相手の目を見て会話することの意味って!?(前回の続き)
9月 14th, 2021
後期の講座が始まりました。広島の中学入試は多くの場合1月に行われますから、受験生に残された期間はあと4~5ヶ月です。いよいよ受験対策の仕上げ学習の段階に入りました。
後期講座開校直後の9月5日(日)には、「第2回模擬試験」が実施されました。弊社会員以外の受験生も参加され、男女とも4百数十名が志望校合格の目途を立てるべくしのぎを削りました。模擬試験はこの後、10月3日(日)、11月7日(日)、12月5日(日)と、3回実施されます。模試の結果を分析し、各教科の学力の状態に合わせてバランスよく仕上げ学習を行っていきましょう。勝負はこれからです。受験生のみなさん、がんばって健康管理にも配慮しながらベストを尽くしてください!
さて、前回のブログ記事において、家庭での会話の際に配慮したい事項の一つとして「相手の目を見て話す」ということをお伝えしました。これについては、後で「なぜ相手の目を見ながら話す必要があるのか」についてご説明したほうがよいのではないかと思い直し、急遽今回の記事の話題として取り上げることにしました。
会話の相手が自分の目を見据えて話してしてきたなら、大概のかたは次のような受け止めかたをするのではないでしょうか。
1.私との会話を大切に思ってくれている。
2.嘘偽りのない気持ちを真剣に話している
このような印象をもつと、いい加減な返事はできません。また、返事をする側も相手の目をまっすぐに見て言葉を発します。すると、おのずと心を開いた本音の会話が展開されます。子どもであれば、よい会話の手本を学ぶ場にもなるでしょう。
これは1対1の会話に限りません。よい授業を実践できる先生は、教室の子どもたち全員を丁寧に見渡し、一人ひとりに語りかけるような話しかたをします。自然と子どもたちは先生のほうを見て話を聞くようになります。いっぽう、教室全体がさばけた雰囲気に陥り、先生の話に耳を傾けたり、板書を注視してノートを取ったりする子どもが少ない授業を見てみると、大概は授業での語りかけかたに問題があります。先生の目線が子ども一人ひとりに向けられていません。ただ虚空に向かってものを言っているかのような印象を受けるのです。
子どもは大人と違って、話し手が自分に向かって話しかけてくれないと、「自分のことだ」と受け止めません(特に低学年児童)。したがって、授業を担当する先生は、子どもの注意を自分に向けさせる必要があります。だからこそ、子ども一人ひとりに目を向けて話す必要があるのです。それなのに、虚空に向かってしゃべっているような話しかたをすると、子どもの注意を引く授業は到底実践できないことでしょう。
相手の目を見て話すことがもたらす影響について、脳科学の専門家の先生も言及しておられます。ちょっとご紹介してみましょう。
最近は子どもでも携帯電話をもち、パソコンを使ってコミュニケーションすることもめずらしくありません。( 中略 )しかし、相手の表情や目の動き、声の調子や態度などを直接感じ取ることをしないで、相手の心の内をうまく理解することができるでしょうか。また、自分の気持ちを適切に伝えることができるでしょうか。
子どもでも相手に直接会い、目を見て話ことでより正確に相手の気持ちを推し量り、自分の気持ちを伝えることができるはずです。たしかに、電話やメールに比べると緊張したり、身構えたりすることはありますが、それでも直接会って話すことのほうが、人間関係をより親密にするチャンスが多いことはまちがいありません。相手に直接会うことでミラーニューロンも活動します。相手の表情や態度を見たり、ことばを聞いたりすることは、自分の脳のミラーニューロンが働いて自分も同じ行動をし、ことばを話している経験をすることになるのです。逆に、もし自分から相手に何かを伝えたいと考えたなら、相手のミラーニューロンを刺激する必要があります。それを効果的に行うには、やはり相手の目を見て話すのがよいのです。
ことばを通して気持ちや考えを伝えあうには、ことばに込められた感情、意図、真意などを適切につかまなければなりませんが、そうしたこともミラーニューロンの働きによってそれぞれ自分の中で再現されるようにして理解されるからです。
前回、ミラーシステムについてふれましたが、ミラーニューロンがそのもつ働きを適正に稼働させるうえで、「相手の目を見て話す」ということが随分大きな作用を果たしていることがわかりました。会話の際に、互いが相手の目を見ながら話すと、双方の脳に収められているミラーシステムが稼働し、ただ言葉を伝え合うだけでなく、真に心の交流をしていくことができるようになるのですね。
今、小学校の低~中学年のお子さん、もしくはそれ以下の年齢のお子さんをおもちのかたは、しつけの効果をもたらすとともに、人との向き合いかたの基本を学ばせるうえにおいても大いに役立つことでしょう。家庭内での親子の会話の際は、「互いの目を見ながら話す」ということを心がけていただきたいですね。
ただし、会話の全ての時間に相手の目を見続けるということは難しいと思います。それどころか、照れくさいし苦痛を感じる人もおられると思います。お子さんとの会話においても、要所要所、特にしっかりと聴き届けてほしいことを話すときに、お子さんの両腕を手にとって、しっかりと目を見て話すようにするなど、多少のアイデアを採り入れながら可能な範囲で実行してみてはいかがでしょうか。
このようなご提案をしたものの、すぐさま「今はコロナ禍のさなかにあるのだ」ということを思い出しました。このところ、家庭内感染の増加もとりだたされています。子どもから親への感染事例が少なくないそうです。それを思うと、すぐさま実践するのは難しいと言わざるを得ません。コロナ感染の心配が解消されたらと言う但し書き付きで、ぜひ試していただきたいと存じます。
※上記引用文は、「子どもの脳を育てる教育」永江誠司/著 河出書房新社 によります。