親子で言葉の問題に挑戦!
8月 18th, 2021
夏休みも残り少なくなってきました。例年なら、お盆は帰省ラッシュでにぎわいますが、コロナ禍の昨年や今年は移動もままなりません。どこにも出かけずに家族一緒にお盆を過ごしたご家庭も相当数おありではないかと思います。
もうじき子どもたちの周辺は慌ただしくなってきます。お気づきでしょうが、大概の子どもは夏休みの課題をやり残しており、取り組みのピッチを上げざるを得なくなるからです。まして、近年は夏休みを速めに切り上げる学校が増えています。弊社会員家庭のお子さんにしても、学校の課題だけならさほど困ることはないでしょうが、夏休み後半の講座への通学や、受験生用の家庭学習課題もあり、今から夏休みが終わるまでの期間は忙しい毎日を過ごすことになるのではないでしょうか。
今回は、お子さんの言葉に対する興味や関心を高めるきっかけづくりについてご提案してみようと思います。と言ってもさほど負担になることではありません。具体的には、夕食後のリラックスタイムを利用して、今からご紹介する言葉の問題に親子で取り組んでいただくだけです。堅苦しい雰囲気ではなく、家族団欒の楽しい時間にしていただき、お子さんにとってよい刺激がもたらされればと期待しています。
これに関連して思い出したことがあります。言葉遊びについて、5年以上も前に書いた記事がその後も多くの方々に読まれていることに気づきました。1日300~400件アクセスを記録したこともあります。言葉遊びは知的な刺激を楽しむ手段の一つとして人気があるからでしょう。
そう言えば、かれこれ30年近く前だったかと思いますが、ラジオで大学の先生が言葉の面白さについて語っておられるのを耳にしたことがあります。「ハラサンシンダは、『原三振だ』(巨人の原監督の現役時代を話題にしたもの)とも『原さん死んだ』とも取れます」「オショクジケンは、『汚職事件』とも、『お食事券』とも取れます」などが例にあげられていました。他にもあったのですが、あまり面白くないものしか思い出せなくて残念です。また、「枯れ木も山の賑わい」という言葉を間違って使用すると、とんでもないことになるという例を語っておられました。大学の卒業生がOB会を計画し、恩師に招待状を送りました。その文面が、「先生、卒業して20経ちました。『枯れ木も山の賑わい』と言いますから、奮ってご参加ください」というものだったという話です。このほか、「情けは人の為ならず」や「転石苔をむさず」などは二通りの解釈ができる諺の例として紹介されていました。
脱線が続いてしまいました。では、次の問題にお子さんと一緒に答えてみてください。5~6年生でも答えられそうなものを選んだため、保護者には簡単すぎるかもしれません。いずれも「国語力トレーニング 400問」(生活人選書 NHK出版)より引用しました。
1.「他山の石」という故事成語の意味はどれですか。
①自分とは無関係な物事
②人のよくない言行も、自分を磨くのに役立つということ
③人のよい点を、自分の行動の参考にするということ
2.つぎのうち、慣用句として正しいのはどれですか。
①白羽の矢が立つ
②白羽の矢を射る
③白羽の矢を取る3.つぎのうち、性質が異なるのはどれですか。
①衣食住
②具体案
③真善美4.つぎの四字熟語のうち、正しい漢字を使っているのは
どれですか。
①五里夢中
②五里霧中
③五里務中5.つぎのなかで、慣用句として正しくないのはどれですか。
①尻が据わる
②腰が据わる
③腹が据わる6.つぎのなかで、まちがった言いかたをしているのは
どれですか。
①頭が上がらない
②頭をかしげる
③頭に血がのぼる7.つぎのなかで、まちがった表現の文はどれですか。
①彼のほうから先に、口を切った。
②今回も、彼が話の口火を切った。
③まず彼が唇を切って、議論が始まった。8.つぎのうち、正しい表現の文はどれですか。
①開演を、今や遅しと待っている
②開演を、今は遅しと待っている
③開演を、今も遅しと待っている9.つぎのうち、正しい表現の文はどれですか。
①戦いの火ぶたが、切って落とされた
②戦いの火ぶたが、落とされた
