部からお子さんが入会されるとしましょう。当面、保護者にお願いしたいのは次のようなことです。
上記の事柄については、ご家庭それぞれに保護者がどこまで手を貸すか、子どもが自分でどこまで判断してやれるかは違っていると思います。ただし、どなたにも共通していえることは「子どもが一人でやれそうなことにまで口出し手出しをしない」ということです。できるなら、一つひとつの案件について、「どうしたらいいと思う?(どうしている?)」と、子どもに問いかけ、子どもに判断させたり説明させたりするよう心がけていただければありがたいですね。児童期後半の子どもは、親に期待されていることが何よりも励みになりますが、そのいっぽうでこまごま口出しをされるのを嫌がります。また、ちゃんとやれていなくても、一応取り組んでいればほめてもらいたいという願望をもっています。大人にすれば都合のよい話ですが、そういう子どもの気持ちを理解してやり、少しずつまともな取り組みができるようバックアップしてやることが必要です。こういったサポートを辛抱強く続けているうちに、いつの間にか見違えるような進歩を遂げる。それがこの年齢期の子どもなのです。
「付かず離れず」という見守りスタンスに関わる重要なことがほかにもあります。授業のあった日には、「今日の授業はどうだった?」「どんなことを勉強したの?」など、子どもに問いかけ、子どもがどんな気持ちで授業を受けているのか、楽しく勉強できているか、などについてそれとなく掌握しておくと、親のサポートが必要な時に適切な対応をすることができるでしょう。また、テストの結果が返却されたら定期的に反省会をし、一緒に喜んでやったり、がんばりを承認してやったり、励ましたり、反省点を確認したりすることも必要です。こうしたことの繰り返しを通して、親が自分に何を期待しているのかお子さんは理解するようになり、自律に向けた成長の度合いも増していくことでしょう。
復習の際の〇つけ、副教材の家庭学習、マナビーテストに備えたまとめ学習の取り組みなどは、まだまだ子ども任せにすると完璧には程遠く、まかり間違うと親がとりしきったり、叱ってやらせたりすることになりかねません。4年生ぐらいですと、こういう勉強に親が立ち入ることでテスト成績をあげることはできます。しかし、肝心の「自律に向けた成長」は止まってしまいます。自ら学ぶための推進力が得られないお子さんは、当面の成績はよくても、やがて行き詰る可能性が高いのです。歯がゆい思いはあっても、わが子が少しずつ自立していくよう、辛抱強く、ほどよい距離を置いて見守りサポートできるかどうか。それがやがて大きな違いをもたらすのだと心得ていただきたいですね。
駆け足で、大ざっぱな説明しかできませんでしたが、「付かず離れず」がどういうことか、ある程度ご理解いただけたでしょうか。弊社が実践する学習指導は、すべて「子どもの自立学習支援」という核となる方針に基づいています。このことをご了解いただいていないと、「うちの子は塾に通ってもさっぱり成果がない」ということになりかねません。授業で何を学んでいるのか、家庭では何をすべきなのか…これらが不明瞭だと、子どもの学習の現実も全く見えてきません。直接の手出しはなるべく控えつつ、わが子はいまどのように学んでいるかを見守り続ける。忍耐の要る役割ですが、親の苦労が実を結ぶためには「できることは子ども自身にやらせる」という方針を徹底させることが肝要です。この流れが軌道に乗ると、思春期を終えた頃にはわが子にまつわる親の苦労が格段に減っていることでしょう(ご承知と思いますが、思春期に至ると、わが子が抱える問題に親はまったく関与できなくなります)。
お子さんが受験生活をスタートされる家庭の保護者にお伝えしたいこと。それは、「これからの受験生活で、わが子が自律型の行動規範を携えた人間に成長するよう応援しよう」という強い意志をもっていただきたいということです。この点が明確であるか否かによって、お子さんの取り組みの姿勢が全く違ってきます。
「中学受験を、わが子の大いなる成長の場に!」――保護者の方々には、このことを念じながら受験生活を乗り切っていただきたいですね。どうぞよろしくお願い申し上げます。