仕上げ期にできる親のサポートって!?
12月 19th, 2021
もうすぐ冬休み。中学受験生の子どもたちは、いよいよ受験本番に向けた仕上げ学習の時期に突入します。そこで今回は、入試を控えた受験生の保護者に向けた記事を書いてみようと思います。なお、個々 のお子さんへの具体的な指導や助言は校舎の担当者がしています。筆者は、「これから入試本番までに、親ができることは何か」についてお伝えすることにします。ご家庭によっては全く不要なことかもしれません。趣旨に免じてご容赦ください。
受験生は、大人と比べると人生経験が圧倒的に少ない小学生です。受験への心構えがなかなか定まらず、地団太を踏むような思いをくり返してきた保護者も少なくないことでしょう。しかし、入試の日程が決まり、志望校を絞り込み、入試に関する様々な情報を得るうちに、いつの間にか子どもたちもはっきりと入試本番を意識して勉強に励むようになります。今や塾での教室の雰囲気も随分と変わり、否が応でも「受験シーズン近し」を感じさせていることでしょう。
実際のところ、子どもたちが心を燃やして受験勉強に打ち込める期間は短いものです。肉体的な面も理由ですが、それ以上に影響するのは精神的な未熟さです。先を見通した行動、目的意識に根差した行動は、様々な人生経験を通して整うものですからしかたありません。時間感覚は人生経験の長さとリンクしています。大人は「本番まであとひと月しかない」と思いがちですが、子どもにしてみれば「あとひと月ある」という気持ちであろうと思います。ですから、保護者におかれては大人の感覚でわが子に接して焦りを助長するのではなく、「ラストスパートに向け、わが子が今からやれる最善を尽くせば道は開ける!」という信念をもってお子さんを応援していただきたいですね。
以下は、入試対策の総仕上げ期を迎える段階の保護者にご提案したいことを列挙したものです。多少なりとも参考になれば幸いです。
①子どもにとって唯一無二の理解者は親です!
中学入試は、お子さんにとって初めての人生の岐路となる大イベントです。これまで経験したことのない緊張に襲われるお子さんもおられることでしょう。こんなとき、「どんな結果になろうと、親は自分を受け入れてくれる」という安心と親への信頼の気持ちがあれば、お子さんはどれだけ心強いことでしょう。
親の心配や気がかりをそのままぶつけると、男の子は反発したり感情を高ぶらせたりしがちです。女のお子さんの場合、おかあさんと一緒になって落ち込むこともよくある話です。こうなると、勉強の効率は下がってしまいます。「今からできる精一杯を尽くせばいいんだよ」と、明るく泰然自若とした態度でお子さんに接してあげてください。残された時間をポジティブな気持ちで生かせるか、それとも不安や孤独に振り回されるかでは、仕上げ期の学習に大きな違いが生じるものです。
親から見て、看過できないほどの気がかりや問題点があるかもしれません。それを放置すると親子共々後悔が残ります。冷静に親の気持ちをお子さんに伝え、話し合うことをお勧めします。声を荒げて親の指摘をはね退けたり、無言でだんまりを決め込んだりするお子さんもおられるかもしれません。ですが、親がここで落ち着いた姿勢を貫き、何がどう問題に見えるかを伝えれば、必ずお子さんは親の指摘を心の中で反芻し修正をはかるものです(ポイントは、親がゆっくりと話しかけ、すぐに返事を求めないことです)。親の気持ちを伝えたら、あとは子どもを信じてやりましょう。それでこそ、真の理解者・応援者ではないでしょうか。お子さんが相談に乗ってほしいようでしたら、もちろん一緒に考えてやりましょう。
②仕上げにおける課題は何か、現状の分析をバックアップ!
