がんばりが利かなくなった子どものメンタル
5月 24th, 2021
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言下にある広島県ですが、外出の自粛や飲食店の営業制限などの対策も、今のところ感染の勢いを止めるまでには至っていません。いつまで我慢を強いられるのか、見通しの立たない不安な毎日が続いていますが、多くの人命、社会の維持に関わる問題ですので、他の何にもまして安全確保を優先する必要があります。安心して暮らせる環境を取り戻すべく、辛抱強くがんばってまいりましょう。
さて、前期の講座が開講して約3ヶ月が経過しましたが、お子さんは開講時と変わらず意欲をもって勉強に取り組んでおられるでしょうか。受験勉強を始めて何か月か経つと、受験生の様子が大ざっぱに二つに分かれる傾向があります。一つは、受験態勢が整って勉強が軌道に乗り、快調に学力を伸ばしていく子どもたちです。そのいっぽう、勉強に精彩を欠き始めるお子さんも一部見られるようになります。親にとって、わが子がやる気に満ち、目を輝かせて勉強に取り組む姿を見ることが何よりうれしいものです。後者のような兆候のあるお子さんには、なんとか元気いっぱいの取り組みを取り戻していただきたいものですね。
そこで今回は、勉強に向かう活力が減退傾向にあるお子さんについての話題です。こういうお子さんを、闇雲に励ましたり、檄を飛ばしたり、叱ったりしても、大概は効果がありません。どうして勉強に活気がなくなってきたのか、その理由をしっかりと理解したうえで対処する必要があります。では、その理由とは何でしょうか。たとえば、次のようなことが考えられます。
勉強の活力が減退していく受験生の心理
1.少々勉強しても成績が伸びない。自分には才能がないのでは
ないか。
2.不得意科目の勉強が辛い。やりたくない。
3.親はいつもボクを(わたしを)不満の目で見ているに違いない。
4.他の子はゲームなどを楽しんでいるのに、自分は勉強ばかり。
1について 同じ塾の仲間同士、仲よく勉強をしていても、内心では「友だちに負けたくない」「みんなにおいて行かれてはいけない」という思いがあるものです。しかしながら、全体が受験をめざすメンバーで構成されている集団ですから、がんばったつもりでも、みんなも同じように努力しています。当然、期待ほどには成績は伸びてくれません。そういう状況が続くと、誰でも少しばかり壁を感じたり、無力感に襲われたりするものです。
2について また、中学受験をめざしている子どものメンタルは、小学生といえどもただ励まされれば嬉しく、やる気が高まるといった単純なものではありません。見た目以上に内面の大人化が進んでいます。何しろ、受験勉強で様々な仲間との交流があり、様々な知識を毎日取り込んでいるのですから。当然、自分に能力があるのかどうかについて思いを馳せるようになります。がんばっても成果が得られない状況が続くと、やっても効果が出ない無力感に苛まれ、不得意科目から逃げ出したくなる子どもも出てきます。
3と4について 勉強の行き詰まりを感じ、内面の不安に揺れ始めると、勉強への意欲をスポイルする他の要素も頭をもたげてくる恐れがあります。たとえば、「おとうさんおかあさんは、どうせボクを駄目な奴だと思っているんだろう」などのように、保護者に向けたネガティブな心理が湧いてくるかもしれません。あるいは、「なんで学校の友達は遊びたいだけ遊んでいるのに、自分だけ勉強しなきゃいけないの?」という疑念や不満の気持ちを抱き始めることもあるでしょう。
1~4はそれぞれに連動して子どものメンタルを形成しています。保護者に求められるのは、一見無自覚でやる気が足りないかのように見える子どもでも、それぞれ受験勉強にまつわるプレッシャーや悩みを抱えており、内面の葛藤があるのだということへの理解ではないでしょうか。そのうえで、「どうわが子に接すれば勉強の活気が取り戻せるか」を考えていただきたいですね。思いつきで突然に「もっとがんばれ!」と活を入れたり、「がんばって、結果を出したらほめてやろう」と、何もせず様子を見守ったりするだけでは、子どもの奮起や実行力の向上は望めません。
しかしながら、そのいっぽうで、揺れている子どものメンタルを支え、元気を取り戻させることができるのは親を置いてほかにありません。どうしたら、子どもの勉強に向かう意欲を取り戻せるでしょうか。筆者が思いついたことをいくつかここでご紹介してみようと思います。
小学生は、まだ親の影響力が強い年齢期です。子どものやる気や自信を取り戻すには、親が子どものよい点を指摘してほめることが肝要です。ですが、勉強面だけだとほめるチャンスは限られます。また、親が上から評価する姿勢だと、子どもは反発してしまいます。
子どもの生活全体を注意して見守り、よい点をいっぱい指摘してほめてやりましょう。評価者としてではなく、親の感想として伝えるのです。ポジティブな感想を絶えず親からもらえると子どもは安心できます。おのずと、勉強に向かう気持ちも取り戻していくものです。
見た目の成績は上がっていなくても、子どもは毎日勉強を通して様々な知識を身につけています。それはすごいことであり、特別なことに他なりません。1ヶ月のスパンでみたなら、大変な進歩を遂げています。そのことを踏まえ、わが子が受験勉強に取り組んでいること自体が、親にとって大きな喜びであることを伝えてやりましょう。
受験勉強の内容は、合格のための知識のかけらなどではありません。ずっと先の将来まで活用できる知識です。今学んでいることは、決して受験の結果しだいで無為に終わるものではないことを語って聞かせてやりましょう。
今の勉強に足りないものは何か、何が問題なのかについて、親から語って聞かせるよりも、子ども現状を自身で現状を振り返ったり、解決法を考えたりするよう促すほうが効果的です。そのための受験パートナーとして振る舞ってみてはいかがでしょうか。
自分の考えを他者に伝える過程で、子どもは様々な気づきや発見をするものです。そういう体験は、学校でも塾でもそうたくさんはできません。毎日生活を共にする親だからこそできるサポートです。自分の考えをまとめる経験をくり返すと、子どもは自分がどうすべきかを必ず悟ります。
学習状況の思わしくない子どもを変えようと、性急に行動してもかえって逆効果を招くだけです。まどろっこしいようですが、子どもが勉強に打ち込めない理由をまずは理解し、子どもの気持ちを立て直すことを優先しましょう。そのほうが、結局は回り道ではなく近道になります。というのも、受験勉強の主役である子どもが自分でどうすべきかを考えて行動できるようになることこそ、本物の学力の獲得につながるし、上達に向けたいちばんの方法に他ならないからです。
受験は、何よりも大切なわが子の将来のためにあります。お子さんの気持ちの立て直しを、焦らずにサポートしてあげてください。