オンラインセミナー“広島学院編” 内容報告

11月 19th, 2021

 11月14日(日)には、オンライン親子セミナー“広島学院編”を実施しました。当日は、進行役を務める筆者、広報スタッフ、オンライン担当者が帯同し、広島学院さんにお邪魔しました。下の写真でおわかりいただけるでしょうが、収録は倉光先生が普段おられる生物研究室で行わせていただきました。背景に、淡水魚のいる水槽、人体の模型が写っています。先生が手にしておられるのはダチョウの卵です。

  オンラインの催しは初めてのうえ、視聴者の方々が見えないので反応がわかりません。うまくいくかどうか不安を抱えての開催でしたが、話者の倉光先生はいつも通りのゆったりとした語り口で、わかり易いよい話をしてくださいました。

 今からセミナーの内容をかいつまんでご紹介しようと思います。なお、家庭で視聴できるのでお子さんにも参加してほしいと考え、当初は「保護者セミナー」と銘打っていたのを、「親子セミナー」に改称しました。しかしながら、親子の両方にマッチした話をするのは難しいものです。いちばん多かったのは5年生家庭(5年42%、6年35%、4年以下23%)でしたが、お子さんには多少内容的に難しかったかもしれません。それでも倉光先生は、お子さんにもわかるよう配慮してくださり、とてもよい話をしてくださったと思います。倉光先生、ありがとうございました!

 当日の話題は、倉光先生のご提案に基づいて5つに絞りました。簡単ですが、順を追って駆け足で内容をご紹介します。

 

①「なぜ男子校なのでしょうか」

 広島学院は、広島の私立男子一貫校です。この枠組みを70年以上前の設立以来堅持されています。その理由を楽しい語り口でご説明いただきました。まずは、首都圏の有名男子一貫校の校長先生が、「男子校はおたくの天国である」と発言されたことを紹介され、男子校のよさはどういうところにあるのかをお話しくださいました。

 小学校では、女子のほうが体格面でも精神面でも成長が早いため、男子は女子にことあるごとにやり込められがちです。そんな男の子たちですが、中学入学を契機に男子だけの環境になると、女の子の存在に煩わされることなく伸び伸びと活動を始めます。優秀な集団には、ある事柄については大人も全く敵わないほどの知識をもった男の子や、ある方面で大変な才能をもった男の子がいるものです。そういった個性豊かな生徒集団のなかで、互いに触発されもまれ合うことでもちまえの能力が開花し、すばらしい成長を遂げることができます。このような男子だけの環境のよさについて、わかり易く語ってくださいました。

②「なぜ中高一貫なのでしょうか?」

 上記のように、女子よりも幼稚で成長が遅い男子ですから、中学生になってからやっと精神的に母親離れする準備をしていきます。くっつきながら離れていく。倉光先生はこのように表現されていました。そして、「親離れの途上にある揺れがちな時期に、中学校と高校が分けられるのは不自然だ」と、先生はおっしゃいました。そもそも、初等教育6年間、中等教育6年間、高等教育が4年間ですが、なぜ中等教育だけが中学と高校とに分断されるのか、という疑問も提示されました。

 また、中学に入った当初はなにもかも新鮮で学業にも励む男の子たちですが、ずっとは続きません。二休み、三休みしながら高校生になり、高2ぐらいから再び学業に励むようになります。つまり、ゆったりした形状のお風呂の断面のようなカーブを描いていくのが中高一貫校の生徒の成長曲線の特徴です。それでめざす大学への進学を果たせるのが中高一貫校のよさだということなのでしょう。高校受験があったなら、そうはいきませんね。中学と高校が連結し、カリキュラムに自由度の高い一貫校だからこそ、「ゆるみの時期を見通しながら、高い次元の進学目標を達成できるのですね。

③「広島学院の教育のなかで、最も貴重だと思うことは?」

 倉光先生は、広島学院に入った生徒さんたちに、何でもいいから様々な経験を積んでほしいと願っておられます。失敗や逸脱があってもよいのです。そこから何かをつかみ取ってほしいと語っておられました。実例として、福島に行って得意なバイオリンを被災者の人たちに披露する体験を通じて、人に奉仕する喜びとともに自らの無力さを学んで帰った生徒さんの体験を紹介しておられました。

 そうした体験は、東大や京大、国公立の医学部をめざすような生徒さんたちにとっても、決して無駄なことではありません。むしろ人生の充実にとって重要なものなのですね。上記の二休み、三休みの時期と関連づけるとわかり易いのではないでしょうか。様々なことがらに挑戦し、多様な考えを身につけながら自分という器を磨いていく。そのうえで、自らの人生の夢を描いて実現していく。そういう環境が広島学院なのだということを、倉光先生のお話を通して学ばせていただきました。