③戦いの火ぶたが、切られた10.つぎのなかで、まちがった言葉の使いかたをしているのは
どれですか。
①全然問題ないよ
②全然大丈夫だよ
③全然だめじゃないか
1は、中国の昔の詩集に由来します。よその山に転がるつまらない石も、自分の宝石を磨くのに役立つということから、他人のつまらない行動も自分という人間を磨くのに役立つという意味に転用されるようになりました。今年、ある政党の要職にある人物が、身内の政治家の過ちを指して「他山の石として…」と語り、物議をかもしましたね。無関係な人の言動に対して用いるべき言葉ですから、「その言いかたはおかしい」と大勢の人が感じたのでしょう。 正解→②
2は、日本の伝承から来た言葉です。いけにえを求める神が、これと思った娘のいる家の屋根に白い羽の矢を立てたことに由来します。転じて、多くの人のなかから犠牲者として選ばれる、あるいは、多くの人のなかから特に選ばれるなどの意味で使われるようになりました。 正解→①
3は、①と③は独立した言葉が三つ並んだものですが、②は、「具体」が「案」を修飾しています。 正解→②
4は、後漢の張楷が五里に渡る霧を起こしたという言い伝えから、方向を失うという意味に転じ、状況が掌握できず見通したが立たない様子を言い表すようになりました。 正解→②
5について。「腰が据わる」は、どっしりと構え、落ち着いている様子を表す慣用句です。「腹が据わる」は、ものごとに動じることなく、落ち着いている様子を言います。似た意味の言葉ですね。「尻が据わる」という言いかたはありません。 正解→①
6について。①の「頭が上がらない」は、「この人にはかなわない」という気持ちから、引け目を感じている様子を表します。③は子どもでもよく使いますね。カッとなって腹を立てる様子を言います。②は「首をかしげる」と言うべきです。 正解→②
7について。「口を切る」「口火を切る」という言葉はありますが、「唇を切る」という言葉はありません。以前、「唇を切る」を、慣用句のご答例として扱ったことがあります。そのとき、一人の子どもに「先生、唇を切ったら痛いよね。だからこれはおかしいよ」と言われ、思わず笑ったことを思い出しました。 正解→③
8について。「今や」は、「今ではもう」という意味で、「今や遅し」は、「今ではもう遅いくらいに感じる」と言った意味合いになります。「今か、今か、何と遅いことよ」と、待ち焦がれる様子を表す言葉です。 正解→①
9について。「火ぶたを切る」という言いかたはありますが、「火ぶたを落とす」や「火ぶたを切って落とす」という言いかたはありません。「火ぶたを切って落とす」は、「幕を切って落とす」が誤用されたものだと言われます。何かが始まる様子をとらえた言葉です。 正解→③
10について。最近は、若者だけでなく、結構な大人ですら「全然いいよ」などというようになりました。通常の言いかたを崩す斬新さがあるうえ、肯定の気持ちを強める効果があるからでしょうか。しかし、本来「全然」は、後に打消しの言い回しを伴う言葉ですから、②はやはり間違った言いかたです。ただし、やがては②のような言いかたも認められるようになるかもしれませんね。 正解→②
いかがでしたか。お子さんにはまだ難しかったかもしれません。2~3問でもできていたら、大いにほめてあげてください。間違っていたり、わからなかったりした問題は、添付した説明の文を参考にして、お子さんにかみ砕いて教えてあげていただけるとありがたいです。それをきっかけに、ネットで言葉の検索をしたり、辞書を引いてみたりするのも面白いと思います。お子さんが言葉に興味をもつきっかけにあるといいですね。
上記の問題は真面目な言葉の問題ですが、言葉をかけて遊んだりすると、お子さんはもっと喜ぶかもしれませんね。駄洒落遊びだってバカにできません。親子一緒に駄洒落を考えてゲラゲラ笑った後、ふとわが子を見ると勉強の支度をしており、いつもよりちょっとやる気になった様子が感じられることがあります。言葉に関する知識を増やすことは、国語力アップにもつながります。そういった流れを築くきっかけにしていただければ幸いです。