ヘリコプターペアレントの何が問題?

5月 17th, 2021

 ゴールデンウィーク明けから新型コロナウィルスの感染拡大が加速しています。広島県も、まん延防止等重点措置の適用対象とされるのみならず、緊急事態宣言が発令されるなど、深刻化する新型コロナ感染拡大への対応が進められています。みなさま、窮屈で不便、不安な毎日をお過ごしでしょうが、感染回避に向けて一層の注意や対策をされますようお願いいたします。

 教育関連の施策に目を遣ると、広島県は県内の公立高校80校に、中間試験が終了する5月中旬から6月1日までの期間、可能な限りオンライン授業を実施するよう促しています(試験はオンライン化が困難なため)。コロナ禍における弊社の学習指導は、現在のところ「通学コース」と「オンラインコース」の2本立てで実施していますが、コロナの感染状況や学校教育の対応等に合わせ、子どもたちの感染回避に向けて細心の注意を払いながら受験指導を行ってまいる所存です。ご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

 さて、今回のテーマにある「ヘリコプターペアレント」という言葉を、みなさんはご存じでしょうか。初めてお知りになったかたも、ヘリコプターの動きからの連想で、何となく意味を察知されたかもしれませんね。目標物の周囲をホバリングするヘリコプターのように、常に子どもの傍を離れない親を表現した言葉です。この言葉が使われるようになったのは、比較的最近のことではないかと思います。筆者の所持している教育関連本(2006年発行)に、次のようなくだりがあります。

『大丈夫?』
『どうしたの?風邪ひいたの?』
『お医者さまに診てもらいましょう』
『自分を粗末にするからよ』
『夜更かししちゃだめよ』
母さんはヘリコプターのようにぼくの周辺を飛びまわる。母さんの騒々しいたわ言にはもううんざり。ぼくにだって、いちいち説明せずにくしゃみをする権利があると思うんだ。

 ヘリコプターペアレントとは、どうやら子どもに対する過保護や過干渉の親を指して表現する言葉のようです。上記の子どもの言葉からも察せされると思いますが、もともとは大人の入り口に立っている高校生頃の子どもをいつまでも心配し、口や手を出さずにはいられない親のことを意味しています。しかしながら、最近では子どもの自主的な判断や行動を信じて任せることができないでいる親全般に適用されています。

 おたくではどうでしょうか。日本人家庭の子育ては伝統的に親子密着型で、子どもを手厚く保護する傾向が強いと言われます。おまけに少子化が進んでいる今日においては、おのずと子育ても過保護や過干渉の傾向を帯びがちです。上例はアメリカの家庭での様子ですが、自立志向の強い欧米の家庭ですら、近年は何でも子ども任せにできない親が増えているようですね。

 子どもは成長とともに、自分の価値観をもつようになり、何事も自分で判断しやろうとするようになります。しかし、実際にちゃんとできるかどうかは別問題です。親から見ればまだまだ未熟で、「なんだって一人ではできはしない」としか見えないものです。だからこそ、注意を促したり、手を差し伸べたりせずにはいられなくなるんですね。ただし、それはよいことなのでしょうか。親が関わることに何か問題はないのでしょうか。ネットなどで調べてみると、次のような問題点が指摘されていました。

ヘリコプターペアレントのもとで育った子どもの問題点

・自主性や自律性の足りない人間になる
自分で行動を管理したりものごとの選択をしたりする経験が足りないため、人間としての自立をいつまでも果たせなくなってしまう恐れが多々ある。

・自分の価値観や判断力をもてない人間になる
正しい選択や判断をする力は、自ら判断する機会や失敗の数に応じて育つ。その経験を親が奪ってしまうと、何がよいのか、何を選択すべきなのかがわからないまま大人になってしまう。

・自己肯定感の欠落した人間になる
失敗を繰り返しながらも、それを乗り越えることで自己肯定感は養われる。親に問題を解決してもらう経験が染みついた人間は、難題にぶつかったとき、「自分には無理」とすぐあきらめてしまう。

 これから社会に出る世代は国際人としての資質が問われますが、国際人として軸となる要件は、語学力を備えていることよりも、自分のアイデンティティを確立していることであり、他者の思いを汲み取りながら必要な行動を自分で判断し行動できることだと言われています。これらこそが外国人との関わりで求められる資質として重要なのです。親は子どもの健全な成長を望み、人生を失敗してほしくないと願うものです。しかし、それが高じるとヘリコプターペアレントよろしく子どもに過剰な世話を焼いてしまうことになりがちです。親心が仇となり、逆効果を招くことになりかねません。

 中学受験に向けた勉強もまた、親をしてヘリコプターペアレントへと向かわせる要素が多々あるのではないでしょうか。「よい成績をあげてほしい」「志望校に合格させてやりたい」という親心が、過剰な世話へと走らせる原因になりかねません。

 では、わが子の中学受験勉強で親が配慮すべきはどのようなことでしょうか。長くなってしまいますので、最小限の言葉で次のようにまとめてみました。

 思春期を迎えると、何かにつけ子どもは親を煙たがるようになり、親と距離を置きたがり、親の介入を拒絶するようになります。これもまた重要な成長ですが、この段階での重要なポイントは、「子どもがどれだけ自立できているか」という問題です。親の関わりを拒むなら、自分で何事もどうにかしなければなりません。ところがそれができないと、人生の設計は揺らいでしまいます。

 だからこそ、中学受験の助走期の親子の間合いが重要なんですね。親にまだまだ依存している、親の言うことを拒絶しない、親の言うことにある程度耳を傾ける今のうちにこそ、子どもをうまく自立へと向かわせる子育てが求められるのではないでしょうか。実は、中学受験の助走は、子どもの自立促進という面においても非常に有効な役割を担ってくれるものです。

 今なら失敗はいくらでも許されます。失敗を糧にしながら創意工夫をくり返すことで、すばらしい成長を遂げることができます。親はその様子を見届けながら、ちょっとした調整役をしてやる。それがいちばんの役割ではないでしょうか。親の願いは志望校合格に留まるものではありません。もっと先にある子どもの限りない未来です。そこに視点を定めたなら、きっとヘリコプターペアレント的な行動から距離を置くことができるでしょう。

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