今のお子さんにとって、優先すべき勉強は何でしょうか。残された期間を最大限に生かした勉強とは、現状を客観的に分析し、足りていないところ、空白領域を埋め合わせていくことでしょう。冬期講習の開始にあたり、そういった埋め合わせるべきポイントは何かを、お子さんがよくわかっているかどうかを確認してみることをお勧めします。
もし、やるべきことがわかっておらず、戸惑っておられるようでしたら、「一緒に考えよう」と提案し、模試最終回などの成績資料をもとに、埋め合わせるべき単元や学習事項を教科ごとに絞り込んでいくとよいでしょう。冬期講習でも全範囲の総チェックをし、欠落部分を埋め合わせる学習をします。ですが、その前にお子さん自身で弱点や課題を詳(つまび)らかにしておけば、対策はより効率的に行えます。
模試の資料にある、問題別の正答率表をぜひ活用してください。★印の数で難易度がわかるのをご存知でしょう。トップレベルの成績を競うようなお子さんは例外となりますが、★印5つの難問はもはや無視してよいでしょう。問題は★印4つ程度の問題にどれだけ食らいつけるかです。知識として問われる問題でなく、考えて解決すべき問題の場合、お子さんが「難しい」と感じておられるようなら、このレベルも無理して対策に時間を費やすべきでないかもしれません。お迷いの場合、指導担当者にご相談ください。
入試は、制限時間枠のなかで6割7割の正解を引き出せば合格できるわけですから、苦手な問題や難しい問題の取捨選択の判断や技術が結果に相当影響します。「今できる対策で、ものにできることをやって行けばよいのだ」と、お子さんを励ましてあげてください。
③仕上げの進捗状況に合わせ、承認と激励を忘れずに!
冬休みになり、冬期講習が始まったなら、なるべくまめにお子さんに声をかけ、仕上げや埋め合わせ学習の進捗状況を確かめるとよいでしょう。無論、尋問するような関わりは禁物です。スケジュールとその実行状況について、「一緒に確認する」といった関わりがよいでしょう。うまくはかどっているようでしたら、大いにほめたり喜んだりしてあげてください。これが励みになり、お子さんの勉強に勢いがつきます。
逆にスケジュール通りに進んでいないようでしたら、またお子さんが悩んでおられるようでしたら、一緒に対策を考えてあげてください。親は勉強の内容に立ち入る必要はありませんが、理科や社会の副教材(アタック)で間違えていた箇所の埋め合わせのプロセスは、親がチェック役として手伝ってもよいかもしれません(間違えてい箇所をランダムに問いかけるなど)。
これから入試までの短い期間は、お子さんの入試に臨む意気込みと内面の成長とがあいまって、驚くような学習成果が得られるものです。それに加えて、親に見守られ、応援されているという気持ちがあるかどうかも学習成果や入試結果に少なからぬ影響を及ぼします。これはまだ親に依存する年齢だから当然です。あと1年余りで思春期が訪れると、あっという間に親離れします。まさに今、お子さんは依存と自立の境目にあると言えるでしょう。そんなとき、親はどうすればよいかについては、①でお伝えしたとおりです。中学入試は、わが子の自立に向けた転換の記念碑であると捉え、わが子の奮闘を信じて応援してやりましょう。
筆者はかつて現場で国語の学習指導を担当していました。そのほとんどは6年生でしたから、随分とたくさんの受験生を入試に送り出してきました。入試が近づくと解法のスキルアップに励む算数、知識の埋め合わせに力を注ぐ理科や社会と比べ、「国語は何をしたらよいかわからない」と、よく言われます。無論、漢字のおさらいや記述式問題への対策などもありますが、ぜひしておいていただきたいのは、長文を集中して一気に読み通す練習です。
国語は、素材文(普通、入試では長文が二つあります)を短時間で読み通し、アウトラインをつかめるかどうかが、随分得点に影響します。読みに時間がかかっていたお子さん(主に男子)も、入試に対する自覚が定まってくると、練習しだいで読みのスピードや精度が急速に上がります。今までに配布された入試の過去問や、模試の素材文を一気読みする練習をしてみてください。鉛筆で、重要と思った箇所に線を入れるのも読み取りの精度を上げるうえで役立つでしょう。
もし保護者にその余裕がおありでしたら、お子さんが読み終えたら、どんなことが書かれていたかをお子さんに尋ねて確認する役割もお願いします。お子さんの言うことが要領を得なくても構いません。読了後にアウトラインや重要事項を頭の中で思いめぐらすだけでもテスト時間枠内での読解の練習になります。
気持ちが定まるまでに時間がかかる小学生にとって、やっと入試を見据えてきた今からがほんとうの受験勉強の始まりです。焦らず、お子さんを上手に励ましてあげてください。元気いっぱいの姿で入試会場に送り出すまで、親にはまだいろいろと気苦労がありますが、ここからの親の関わりがお子さんの入試体験に大きな意味を与えてくれます。おとうさん、おかあさん、がんばってください!
お子さんの悔いなきチャレンジを実現すべく、愛情を込めて応援してあげてください!