④「長い間広報を担当して、一番印象に残ったことは?」

 倉光先生は、長年広島学院で広報の仕事をしておられます。筆者も、家庭学習研究社の広報担当として、かれこれ20年以上お付き合いさせていただいています。そんな倉光先生にとって忘れがたい思い出は、広島学院の合格者発表の日に目撃した光景だったと言います。

 合格を一刻も早く確かめたいという思いを胸に、息せき切って掲示板に駆け寄る男の子が目に留まりました(当時は掲示板による発表が中心でしたので、掲示板前は感動的なシーンが繰り広げられたものです)。男の子は自分の番号がないことを知ったのでしょう。泣きたい思いを堪え、後からやってきたおとうさんのほうを振り向いて両手で大きなバツ印をつくりました。それを見たおとうさんは、歩み寄って優しく息子さんの手を取り、一緒に校舎に向かって深々とお辞儀をして帰られたそうです。「不合格の掲示を見たあと受験した学校にお辞儀をして帰る。こういう親子なら、受験の合否など問題ではありません。息子さんはどの学校に進学しても、きっと立派に成長されるでしょう」 倉光先生はそのような趣旨のことをお話しになりました。

 ④までを終えたところで、しばらくの時間、ご家庭から寄せられた質問に対する回答をしてくださいました。ご紹介した質問は次のようなものでした。

1.これまでのご経験から、どのような生徒が伸びていくのか教え
  てください。
2.授業について行けない生徒のフォローの体制はありますか? 
  どういうことをしておられますか?
3.僕はまだ将来の夢が見つかりません。もし入学したら見つけら
  れますか?(お子さんから)
4.中学生と高校生は一緒に活動することはありますか? 
  あるとすればどんなときですか?

 このほか、セミナーの最中に寄せられた質問にもお答えいただきました。たとえば、「緊張したとき、それをほぐすよい方法はありますか?」などです。質問の1については、「集中力が重要です。他の子が3時間かかるところを1時間でやる。そういう集中力を養えば、同じ努力をしたときの成果が全く違ってきます」といったようなことをお話しになったと記憶しています。これに対してセミナー終了後に、「どうやったら集中力がつくのか、詳しく聞きたかった」という感想が多数書き込まれていました。保護者の大きな関心事だったようですね。また機会があればHPなどで先生のお考えをご紹介できたらと思っています。

 いずれの質問にも、倉光先生は丁寧かつ簡潔に答えてくださいました。それぞれの話はおもしろく、ここでご紹介したいところですが、長くなりますので割愛させていただきます。「質問→回答」の形式はテンポよく進むので、多数の保護者からよい反応をいただきました。

 

⑤「中学受験において、また中高6年間で母親の果たす役割とは?」

 この段階で、ほぼ予定していた1時間が経過しようとしていました。倉光先生は、「⑤のテーマに基づく話のとき、おかあさんがたに熱いエールを送りたい」と事前におっしゃっていたのですが、時間が残り少なくなっており、申し訳ない思いをしました。ですが、倉光先生はそれでも短くも丁寧に心のこもったお話をしてくださいました。

 その内容は、北風と太陽のイソップ童話になぞらえて、「入試までにはいろいろな困難があるでしょうが、おかあさんがたには太陽のような存在であっていただきたいですね」といったような内容だったと思います。男子の受験生活は、親にとってはイライラの連続です。どうかすると北風のような振る舞いに陥りがちです。そこを踏み留まり、わが子のやる気を後押しできるとしたらおかあさんしかいません。おかあさんの温かい愛情を背に受験勉強を最後までやり通す。その経験は、入試でよい結果をもたらすだけでなく、お子さんの更なる先の成長とがんばりのエネルギーとなります。「おかあさん、がんばってください!」と、このようなお話をされました。

 

 以上、駆け足でセミナーの様子をご紹介しました。準備不足の面もあり、うまくやれなかったという後悔も多々ありますが、広報の経験豊かな倉光先生のすばらしいトークに救われました。なお、倉光先生と広島学院さんの広報活動から一貫して感じるのは、縁が入試結果で左右される受験生家庭への配慮と思いやりの心です。これはカトリックのスピリットかもしれません。広島学院は、望めば入れる学校ではありません。入学の希望がかなわない受験生や家庭への礼儀として、学校の単なる自慢と受け取られかねない話はしないようにという心遣いを常にされています。筆者などは、それをじれったく感じることもありますが、一流とはこういうものなのですね。

 28日はノートルダム清心の神垣校長にお話しいただくセミナーを実施します。今回の経験を生かし、視聴くださる保護者やお子さんに喜んでいただける催しにすべくがんばる所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

追伸:後日、倉光先生から「視聴していただいたご家庭に」と、つぎのようなメッセージをいただきました。

「先日は、お忙しい日曜日にセミナーをご視聴いただき、心から感謝しています。もしも広島学院に入学されたら、息子さんをぜひ生物研究室に招待したいですね。一緒にお茶しましょう!」

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