この1年のわが子を振り返ってみましょう

12月 27th, 2020

 2020年も、今日を入れてあと5日間で終わります。今年は新型コロナウィルスで世界中の人々の生活が一変した1年でしたが、受験を控えている6年生のご家庭におかれては、随分と心配や気苦労が多かったのではないかと拝察します。受験はもう目前に迫っています。この冬休みは総仕上げに専念し、志望校合格を揺るぎないものにしたいところです。お子さんの心身のコンディション維持に向けて、十分な配慮とサポートをお願いいたします。

 さて、今回は2020年の最終回にあたります。そこで、今年1年の振り返りに関する記事を書いてみようと思います。とは言え、このブログは中学受験専門塾から発信しています。したがって、ここではお子さんの学業面の取り組みの成果や進歩という観点に立って話を進めます。

 今年1年でみなさんのお子さんが「進歩した」「成長した」と感じる点はどのようなことでしょうか。また、親としてもどかしく残念な点があったとしたら、どのようなことでしょうか。進歩した点と残念な点は、おそらく裏返しの関係にあるのではないでしょうか。たとえば、「学習意欲が高まった」⇔「学習意欲がしぼんだ」などが典型的な例にあたるでしょう。お子さんが家庭学習研究社の教室に通っておられるなら、次のような点について振り返ってみていただきたいですね。

 受験勉強に関して、子どもの望ましい成長の尺度として第一にあげたいのが、学びの積極性や実行力に関わる①です。学習習慣も、この学びの積極性や実行力と深く関わっています。

 ただし、小学生の子どもの場合、受験や勉強の必要性への自覚や、先を見通して行動することはあまり期待できません。ですから、「親が声かけをしたら机に向かう」「たまに叱るが、以前より親のイライラが減った」などの変化があれば、お子さんは相当成長されたと言えるでしょう。よくなった点を指摘し、大いにほめてあげてください。来年はさらに成長が加速されていくのは間違いありません。

 ②についてですが、入塾当初はやる気があっても、勉強の手順や方法がわからないと行き詰まり、意欲もしぼんでしまいます。親が無理にやらせても、子どもに自ら学ぶ態勢が整っていなければ、いつまでも親がかりの勉強が続きがちです。親の手を借りずに勉強する姿勢を早めに築いておきたいものです。今年の締めくくりにあたり、お子さんの学びの自立度を確かめてみてください。

 たとえば、4年生なら授業後の復習はどこをやるのか、マナビーテストに臨むにあたって何をしておく必要があるのかなど、お子さん本人がある程度心得ておられるかどうかで、勉強ぶりや成果は随分違ってくるものです。もしも、親への依存度が強いようでしたら、少しずつ手放していく必要があります。5年生なら、本人の判断と実行力に基づく勉強に切り替えるべき時期です。「自分のやるべきことがわかっているか」や「どう取り組むべきかがわかっているか」などの点について、現状を確かめながら来年に向けて修正していきましょう。

 最後の③ですが、自分の現状を客観的に分析し、よい点を伸ばしつつ弱点を補正していく姿勢は、自学自習の推進において不可欠のものです。メタ認知という心理学用語がありますが、自分の認知の状態を認知する目をもっているかどうかは、受験勉強の成果を左右するだけでなく、中学進学後の学業の成果や人生の歩みを規定することになります。

 テストの答案やデータが返ってくるたびに、できているところ、できていないところを確認し、そうなった原因を掌握して対策をしていく姿勢を少しずつ身につけていくことが大切です。この繰り返しで、お子さんはメタ認知的行動のできる人間に成長します。これまでそういった観点からお子さんの勉強をフォローしておられないようでしたら、ぜひ子育てと学習のサポートに採り入れてみてください。

 以上は、いずれも子どもの‟自立”という視点に基づいています。受験で合格するだけが目標なら、このような視点は不要かもしれませんが、合格後、中学進学後の学びの人生においては、「学びの自立度」が問われます。今のうちに、「自ら学ぶ」姿勢をもった人間に近づいておきたいものですね。家庭学習研究社の学習指導は、全てこの視点に基づいて構成されています。

 とは言うものの、今まで親が「勉強しなさい!」と叱らないと勉強しないなど、負の習慣が染みついたお子さんもおられるかもしれません。また、子どもが思うようにならないと、すぐに手や口が出てしまうタイプの保護者もおられるかもしれません。もしもそのようなご家庭があったなら、心理カウンセラーの先生のつぎの著述を参考にしてください。

 大切なのは、「子どもを、自分の持ち物のように思わないということだと思います。子どもといっても、一人の、人格をもった人間です。たとえ親子であっても、人間対人間です。ここから、子どもの気持ちを尊重し、子どもなりの生きかたを大切にする、という姿勢が生まれてくると思います。

 わが子を「自分の持ち物だ」と思っておられる保護者はおられないと思います。ですが、親の心の片隅には「わが子はコントロールすべき存在だ」という意識があるものです。わが子が親の期待通りにならないとき、その気持ちが頭をもたげてくるのではないでしょうか。前回、心理学者の河合隼雄先生のお父さんの子育ての一側面をご紹介したのは、子どもを尊重し、子どもが自ら考えて行動しようとする姿勢を養うよう配慮した、実に創造性豊かな子育てをされていると感じたからです。

 家庭学習研究社にご縁をいただいているお子さんは、基本的には自分のやるべきことを理解しておられます。それなのにできないのは、勉強が決して楽とは言えないものだからでしょう。そこを大人はある程度受容してやることも必要です。叱ったり、押さえつけたりしても逆効果にしかならず、むしろ子どものプライドは傷つき、親に反抗することになりがちです。「子どものプライドは親が思う以上に高い」ということも、頭に入れておきたいものです。

 勉強をすべきときに行動の切り替えができない。こうならないためには、低学年児童なら「とっかかりは一緒に勉強する」というスタイルがお勧めです。そうして、取り組みのノリがよくなったなら子ども主体の勉強へと移行させるとよいでしょう。中~高学年なら「あっ、勉強の時間が来てるね」など、子どもに逃げ道を与えてやり(気づかせたのは親ですが、子どもは「自分からやったんだ」という気持ちになれます)、「親にやらされている」と思わせないような配慮が有効でしょう。

 以前もお伝えしましたが、子どもだって「これは自分からやっているんだ」と思いたいのです。よい行為に関しては、特にその傾向が強くあります。そういう子どものプライドを尊重してやりながら、徐々に「やらずにはいられない」という状態にまで漕ぎつけたなら、これはもう素晴らしい進歩・成長です。このレベルに到達したお子さんは、まさに前途有望と言えるでしょう。自分を律する確固とした姿勢ができあがっているからです。

 「子育ては芸術である」と言われます。世界で一つとして同じものはありません。親の創意工夫や苦労がすべて子どもの成長に反映されます。これほど尊くてやりがいのある仕事はありません。

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