夏休みは、‟行動の切り替え”を合言葉に!

7月 12th, 2021

 早いもので7月も半ば。夏休みが近づいてきました。弊社では、7月21日(水)の6年部「中学受験夏期講習」を皮切りに、全ての学年で夏の講座を開始します。

 さて、夏休みはかつてよりは短くなったものの、学校への通学が中断することや自由に使える時間が増えること、さらには年間で最も蒸し暑い日が続くことなどから、行動のリズムが変調を来しがちな時期です。このような条件の下で受験勉強をするわけですから、ともすれば学びの質が低下しがちであり、毎日をどう過ごすかで個々の学習成果に大きな違いが生じるものです。親子で話し合ってしっかりとした学習計画を立て、規則正しい生活のもとで勉強に取り組んでいただきたいですね。

 夏休みで特に気をつけたいのが‟行動の切り替え”です。朝起床してから夜の就寝まで、子どもたちに与えられた時間は誰でも同じです。中学受験生なら、1日の行動予定もさほど違わないことでしょう。だからこそ問われるのは計画の実行力と学びの質です。その違いが学習成果に少なからぬ違いをもたらします。そのカギを握るのが‟行動の切り替え”なんですね。

 一つ例をあげてみましょう。おたくのお子さんは次のAとBのどちらにも当てはまりますか?

A 勉強の時間になったら、遊びをやめてすぐ勉強にとりかかれる。
B 勉強の時間は集中して取り組み、予定を終えたら気持ちよく遊べる。

 どちらもOKなら素晴らしいですね。ですが、かつて指導現場にいた頃の経験を思い起こすと、次のようなご家庭がかなり多かったように思います。

  上記のような家庭が多いのは無理からぬことです。遊びは子どもにとって掛け値なしに楽しいものですが、勉強は頭を使って考えるプロセスに苦しみもあり、楽しいばかりではありません。おまけに、幼いころから親に「勉強、勉強!」と追い立てられてきた子どもは、「勉強とは嫌なもの」という観念がが染みついています。したがって、やるべき時間が来てもなかなか勉強に切り替えられない子どももいることでしょう。やっと取りかかっても、ダラダラと時間を費やしてしまい、終了時間が来たらやりかけのまま投げ出してしまいがちです。

 行動の切り替えが上手になると、時間を有効に使えるし、やるべきことに集中できるので成果も格段に上がります。しかしながら、それができるようになるには、楽しいかどうかだけを追い求めるのではなく、より重要なことを優先して行動する姿勢も求められます。このような姿勢は子どもの頃までに身につけておくべきもので、学業面での成果や人間としての歩みに多大な影響を及ぼします。今、勉強よりも遊びを優先しがちなお子さんも、心の中ではどちらが大切かはわかっています。易きに流されることなく、大切なほうを優先して行動したときの気持ちのよさ、得られるものの大きさを知る体験が足りないのです。

 この点において参考になる話があります(別件ですでにご紹介したことがあります)。アメリカの学者によって次のような実験が行われました。幼児を一人ひとり順に呼び出し、マシュマロやクッキーの類を一つ見せ、「すぐ食べてもいいよ。でも15分食べるのを待ったら、もう一つ同じものをあげるよ」と言って、実験者が席を立ちます。さて、結果はどうなったでしょうか。大概の子どもはすぐ食べたいという欲求に負けてしまいました。15分待ち、二つのお菓子を見事手にした子どもは僅かだったそうです。

 この実験はかなり前に行われたものですが、今でも世界中の教育関係者によく知られています。その理由は、人生の成功者になるうえで極めて重要な要素を示唆してくれるからです。実は、被検者の幼児のその後の人生の歩みが20年、30年以上にわたって調査されたのです。その結果、食べるのを我慢できた子どもは、総じて社会的地位が高く、高い水準の所得を得ていたことがわかったのです。

 いったいどうやって幼い子どもが欲望を抑制できたのでしょうか。「あのお菓子はまずいに違いない」とか「あれはおもちゃのお菓子だ」など、今すぐ食べてしまいたいという欲望を押しのけるための知恵を絞ったのです(うろ覚えですが、だいたいそういうことだったと記憶しています)。それは、「15分我慢したらもう一つもらえる」と先を見通し、すぐに食べてしまうのを我慢し、適正に自分の行動を制御することができたからではないでしょうか。幼児期の子どもにとってはハードルの高い行動ですが、見事目先の欲望をコントロールできる子どもがいるのですね。そして、そういう子どもは、多くの場合人生においても成功しているのです。

 この夏休みを機会に、おたくのお子さんを行動の切り替えが上手な人間、少々辛くてもより重要な行動のほうを選択できる人間へと成長させませんか? ポイントは、「何が本当に自分にとって必要か」を理解し、目先の欲求をコントロールする練習を繰り返すことです。ゲームや漫画は目先の快楽は与えてくれますが、勉強は自分にとってもっと必要なものだというぐらいのことはどの子もわかっています。だいいちやるべきことを放って遊んでも、心から楽しむことはできません。

 やるべきことをちゃんとやったうえで、楽しみにしていたことをする。そのほうが気持ちがよいにきまっています。そういう体験を是非お子さんにさせてあげてください。そうすれば子どもも変わります。前述の実験で、一部の子どもが自己抑制を働かせることができたのは、幼児期の親のしつけ・家庭教育の賜物に他なりません。

 まずは、「遊び ⇔ 勉強」の切り替えの現状を、お子さんと気楽な雰囲気で振り返ってみることをお勧めします。そして、

そして、この三つの要素と照らし合わせながら、毎日の勉強にどう取り組むか、成績の向上はどうしたら実現するか、どうすれば中学入試で希望する結果が得られるか、中学進学後も勉強で躓く生徒と躓かない生徒はどこが違うのか、将来よい人生を歩むうえで今必要なことは何か、などに絡めて話し合ってみてはいかがでしょうか。それはアバウトな内容で構いません。ただし、夏休みの生活と勉強については、具体的にどうするかをできるだけしっかり目標として定めましょう。できれば、親から一方的に語り聞かせるのではなく、「これはどう思う?」とまずは子どもに問いかけ、子ども自身で考えるような流れをつくるほうがよいでしょう。こうしたやりとりも、子どもの主体性を築くうえで効果があると思います。

 また、そういった会話の際、おとうさんやおかあさんの子ども時代、学生時代、社会人になってからの歩みと、上記の三つの重要性に照らす形で話してあげていただきたいですね。失敗談や後悔の気持ちなども効果があると思います。なにしろ、親の経験はお子さんにとって自分のこととして考えるうえで大きな作用を果たします。

 現在アメリカのメジャーリーグで、バッターとピッチャーの二刀流で大活躍をしている大谷選手も、ただ才能だけで頭角を現したわけではないことを、野球に興味をおもちのおとうさんはよくご存知だと思います。怪我や野球の違いなどで苦労をしたものの、治療、食事、トレーニング、メンタルなどの様々な要素と向き合いながら、何年もかけて今のような結果を手に入れたのでしょう。大谷選手が目標を叶えるまでのプロセスを、お子さんに話して聞かせるのもよいかもしれません。結果は偶然もたらされるものではないということは、お子さんにもよく理解できると思います。

 弊社の教室に通い、受験勉強をしているお子さんは家庭環境に恵まれた優秀な小学生です。自分を適正にコントロールする方法を身につければ、中学入試突破は無論のこと、中高一貫校、大学、社会人までの歩みに大きな期待がもてるようになることでしょう。子どもを大きく変えられるのは小学生の今のうちです。「今こそ、親の出番!」と心得てください。

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